宇宙系の話 2題

2018.05.29 (Tue)
円形迷路

小学校5年のときのことだな。たしか午前中の図工の時間。なんか作ってた
気がするが、俺はそういうの苦手で、だらだらとさぼりながらやってたんだ。
そしたら、友だちの湊ってやつが、やっぱ面倒くさそうに紙をハサミで切りながら、
フワワーってあくびをしたんだよ。そしたら、口の中が銀色に光って見えた。
「あれ。おま、口の中変だぞ。もっかい口 開けてみろよ」
「ああ、変か?」 でも、湊の口の中は普通だったんだ。
「おっかしいなあ。たしかさっきは、銀色に見えたんだが」
「そうか・・・あのな、朝に変なことがあったんだよ」 「何?」
「俺、今朝、すげえ早く学校に来たんだ」 「何で?」
「ほら、俺んち、父ちゃんも母ちゃんも、おんなじ工場で働いてるだろ。
 で、早番の日ってあるんだ。6時前に家を出る。それで、俺一人っ子だし、
 
 家の中に誰もいなくなるんで、無理やり親といっしょの時間に
 家を出させられるんだよ」 「何時ころ?」
「そうだなあ、たぶん6時ちょっと過ぎくらい」 「学校、開いてねえだろ」
「そうだよ。用務員さんもまだ来てない。だから、そういう日は、
 誰か来るまで、ずっと校庭でブランコとか乗って遊んでるんだ。
 でな、校門をくぐったら、グランドのほうが変だった」
「どんなふうに?」 「いや、それが、さっきお前言ったみたいに、
 銀色に光っててな。だから見に行ったわけよ。そしたら・・・
 前に、算数の時間にコンパスで大きな円、小さな円を重ねて描くのがあったろ」
「ああ、同心円ってやつだな」 「それ、それがグランド一面に描いてあったんだよ」
「ウソつけ、今、どっかの学年で体育やってるし、

 そんなのあったら、誰がイタズラしたって、大騒ぎになってるだろ」
「それがなあ、消えたんだよ。俺が、面白えなあって思って、
 その円の上を足で踏んでったんだ。そしたら、描いてる幅は俺のズックより
 大きいんだけど、俺が通った後ろはスッ、スッって消えくんだ。
 円は端のほうでつながってて、どんどん中心に向かって進んでった。
 で、真ん中まできたわけ。そしたら、上のほうで、ビコンビコンって音がして、
 見上げると、高いところに丸いものが浮かんでた。そんなに高いわけじゃなく、
 校舎のちょっと上くらいのかな。んで、その真ん中が銀色に光ってて、
 いつのまにか俺の体も銀色に染まったのよ」 「んで?」
「上のその丸いものから、なんか数字を言われたんだ。6325843みたいな。
 忘れちゃったから、これは今、適当に言ったんだけどな。

 それで、気がついたら、一人でグランドの真ん中に立ってた」
これね、俺、半分くらいは信じたんだ。子どもだったし、湊はそんな奇天烈な嘘言う
やつでもなかったし。「それ、もしかしてUFOじゃね。お前、宇宙人にさらわれる
 とこだったとか」 こんなことを言って、昼休みにグランドを見に行くことにしたのよ。
けど、グランドの土は大勢の生徒に踏み荒らされてて、
円なんてどこにも残ってなかったんだ。
でな、その日はそれで終わったけど、翌日から湊が変になった。
いつも、暇さえあれば数字を並べたのをつぶやいてて、「7634561、違うなあ。
 5678933、これでもねえなあ」こんな感じ。
で、ヘマばかりやって担任に何度も注意されるようになったんだ。
それと、湊は頭はよくなかったが、スポーツだけはできたのに、

体育の時間にちょっと動いただけで、ハーハー言ってへたり込むようになったんだ。
体が悪いんだろうと思ってたら、夏休み後から学校に来なくなった。
担任が言うには、ちょっと難しい病気が見つかったから、
大きな市の病院に入院したってことだったんだよ。それから、
湊は一度も学校に姿を見せないまま、転校したことになった。
いや、手紙なんかもこねえから、どこに行ったかわからねえよ。
んでな、それから10年近くたって、地元で成人式があった。俺は地元離れてたけど、
小学校のときの仲間と久しぶりに会っていろいろ話したら、
何人か同級生が死んでるんだよ。白血病が多かった。
でもよ、まだ20歳なんだぜ。死ぬやつなんて珍しいだろ。だから・・・
なんかこれ、湊のことと関係あるような気がするんだよなあ。あんたら、どう思う?

