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『今昔物語』の巨人について

2018.04.16 (Mon)


今回は、「UMA」カテゴリなのか「怖い日本史」なのかよくわからない
お話です。前からご紹介している『今昔物語』には、巨人の話が出てきます。
 大きな死人が浜に上がる話
「藤原信通の朝臣が常陸の守をしていたとき、任期のきれる4月頃、
風が強く吹いて海が荒れた晩、某郡の東西が浜(場所不明)に大きな死人が漂着した。

死人の長さは5丈(15m)ほど、高さは、馬に乗った役人が向こう側にいて、
その手に持った弓の先がやっと見えるほどだった。(3mくらいか)
死人には頭がなく、右の手、左の足もなかった。サメなどが食い切ったのだろう。
また、うつ伏せに寝ていたため、男か女かもわからなかった。

ただ、体つきは女のように見えた。不思議なことだというので、見物人は
ひきもきらず、わざわざ陸奥国から見物に来た人もいたほどだ。
その中の名僧は、「こんな巨人の住むところがわれわれの世界にあるとは
思えず、これは阿修羅女(六道の修羅界の女)でしょう」などと言った。

藤原信通が「これは朝廷に報告せねば」と述べたが、まわりの者は、
「そうすると検分の役人が来て接待しなくてはならず、
任期ももうすぐ終わるので、黙っていたほうがいいでしょう」と答え、
それで報告はとりやめになってしまった。

常陸の国のある武士は、「こういうものが今後攻めてきたら大変だ。
矢が立つかどうか試してみよう」そう言って死人に矢を射かけたところ、
深々と突き刺さった。これを聞いた人はみな「武士らしく用心のいいことだ」
とほめた。死人は、日がたつにつれて腐敗が激しくなり、
あたり数kmに住む人は臭くて逃げ出したほどだった。」(第七部 雑事)

クジラの死体のあまりの腐敗臭に鼻を押さえて歩く人


こんな話が載っています。『今昔物語』は説話集で、荒唐無稽な話が
たくさんあるんですが、これは報告調で、現実感のある描写になっています。
話に出てくる藤原信通は、12世紀に実在した人物です。
で、この部分について、UMAフアンで注目する人が多いんですね。
中には、南極にいるとされる大型UMA「ニンゲン」ではないかという人もいます。

「ニンゲン」


「ニンゲン」はナガスクジラなみの大きさの、白い色をした裸の人間型の生物
とされますが、じつは「ニンゲン」には、目撃証言など、UMAとしての実体は
ありません。これは巨大掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」で、
創造されたもので、その経緯もはっきりしています。

さて、巨人の伝説は世界中にありますが、その多くは神話としてのものです。
例えば、北欧神話では、神々と巨人族との対立が物語の軸になってますし、
中国の盤古(ばんこ)のように、この世界は原初にいた巨人の体が元になって
できたとする話も各地に見られます。

しかし、これらはあくまで神話上の存在で、UMAとは区別するべきものです。
では、現実的に、人間型の生物はどのくらいまで大きくなれるものでしょうか。
ギガントピテクスという、約100万年前に生存していた類人猿(下図)がいて、
身長3m、体重300~540kgと推定されています。

ギガントピテクスの想像図


ですが、ギガントピテクスの化石は、歯や顎の骨が見つかっているだけで、
全身骨格はおろか、四肢の骨も発見されてはいません。ですから、
研究者の中には、頭や歯だけが特別大きいだけで、体そのものはゴリラ程度
だったのではないかと言う人もいます。ちなみに、世界で一番背が高かった人は
272cm(下図)ですので、自分は3mでも不思議ではないと思います。

世界史上、最長身の人物


さて、『今昔物語』の死人は、常識的に考えれば、
やはりクジラだったんじゃないでしょうか。
「頭がない」「右手、左足がない」「うつ伏せ」という証言に注目してください。
対角線の手足がないと棒状に近くなりますし、クジラのヒレと尾部が、
残った手足に誤認された可能性があるような気がしますね。

では、古代の常陸の国(現在の茨城県)にクジラはいたのか。これはいました。
奈良時代初期に書かれた『常陸国風土記』には、
クジラの形に似た丘がある地名を「久慈」にした、という記述が出てきますし、
後代でも、常陸の浜はクジラ漁の拠点の一つでした。

で、こういう話をすると「魚を見慣れた浜辺の人々がクジラを見間違える
はずがない」といった反論をする人が必ず出てきます。でも、そうでしょうか。
下の図をごらんください。これはフィリピンの浜辺に流れ着いたものですが、
腐敗が進んで色が白くなっており、皮下組織が毛のように見えます。

漂着死体について、「体毛があった」という証言はよく見られますが、
皮膚がはがれ、皮下組織がくり返し波に洗われているうちに、
毛のようになって見えるのは珍しくはないようです。この死体について、
現地人は、見たことがない、クジラではないと証言しましたが、
フィリピン政府が分析した結果では、やはりクジラだったんです。



さてさて、もし巨人族が現代に生存していたとして、
絶滅しないでいるためには、個体数は数千は必要でしょう。
軍事衛星が10cm以下の解像度で、世界の隅々まで監視しているのに、
その生息地が見つからないとは考えにくいですよね。

超古代にいたとしても、上で書いたギガントピテクスのように、
わずかな骨の化石でも発見されています。ですから、巨人族の存在は
やはり難しいんじゃないかなあと思います。またしても夢を壊すような
内容になってしまいましたが、今回はこのへんで。





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