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眠らない話

2018.06.30 (Sat)
脳内にある80種類のタンパク質の働きが活性化すると眠くなり、
眠りにつくと働きが収まるのをマウスの実験で発見したと、
筑波大の柳沢正史教授(神経科学)のチームが英科学誌ネイチャー電子版に発表した。
「スニップス」と名付けたこの一群のタンパク質は眠気の「正体」とみられ、
睡眠そのものに深く関わっているらしい。

柳沢教授らは、タンパク質が睡眠を促して神経を休息させ、
機能の回復につなげているとみている。「睡眠の質の向上や、
不眠など睡眠障害の治療法の開発につながる可能性がある」という。
(共同通信)

ロシアでの30時間不眠実験とされる画像


今回はこのお題でいきます。みなさんは最近、よく眠れているでしょうか。
現在、ロシアでサッカーワールドカップが行われていますが、
日本の試合が、こちらの時間で夜間に開始されたため、
もしかしたら睡眠のリズムがおかしくなったという人もいるかもしれませんね。

さて、上記引用の研究では、脳の神経内にあるタンパク質群に、
眠らないでいると化学変化が起き、リン酸がたまっていくことがわかりました。
それが眠気の正体だったということですね。例えば筋肉が疲労する原因は、
乳酸が発生するためと判明していますが、
それと同じようなしくみが脳内にもあったということです。

さまざまな脳内物質を発見している柳沢正史教授


じつは、これまでにも、脳内でリン酸化現象が起きることは確認されていました。
ですが、それが眠気を誘発するためのものなのか、それとも、
眠れないことのストレスによるものなのかがはっきりしませんでした。
そこで、今回の研究では、遺伝子操作で睡眠時間が長いマウスを作製。
このマウスと不眠状態にした通常マウスを比べた結果、
リン酸化が、睡眠を誘発するためであることがつきとめられたということです。

睡眠は、よくコンピュータゲームのリセットやPCの再起動に例えられます。
ずっと眠らないでいると、脳神経が疲労し、また記憶内容が増えて処理しきれなく
なるため、いったん眠ることで神経を休め、起きていた間の記憶の整理を行います。
眠くなることは、人間の体に生まれつき備わったシステムなんですね。

ではもし、長時間眠らないでいたらどうなるでしょう。
これについては、古くから人体実験が行わていますが、比較的近年のものを
ご紹介しましょう。1959年、アメリカラジオ局のDJ、ピーター・トリップが、
小児麻痺救済の基金集めのために、タイムズスクエアのブースで、
衆人に見まもられながら、「200時間不眠マラソンラジオ」を行いました。

結果を最初に書くと、200時間(8日と8時間)は達成されましたが、
100時間を過ぎたあたりから、行動に異常が見られるようになり、
突然声を上げて笑ったり泣いたりし、
また、単純な計算や単語を書くこともできなくなりました。

200時間不眠マラソンラジオ


5日目に入ると、体中を虫が這い回っているという幻覚を見たり、
危険防止のためにつきそっている医師に対して「お前は葬儀屋だろう、
俺を葬る気か」と叫んで、逃げ回る騒ぎを起こしました。
誰が見ても、もう無理という状態だったんですが、最後の70時間ほどは、
覚醒作用のある薬を飲んで、なんとか200時間が達成されたんですね。

実験の最後では、このDJは知り合いの顔が判別できず、また、
鏡を見ても自分が誰かわからず、「お前は何者だ」などと叫びました。
完全に精神錯乱状態におちいっていたわけですが、終了後に、
長い眠りをとることで、いったん回復したように見えました。

ですが、この不眠マラソン後、彼の性格は怒りっぽくなり、
周囲と強調することができず、人間関係が悪化してメディアの世界から
姿を消してしまいました。また、私生活では4度の離婚をしています。
不眠実験の影響でキャリアを失ったと見る人が多いんですね。

さて、このころにはまだ、「ギネスブック」に不眠時間の記録がありました。
上記の実験の5年後の1964年、アメリカ人の学生が、スタンフォード大学の
心理学研究室の協力のもと、265時間の不眠記録を達成しました。
ですが、やはり記憶障害や認知障害、言語障害を起こし、

最後のほうでは、左右の眼球がバラバラに動くなど、
生理機能にも影響が出たとされています。これらの実験により、
不眠へのチャレンジは、あきらかに人体に危険があり、死の可能性も高いとされ、
ギネスブックからは、不眠に関する記録の類はすべて削除されています。

不眠の動物実験では、ロシアで犬を対象に行われたところ、
90~120時間ですべての犬が死亡しました。アメリカでラットで行われたものは、
10日程度で、こちらもすべてのラットが死亡。解剖をしたものの、
確定的な死因はつかめなかったそうですが、ホルモン異常など、
さまざまな要因で、全身の状態が悪くなったためと考えられています。

さて、ナルコレプシーという病気をご存知でしょうか。まとまった睡眠がとれず、
短時間しか眠れない。そのかわり、24時間ずっと眠い状態が続くという症状で、
直木賞作家の色川武大氏(ギャンブル作家の阿佐田哲也)がこれにかかっていて、
麻雀を始めても、牌をつもっては眠り、つもっては眠りという状態だったそうです。

色川武大氏


また、ショートスリーパーといって、短時間の睡眠でも
健康を保つことができる人間も知られていて、ナポレオンが1日3時間しか
眠らなかったというのは有名な話です。ショートスリーパーは一般人と比較すると、
レム睡眠が圧倒的に少ないことがわかっています。

さてさて、最後に、不眠はつらいものです。画家のゴッホはずっと不眠に悩んでいました。
彼は自分の耳を切り落とし、ピストル自殺をしてしまいますが、精神病のために
不眠になったのか、不眠のために精神病になったのかははっきりしていません。
彼は、「画家の寝室」という題の作品を数点描いていて、そこからは、
安らかな眠りに対する切実な希求が読みとれます。では、今回はこのへんで。

「ファン・ゴッホの寝室」





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