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「怖い童話」について

2018.04.20 (Fri)


今回はこういうお題でいきますが、どれだけのことが書けるか、
あまり自信ないです。スルー推奨かもしれません。
さて、桐生操氏の『本当は恐ろしいグリム童話』など、西洋の童話の怖さに
焦点をあてた本が発刊され、童話の持つ怖さというのが知れ渡ってきました。
当ブログの裏テーマには、「恐怖の研究」があるので、
ここはさけて通るわけにはいきません。

たしかに、有名どころの「シンデレラ(灰かぶり姫)」なんかでも
怖いですよね。みなさん知っていると思うので、ここで詳しい筋は書きませんが、
物語の後半、王子が忘れられたガラスの靴の持ち主を探す段で、
シンデレラの義理の姉たちは、ガラスの靴に無理やり合わせようとして、
足の爪先や踵を切り落とします。ですが、靴下に血がにじんでバレてしまう。

さらに、シンデレラと王子の婚礼につき添った姉たちは、
鳩につつかれて目玉をくり抜かれてしまうんですね。ちなみに、
シンデレラの靴は、もともとはリスの毛皮(vair ヴェール 仏語)製
であったのが、転訛してガラス(verre ヴェール)になったという説があります。

ただ、元からガラスだったという説もあって、決着はついていません。
これ以外にも「白雪姫」や「ヘンゼルとグレーテル」なんかも怖い内容です。
では、どうして怖いのかというと、まず、もともとの話は「童話」ではなく
「民話 フォークロア」だったということがあげられるでしょう。

民話から、子ども向けの童話になる段階で、かなり毒が抜かれています。
グリム兄弟は、聞き書きで採集した民話をそのまま本にするのではなく、
性的な描写を取りのぞき、残酷な部分をおさえ、あと、実の母親を
継母に変えるなどして、内容を子ども向けに改変しました。

民話は、日本のものも怖いし、性的な部分も多いですよね。瓜子姫は、
あまのじゃくに裸にむかれて吊るされ、殺されてしまうバージョンがありますし、
カチカチ山では、爺が狸にだまされて「ばんば汁(婆を料理した汁)」
を食べさせられてしまいます。これをモチーフにした、曽野綾子氏の
『暗く長い冬』という恐怖小説の傑作があります。



また、柳田國男の『遠野物語』では、年寄りを山に追いやる「姥捨て」の話が
出てきますし、馬と娘が結婚する話なんかもあります。
娘の父親が怒って馬を殺し、その首を切ると、
馬の首は空に飛んでオシラサマになる。じゃあ、なんで民話は怖いんでしょうか?
いちおう三つの解答を用意してみました。

まず、一つには口承伝承であるということが大きいでしょう。
文字で書かれた原典がなく、口から口へと伝わってきた物語であるという点です。
つまり、話す人が自由に筋や細部を変えることができるわけです。
こうした場合、話の内容はどんどん過激になっていきやすいんですね。

識字率が低かった中世のヨーロッパで、物語のタネが、長い年月、
親から子へと伝えられていくうちに、極端な内容に変わっていく。
主人公の貧しい田舎娘は、王子に見初められて王妃になり、
悪役の継母などは、手ひどい罰を受けて苦しんだあげくに殺されてしまう。
そのほうが、語る側にも聞く側にもカタルシスが大きいからです。

二つ目としては、当時のヨーロッパを精神的に支配していた
キリスト教のらち外の話である、という点です。
厳しい戒律と道徳で信者を縛りつけるキリスト教の教えと教会の権威は、
民衆にとっては窮屈な面もあったんですね。しかし、魔女や魔法が登場する
民話の中では、自由に想像の羽を伸ばすことができます。

そこで、聖書の物語とは違った、残酷で卑猥な内容が盛り込まれて
いったんだと思います。押さえつけられていた土俗的な感情が、
民話の中では開放されているんでしょう。そういう意味では、
民話の研究というのは精神史的にも重要だと考えます。

三つ目として、昔は、死や血が身近なものであったことがあげられるでしょう。
これはヨーロッパでも日本でもそうでしたが、乳幼児の死亡率は高く、
10人の兄弟姉妹がいても、半数以上が子どものうちに死んでしまう
なんてことが珍しくはなかったんですね。

焼かれるペスト死者


ちょっと疫病の流行があれば、村人がバタバタ倒れ、
血膿にまみれて死んでいく。死体は山積みにされて焼かれる。
子どもを売る、間引きをする、そういうことが普通にある時代。
さらに、今のように肉がパック詰めされてスーパーで売られている
わけではなく、家族で動物を殺し、皮をはいで血を絞る・・・
民話は、そういう中でできていった物語なわけです。

さてさて、民話はなぜ怖いのかについて考えてきました。現代で生まれる
都市伝説(アーバン・フォークロア)なんかも、「テケテケ」とか
「カシマさん」とか、残酷で怖いものが多いですよね。時代が変わっても、
共通する点もあるんだと思います。ということで、今回はこのへんで。






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