月面核爆発計画って何?

2018.06.19 (Tue)
トランプ米大統領は2018年6月18日(現地時間)、
米軍に新たに「宇宙軍」を創立すると指示しました。
 トランプ大統領は国家宇宙会議にて、「アメリカが宇宙空間にプレゼンスを
持つだけでは不十分で、宇宙で優位に立つ必要がある」と語り、
宇宙探査だけでなく国防における宇宙への関わりを表明。そして、国防総省に、
陸軍、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊に続く6番目の軍種の創立を指示したのです。

(楽天ニュース)

「A-119」プロジェクト


今回はこのお題でいきます。アメリカは現在5軍と言われています。
Army(陸軍)、Navy(海軍)、Air Foece(空軍)、 Marine(海兵隊)、
Coast Guard(沿岸警備隊)ですが、それに加えて、Space Force(宇宙軍)を、
正式に国防総省の管轄下につくろうということのようです。

ふーむ、まあ、現在の宇宙関連技術を最もリードしているのがアメリカですから、
こういう発想が出てきても不思議ではないでしょうけど、
でもこれ、1966年に国連決議で採択された
「宇宙条約」との関連はどうなんでしょう。

宇宙条約は、4つの柱から成り立っています。① 宇宙空間の探査・利用の自由
② 領有の禁止 ③ 平和利用の原則 ④ 国家への責任集中原則
この中では、④がわかりにくいかもしれません。これは、もし宇宙で何かがあった場合
それに関与した国家が世界に対して全責任を負うという意味です。

先日、中国の宇宙実験室「天宮1号」が落下するという騒ぎがありましたが、
あのようなことが起きた場合、中国が世界に対してすべての責任を持つことになります。
これは、もし人工衛星やロケットを打ち上げたのが民間企業であったとしても、
そこが帰属している国家が、賠償などをしなくてはならないということです。

で、この宇宙条約には、明確な欠点があると言われています。
③の平和利用に関して、月や火星などの天体の軍事利用ははっきり禁止されて
いるものの、宇宙空間の軍事利用にはほとんど触れられていないんです。
ですから、ICBM(大陸間弾道ミサイル)などのように、
いったん宇宙空間に出るものでも、条約の対象外と考えられているんです。

あと、核爆弾などの大量破壊兵器は宇宙に配備してはならないことになっていますが、
通常兵器はそのかぎりではありません。はっきりしたことはまだわかりませんが、
トランプ大統領としては、宇宙空間に通常兵器を備えた軍隊を、
常駐させようと考えているのかもしれません。

さて、みなさんは「神の杖 Rods from God」という言葉を聞かれたことが
あるでしょうか。これは、アメリカが密かに開発しているとされる宇宙兵器で、
高度1000kmの人工衛星上から、ウランやチタンなどの硬い棒状の金属に
推進装置を取りつけたものを、地上の目標に向けて発射するという計画です。

「神の杖」計画


その棒の先端には、爆発する弾頭はついていません。
これは運動エネルギーを利用する兵器で、最大速度はマッハ10に達するとされます。
まあ、原理としては、ヤシの実が頭に落ちてくるのと同じです。その威力は、
特に、地下基地などにこもっている相手に対して発揮され、
地下数百mにある目標の破壊が可能だと考えられています。

さて、今回のお題に戻って、アメリカによる月面核爆発計画があったのを
ご存知でしょうか。「A-119」というコードネームのプロジェクトです。
第2次世界大戦の終了とともに、米ソは冷戦に入りました。
アメリカはそれまで、宇宙技術に関してソ連よりも優位に立っているという
自負がありましたが、それを打ち砕く出来事が起こります。

「スプートニク・ショック」です。1957年10月、
ソ連が地球低軌道で発射した人類初の人工衛星スプートニク1号が
打ち上げに成功したことですね。これは、アメリカ国内において、
各方面でパニックに近い反応を引き起こしました。

スプートニク1号


これに対抗し、同年、アメリカは、人工衛星ヴァンガードを打ち上げましたが、
わずか1.2m、時間にして2秒ほど浮上した後、爆発してしまったんです。
そこで、何としても、ソ連にアメリカの力を見せつけるべく計画されたのが
「A-119」、月面上で核爆弾を炸裂させようとするものです。

ヴァンガードの失敗


約38万km離れた月面上で核爆発を起こし、爆発する際に発生する火影と
巨大なキノコ雲を地球から肉眼で確認できるようにし、ソ連を震え上がらせようと
いうわけです。この計画には、映画になった『コンタクト』などのSF小説も書いている
天体物理学者のカール・セーガンも深く関わっていました。

カール・セーガン博士


ですが、当時すでに完成していた水爆は重くてロケットに搭載できず、
計画は縮小され、1.7トンの原子爆弾がのせられることになりました。
これは、広島・長崎に投下されたものの10分の1以下の威力です。
で、打ち上げ失敗の危険性、また月で爆発させることができたとしても、
核汚染物質が地球上に降り注いでくる危険性を考慮して、
最終的に、計画は中止されます。

さてさて、このような時代背景のもとに決議されたのが、
上記の国連による「宇宙条約」です。そして、アメリカは宇宙への関わりを、
学術探査、平和利用へと切り替えていきます。
それが、後のアポロ宇宙船による人類初の月面着陸につながっていくんです。

ということで、トランプ大統領には、このような宇宙利用の歴史的経緯を
しっかり考えていただいて、もしアメリカ宇宙軍を創設するのであれば、
人類全体の役に立つためのものにしてほしいと思いますね。
では、今回はこのへんで。







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