スマホ

あ、よろしくお願いします。私の母の話なんです。父は、私が大学のときに
亡くなってまして、私が仕事についてからは、ずっと一人暮らしでてたんです。
でね、今年、母にスマホを買ってやったんです。
いや、ちょっと骨粗鬆症気味だけど、体は元気だし、
頭もボケてる様子じゃない。だけど、もう75歳を過ぎましたからね。
ああ、住んでるとこは車で1時間くらいです。だから、私もときどき顔は
出してましたけど、ほら、母が外出したときに具合悪くなったら、
すぐ連絡をよこせるようにって思って。
いやあ、やっぱり年寄りなので、操作を覚えてもらうには時間がかかりました。
でも、なんとかかんとか私と、離れたところにいる弟のスマホに
連絡はできるようにして。ああ、メールはさすがに無理でしたけどね。

でね、当初はやってよかったと思ってたんです。固定電話だけのときより、
ちょくちょく連絡が来るようになりましたから。
それから1ヶ月くらいしてですね。母から電話が来て、
変なことを言うんです。「お父さんから電話がかかってくるようになった」って。
でもね、さっき言ったように、父はもう何十年も前に他界してるんだし・・・
まず、考えたのは、オレオレ詐欺です。子どもじゃなく、
旦那からってのが斬新だけど、ありえることじゃないですか。
だから、「いうことを聞かないで。ぜったい銀行に行って振り込んだりしないで」
とは言いました。そしたら母は不満そうに、「だって間違いなく。
 お前のお父さんの声なんだよ」って言うんです。
で、次に考えたのが、いよいよボケが始まったのかってこと。

だから、母のとこに様子を見に行かなくちゃって思ってたんですが、
仕事が忙しくて、なかなか行けなかったんです。で、そうしてるうち、
また母から連絡が来て、「お父さん、電話番号教えてくれたから、
 私のほうからかけられるようになった。
 お前が小さいときのこともいろいろ話したんだよ。
 詐欺なんて言ってたけど、お父さんで間違いないから」って。
どう思います? これ聞いたとき、私、ちょっと背筋が寒くなったんです。
霊界に通じる電話ってことですからね。いや、もちろん、
いい親父でしたから、本物だったら私も話をしてみたいですよ。
でもねえ、そんなことあるわけないと思うでしょう。
でね、2日後、母にこっちから電話をかけてみたんです。

そしたら、いつもはすぐ出るのに、ずっと「ただいま、電話に出られません」で。
なんか胸騒ぎがして、心配になって母の住んでる家、
私が生まれ育った実家なんですけど、顔を見に行ったんです。
そしたら、玄関に鍵がかかってなくて、開けたら、すぐのところに母が倒れてました。
もちろん救急車を呼びましたけど、すでに事切れてたんです。
脳出血ってことでした・・・ 悲しかったですよ。
弟もすぐ来まして、葬式出すためにバタバタしました。
なんとか済ませて、一息ついたところで、スマホのことを思い出したんです。
発信と着信の履歴が出てきました。けど、私と弟以外のものはみな、
変な番号になってたんです。2463894みたいな。
でも、これって固定電話でもスマホでもないですよね。

番号は全部違ってたんですが、そのうちの母が亡くなる直前のにかけてみたんです。
そしたら・・・相手が出ることは出たんですけど、ずっと信号音みたいなのが
聞こえるだけでした。ビコンビコンっていう。あとはチューニングが合ってない
ラジオみたいな雑音。ええ、その他のにかけても同じでしたね。
それでしょうがなくて、そのスマホはずっと家に置いてあったんです。
それが、母の49日が過ぎた日の夜でした。
もう電池が切れてるはずの、そのスマホの着信音が鳴りだしまして。
出てみたら、雑音の後に低い声で「〇〇(私の名前です)か?
 母さんがこっち来たぞ」って聞こえたんです。すぐ父の声だってわかりました。
「父さんなの? 今、どこ?」こう聞いたら、「宇宙!」その一言だけで
電話は切れ、それからは、何をどうやっても連絡がつかなかったんです。






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