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怪片6題

2018.06.04 (Mon)

関西の大学に通っている滝田さんが、友人たち3人と山のキャンプ場に行った。
まだ肌寒い季節の平日だったので、他の客はほとんどおらず貸し切り状態。
そこは昨年できたばかりで、作りつけのテントも新しい。
炊事場で飯盒で飯を炊き、バーベキューを楽しみ、存分に酒も飲んだ。
夜も更け、テント内でみな寝袋に入ってだべっていると、
もこもことテントの下端がめくれるのが目に入った。
「何だ?」と思って見ていると、ちょこんとリスが顔を出した。

「あ、リス!」と滝田さんが言うと、友人らも顔を上げ、「へえ、かわいい」
などと口々に言ったが、テントはさらにめくれて、
ずりずりと人間の前頭部が入ってきた。「!!」 驚いたことに、リスの下半身は、
そのはげ上がった額から生えていたそうだ。「うわわわ」 「何だよ、これ!」
リスが生えた頭は下向きのまま、完全にテントの中に入り込み、
リスは目を見開いて小さな口を開け、「・・・たすけてくれ」と言った。

「わあ!」4人は寝袋を抜け出し、我先にとテントから逃げた。
向かった先は管理人のいる木造小屋。幸いまだ起きていた管理人に、
今 見たもののことを口々に告げると、初老の管理人は眉根にシワを寄せ、
「そうか・・・一昨年の秋なあ、山菜採りの人が行方不明になって、
 春に白骨遺体で俺が見つけた。でな、その頭の骨の中に、どういうわけか、
 小動物の死骸もあったんだよな」そう言ったそうだ。


小学校の講師をしていた吉成さんは、2年生の担任を任された。
低学年を持つのは始めてだったが、みな素直でかわいらしい。
ある日、さようならをした後、掃除当番の班と教室を掃除していると、
ホウキを持った男の子の手の甲に、何か文字のようなのがあるのに気がついた。
「あれ、何か書いたの?」そう言って手をとってみると、「3」と読めた。

赤いクレヨンのようだが、軽くこすっても消えない。
「これ、○○君が自分で書いたの?」と聞いても、
男の子はきょとんとして首を振るだけ。「掃除が終わったら洗いましょうね」
そう言って、終了後に男の子を呼ぶと、手の数字は消えていた。
「自分で消したんだろう」そのときはそれで終わった。

それから3日後、同じ男の子が昼休みに遊びにも行かず、自分の机に伏せっていた。
「具合悪いの?」近寄ってそう聞くと、男の子は顔を上げ、
そしたら額に「0」と赤く書かいてあった。「!?」
男の子は「げえ」と机の上に吐き、ごろんとイスから落ちたので、
抱き上げて保健室に連れていったが、もう額の数字は見えなくなっていた。
救急車を呼ぶ事態になり、男の子はそのまま亡くなってしまったそうだ。


外資企業に勤める鴻池さんは、思った以上の臨時ボーナスが出たので、
奮発して高級寿司屋に行った。大トロやアワビなど、普段は頼めないネタを
存分に食べ、大満足して、最後のシメを何にしようか考えていたら、
目の前のネタケースの中で、白い霧のようなものが発生し、蠢いている。
見ていると、それはだんだんに魚の形になり、ケースから上に染み出してきた。

「!?」驚いていると、職人さんの一人が包丁を持ってやってきて、
横の部分で、その魚の背びれを軽く叩いた。
魚の形はパッと消え、「あ、あ、今のは?」鴻池さんがそう聞くと、
職人さんは少し笑って「お客さん、見える人なんですね。いやね、魚の中にも
 往生際の悪いやつがいて、成仏しないことがあるんですわ」と言ったそうだ。


インターネットビジネスを手広く営む山根さんが小学生のとき、
仲間と河原で石投げをしていた。平べったい石を水面スレスレに投げると、
何度かバウンドして向こう岸まで届く、それが面白くてずっとやっていたら、
川上から大きめの木箱が流れてきた。これはちょうどいい的だ、
みながそう思って、石投げを集中させた。すると、
何発目かに投げた大きめの石が命中し、ボンと箱から白い煙が出た。

そして箱の中から、10cmばかりの人形が数十体、宙に飛び出し、
それらはみな、ひな人形の右大臣のような服装をしていた。
水面に落ちた人形は、どれも踊りのような動作で一回転して、
それからミカンに変わった。壊れた箱とミカンは、
そのままプカプカと川を流れ去っていったという。「本当ですよ。
 あのとき河原にいた仲間は、みんな見たんですから」という山根さんの話。


消防士をしている門脇さんは、たまの休みの日、奥さんと4歳の娘さんと
いっしょに、「動物ふれあい広場」に出かけた。
そこは放し飼いの動物が多く、客はエサを買って、自由に与えることができる。
娘さんは大はしゃぎで、キリンのいる場所まで来た。
キリンは背の高い動物なので、ずっと低い場所にいて、
首を伸ばして柵の間からエサをもらうようになっている。

娘さんは、顔を出しているキリンにエサをあげようとしたが、4歳では届かない。
門脇さんが抱き上げようとしたとき、近くにいた中年の男性がパチンと指を鳴らし、
すると、キリンの首がススススと縮んで、娘さんが伸ばした手から、
エサをぱくっと食べた。「え? え?」そこへ、飲み物を買った奥さんが帰ってきたが、
今見たことを告げると「キリンが体をかがめただけでしょ」と言われた。
中年男性は、いつのまにかいなくなり、キリンの首も元に戻っていたそうだ。


沖縄から大阪に出てきて事務員をしている上原さんは、祖母がユタと言って
霊媒師のような仕事をしていた。そのせいもあってか、
普通の人には見えないものが見えるときがある。
ある日、遅くまで飲み会があり、なんとか終電に間に合ってアパートのある街の
駅に着いた。かなり酔った状態で歩いていると、缶を蹴飛ばしてしまった。

道路脇に花束が添えられてあり、今 蹴飛ばしたのはジュース缶だった。
「ごめんなさいね」上原さんは心の中で謝り、缶を元に戻して信号を待った。
すると、「ねえ・・・」という声が聞こえ、スカートが軽く引っぱられた。
見ると、頭の割れた血まみれの男の子で、明らかにこの世のものではない。

上原さんは反射的に、祖母から教えてもらっていた呪言を唱えると、
子どもはスッと消えた。翌朝、遠回りして花を買った上原さんは、
駅前にまだ残っていた花束の上にそっと重ねた。そのとき、
上原さんは、あの子の話をもっと聞いてやればよかったと思い、
沖縄に戻って、祖母のあとを継いだほうがいいんだろうか、
そんな考えが頭をよぎって、まだ迷っているところだという。







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