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人物伝説と天草四郎

2018.04.13 (Fri)
今回はこういうお題でいきます。日本にも世界にも、その生涯に多くの
伝説がまとわりついている人物っていますよね。まず、イエス・キリストなど
宗教的な人物はほとんどそうですし、あとは、いわゆる偉人とされる人々。
アレキサンダー大王、ナポレオン、シェークスピア、科学者にして
錬金術師のアイザック・ニュートンなんかにもありますね。

で、本項では、人物伝説というのは、いつ、どのようにしてできるのか、
どんな形になりやすいか、などについて少し考えてみたいと思います。
さて、誰を例にすればいいですかね。ここは日本の人物でいきましょう。
日本史上、誰でも知ってるほど有名で、なおかつ、
たくさんの伝説を身にまとっている人物・・・

うーん、聖徳太子とか役行者とか、古代の人物はやめておきましょう。
なんでかというと、そもそもの実体がよくわからないからです。
まあ、聖徳太子こと厩戸皇子は実在の人物だとは思いますが、
役行者は、ほんとうにいたのかどうかもはっきりしていません。

ということで、思いついたのが「天草四郎」。有名どころですよね。
これで考えてみます。さて、天草四郎は、江戸時代初期のキリシタンで、
「島原の乱」の主導者の一人。諱は時貞。洗礼名は「ジェロニモ」
から「フランシスコ」に変化。1621年または1623年に生まれ、1638年、
原城陥落とともに戦死します。ここまでは史実として問題はないでしょう。

「島原の乱」


まず、① 人物伝説はいつできるのか? 
これは本人の死後にできるものが多いんですが、
生前から伝説がある場合もあります。宗教指導者を考えてみてください。
オウム真理教の麻原が空中浮揚したとか、ああいった類のものです。
信者が積極的に広めて、布教に役立てようとするんですね。

天草四郎は宗教的なカリスマでしたので、当然その手の伝説があります。
というか、生まれる前から、救世主の預言のもとにあったと言って
いいかもしれません。日本から追放されたママコスという宣教師が、
「26年後に16歳の天童が出現しキリシタンを救う」と言い残した内容に、
風貌・人柄がぴったりあてはまっていたのが四郎だったとされます。

さらに、盲目の少女に手をかざしただけで目が開いた。海の上を渡った。
これ、『新約聖書』にあるキリストの逸話にそっくりですよね。
あと、空から飛んで来た鳩が手にとまり、手のひらに卵を産んだ。
卵を割ってみると、キリスト教の経文を書いた紙が出てきた、などなど。

「天草四郎」


② 人物伝説はどうやってできるのか? これはまず、
資料が少ない人物ということになるでしょうね。生没年や生い立ち、
妻子、死亡時の記録などがはっきり資料に残っている場合は、
なかなか伝説が入り込む余地がありません。

ところが、天草四郎の場合は、出自や幼少期のことがよくわかっておらず、
その死についても、江戸幕府軍は誰も四郎の顔を知らず、
首実検の際に困ったと言われます。そこで、伝記の空白を埋めるために、
面白おかしく作られた内容が挿入されるわけです。源義経が牛若丸だった
ころのエピソードなんかがそうですよね。カラス天狗に剣術を教わったとか、
弁慶と京の五条の橋の上で戦ったとか。

それと、悲運の死を遂げた人物。日本には「判官びいき」という言葉が
ありますが、源義経(九郎判官)、豊臣秀頼、大塩平八郎、
新しいところでは西郷隆盛など、大きな権力と戦って敗れ去った人物に対して、
「じつは生きていた」という伝説が生まれやすいんです。

③ 人物伝説にはどんなパターンがあるのか? これはいろいろですが、
代表的なものをとり上げると、「ご落胤説」 「本当は女だった説」
「死なずに逃げのびた説」などがあげられます。
で、これ、天草四郎には3つとも全部あるんです。

「ご落胤説」は、上で出てきた豊臣秀頼の子だったとするもので、秀頼は
大坂夏の陣で死なず、船で薩摩に逃れていて、その後に生まれたのが四郎。
根拠としては、四郎が豊臣家の「ひょうたんの馬印」を用いていたことが
あげられています。秀吉の孫が、徳川家に対して乱を起こしたとすれば
ドラマチックきわまりないですが、まあ、史実ではないでしょう。

「千成瓢箪」


「女だった説」は、上杉謙信などにもありますね。四郎があまりの美少年だった
ところから出されたものでしょう。島原の乱のおよそ200年前、
ヨーロッパでは、ジャンヌ・ダルクの「男装の女戦士」伝説が
生まれていましたので、もしかしたらそれとかかわりがあるかもしれません。

「逃げのびた説」は、天草四郎にはたくさんの影武者がいて、
(実際にそういう資料はあります)首を取られたのはその中の一人、
本物の四郎は、裏から乱を支援していたポルトガルの船でヨーロッパに渡った
とするものですが、これもありえないですね。もし、ポルトガル船に乗ったら、
そのまま奴隷として売り飛ばされるんじゃないかな。

さてさて、天草四郎の伝説は、現代になっても生まれています。
こういう人物はフィクションの主人公になりやすく、山田風太郎の伝奇小説、
『魔界転生』をはじめ、たくさんの小説やマンガに登場していますが、
そこで面白おかしく描かれた内容が、ずっと時がたってから、
伝説化したりするんです。ということで、今回はこのへんで。

「魔界転生」





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