筒井康隆 短編ベスト

2018.06.21 (Thu)
この間、エドガー・アラン・ポーのベストをやりましたが、
今回は、敬愛する筒井康隆先生のベスト。ただし、長・中編や
連作短編(『家族八景』など)はのぞき、短編作品にしぼりたいと思います。
ただこれも、筒井康隆フアンは世の中にたくさんいますので、
異論ありまくりだと思いますが、あくまでも自分の好みで選んだものです。

筒井康隆の作品は、中学校、高校時に読みまくった思い出があります。
その後、全集も買ったので、たぶん読み逃してる作品はないと思うんですが、
記憶があいまいな部分もあるので、ここでご紹介する内容は、
もしかしたら違っているところもあるかもしれません。

さて、筒井康隆はSF作家として出発し、小松左京、星新一とともに、
「SF御三家」などと呼ばれましたが、その作品には、
科学的知識を駆使して書かれた、ハードSFと呼ばれるものはほとんどありません。
同志社大学文学部卒で、理系の人ではないんですね。



自分は、筒井康隆の作品のベースは2つあると思っています。
一つはフランスに興ったシュールレアリズムの超現実的な世界観。
もう一つは、ユングやフロイドなどの精神分析論、
それと関係の深い心理学です。では、そろそろ選んでみましょうか。

ベスト1、『鍵』 これはホラーに分類される作品だと思いますが、
幽霊や怪物などが出てくるわけではありません。主人公のライターは、
ふとした思いつきで昔の住まいへ立ち寄り、そこで独身時代のアパートの鍵を発見、
そのアパートに出向くと、そこには元の職場のロッカーの鍵があり、
かつての職場に行くと、そこでは高校時代のロッカーの鍵が見つかる・・・

派手な展開はまったくなく、主人公はただひたすら過去に遡っていくだけです。
現実的には、昔使っていた鍵がそう簡単に見つかるわけはないんですが、
そのあたりは軽く書かれています。で、主人公は、自分の潜在意識の中で、
鍵をかけて厳重に閉じ込められていた、触れてはならない過去を見つけてしまう。

ベスト2、『遠い座敷』山の下の家に住む少年が、山の上に住む友達の家に遊びに行き、
遊んでいるうちに遅くなり、晩御飯までごちそうになる。暗くなって、
帰り道が大変だなと思っていると、友だちの父親が、
「続いている座敷づたいに降りていけば、やがておまえの家に着く」と教える。

少年がふすまを開けると、そこには座敷・・・日本間があり、
一つ一つの座敷は間取りが微妙に違っていて、床の間にある掛け軸や置物も違う。
少年は怖い思いをしながらも、えんえんと続く座敷を通り抜けて、
家族のいる場所へとたどり着く。どうして座敷が連なっているのかの説明は
いっさいなく、じつに不思議な印象を残します。

ベスト3、『エロチック街道』見知らぬ町でタクシーを降ろされた主人公は、
町の人に交通手段を聞くと、バスの他に温泉があると言われる。
温泉は地下洞窟を流れて隣町まで続いている。
その中を、案内人の半裸の女性と流されてく・・・という淫夢のようなお話。

ベスト4、『熊ノ木本線』たまたま熊の木という集落のお通夜に参加した主人公は、
うまい地酒をふるまわれ、歓待されて、地元に古くから伝わる「熊の木節」という
俗謡を見せてもらう。通夜に来た人々が一人ずつ前に出て、
熊の木節を歌い踊るが、それぞれ微妙に歌詞が違っている。

調子にのった主人公は、すっかり覚えてしまった熊ノ木節を、
皆の前で披露するのだが・・・これはナンセンス小説に入るんでしょうが、
最後で一転して怖い話になります。
古代から伝わる「忌み歌」を利用したアイデアが秀逸な作品でした。

ベスト5、『関節話法』題名は「間接話法」のシャレですね。
言葉をしゃべることが無作法とされ、関節を鳴らして会話するマザング星へ行った
主人公は、現地人の教師について関節話法をみっちり習うものの、
そもそもマザング星人とは体の構造が違う。

必死になってマザング星人との交渉を試みる主人公ですが、
だんだんにあちこちの関節が鳴らなくなってくる。そこで、
「船」を「しゅらしゅしゅしゅ」などと言い換えをするものの、
ついには全身を脱臼して倒れてしまう・・・というドタバタギャグ満載の中に、
言語についての洞察が含まれたお話でした。

ベスト6、『母子像』これはホラーらしいホラー。
主人公が赤ん坊のの息子に買ってやったサルの人形は特殊な能力を持っていて、
持っている人を異次元に引きずりこむ性質があった。その後、赤子と妻が蒸発し、
「向こう側」から助けを求めて霧のような姿を現すが・・・

ベスト7、『怪奇たたみ男』いい意味で力の抜けたお話で、
畳にじかに寝ていた主人公は、顔に畳のあとがついてしまう。
これをなんとかとろうと蒸しタオルをあてるなどするものの、どうしても消えず、
どんどん本物の畳に変化していく・・・

ああ、もうこんなに長くなってしまいました。この他にも『家』
『乗越駅の刑罰』 『わが良き狼』 『五郎八航空』など、
印象に残る作品は多々あります。自分が書いているナンセンス話も、
筒井先生の影響を受けたものがかなりあるんです。
では、今回はこのへんで。






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コメント
 中学生時代に伯父の蔵書で読み漁って以来、私も筒井康隆の大ファンです。挙がっている中では「乗越駅の刑罰」が(妙な言い方ですが)不快で気に入っています。
 それ以外で何か推すなら「家」でしょうか。大海原に建つ巨大な家の中という世界観が独特で、強烈な印象が残りました。どこか「遠い座敷」に似ている気もしますね。
 個人的に、この人の作品の醍醐味は「逃げ場のなさ」なのだと思っています。物理的・精神的・社会的に追い詰められる恐怖や、事態がエスカレートしていく焦燥感。安全圏で読む楽しさはひとしおですw
| 2018.06.22 03:11 | 編集
コメントありがとうございます
自分が選んだものを改めて見てみたら
SFらしいSFって、関節話法くらいしかないんですよね
bigbossman | 2018.06.22 04:13 | 編集
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