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生きている道彦の話

2018.07.29 (Sun)
これね、俺が小5と小6のときのことがメインなんだけど、
じつはずーっと続いている話だと思う。だから、今も俺が住んでる△△市に来れば
道彦がいるから、ぜひ調べに来てくれよ。あれがどういうものなのか・・・
始まりは、最初に言ったように小5のときだ。
たしか夏休み前だったな。俺のクラスに転校生が来ることになったんだよ。
△△市は地方都市だし、ろくな産業もないから、転校生って珍しいんだ。
だから、担任から「転校生の人が来ます」って話を聞いたときは、
みな興味津々だったね。で、それから2、3日して、
朝のホームルームで、担任の後に背の高い男子がついてきて、
担任に紹介された後のあいさつで、「山田道彦です 1年間よろしくお願いします」
って名乗ったんだ。そのときの印象は、おとなしい感じで、

すごく恥ずかしそうにしてた。で、転校生って珍しいから、
最初は誰も話しかけたりしないんだよ。だから、道彦はしばらく、
休み時間とかは誰とも話をせずに自分の席に座ってた。
俺とは席が近くて同じ班だったんだよ。その週に調理実習があって、
そのときにはじめて道彦と口をきいた。やっぱおどおどした感じだったな。
でも、イジメられたりってこともなかった。
田舎の市だし、静かでのんびりした小学校だったからね。
で、そのときから、少しずつ道彦と話すようになっていった。
俺もどっちかといえば大人しいほうだったし、なんとなく気が合ったんだな。
あの頃、テレビでオカルト番組がけっこう流行ってたんだ。
俺はそういうの大好きで、子ども向けのオカルトの本なんかも買って持ってた。

で、道彦はそういうことにすごく詳しかったんだよ。
放課後、途中までいっしょに帰るんだけど、そのときに、
生まれ変わりの話なんかを道彦が教えてくれたんだ。ほら、ある町に生まれた子どもが、
自分は遠く離れた別の町で生きてた○○だ、とか言い出して両親の名前とか話す。
それに興味を持った大人が調べてみると、実際にその町で、
○○という子どもとその家族がいた記録が残ってるとか、そういうやつ。
前世の記憶って言ったらいいのかな。そういうのにすごく詳しかったんだよ。
「どうしてそんなこと知ってるの?」って聞いたら、
「興味を持って調べてるんだ。うちにはそういう本がいっぱいあるよ」って言う。
けど、道彦はオカルト以外のことはぜんぜん知らなかった。
テレビのアイドルとか、野球の選手とか、そういうのはまったくわからなかったんだ。

だから、俺がいなかったら、クラスで話す相手もいなかったんじゃないかな。
あと、道彦は昔のこともよく知ってた。例えば、子どもがみんな買う、
有名な漫画雑誌があるだろ。その頃は180円くらいだったと思うが、
「これ、20年前は40円だったんだ」みたいなこと。
だからなのか、勉強も、算数とかは普通だったけど、社会の歴史をやってるときだけは、
積極的に自分から手をあげて発表したりもしてたし、
その内容は、先生も感心するくらいだったんだよ。
でね、そのうちに夏休みになって、俺は週に一度くらい道彦と遊んだ。
ほとんど外遊びだったな。夕方、公園の林に虫捕りに行ったり、
2人で自転車で、戦争中の防空壕を探検しに行ったこともある。そのときは、
道彦が案内をして、わかりにくい道をたどって、

山裾にある防空壕の穴に入ったりもしたんだ。で、あるとき、
またオカルトの話になって、道彦がドッペルゲンガーっていうのかな。
この世にいる自分そっくりの人間のことを話し出して。
で、俺が「そんなのありえないよ」とか言ったんだと思う。
そしたら道彦がめずらしく怒って、「これ家にある本に載ってるんだから、見においでよ」
みたいに言った。それではじめて、道彦の家に行ったんだよ。
道彦の家は建売の団地みたいなとこで、古くなったけど今もある。
道彦が自分で鍵を開けて、中には誰もいなかった。
玄関からすぐの階段を上がっていくと、道彦の部屋があった。
中は壁2面が本棚になっていて、ずらっとオカルトの本が並んでた。
で、その多くが、大人が読む難しいやつで、中には英語ののもあったんだ。

あと、今から考えれば、これ大事なんじゃないかと思うけど、
本棚の上に変な機械があったんだよ。横1m、高さ30cmくらいの機械で、
電極みたいなのがたくさん上に出てた。で、前側に丸い時計みたいなのがついてるんだけど、
針が一本で、文字盤には数字はなく、全体に緑色に光ってすごく印象に残った。
「あれ、何?」って聞いたら、道彦はつまらなそうに「わからない、
 僕が生まれたときからあるんだ」って言ってた。それで、
道彦が下からジュースを持ってきて、俺は面白そうな本を棚から出して読んだ。
そうやって1時間ほどしたら、道彦が「そろそろお母さんが戻ってくるから帰って」
みたいに言って、2人で外に出て、俺が「じゃあね」って言ったとき、
大きな黒い車が道をやってきて、道彦はあわてて家に入ってったんだよ。
そんな感じで、5年生のときはちょくちょく道彦と遊んだ。

ただ、家に行ったのはその1回きりだったけどな。で、だんだん学年末が近づいて
くると、道彦はことあるごとに「時間がないなあ」みたいなことを言うようになった。
で、俺が「何の時間?」って聞いても黙ってる。あと、道彦はもともと背が高かったけど、
その頃には担任を追い越して、大人でも背が高いってくらいになってたんだよ。
それから・・・6年生に進学して、クラス替えがあったんだ。
道彦とは別のクラスになって、俺も新しいクラスに慣れるのが大変で、
道彦と遊ぶことはなくなった。で、4月がもうすぐ終わるってときに、
道彦が殺されたんだよ。下校の途中で何者かに刃物で刺されたんだ。
これは大ニュースになって、新聞やテレビでももちろん報道したし、
静かな市がマスコミでいっぱいになった。全校集会もあったんだよ。
でも、犯人はつかまらず、今もって手がかりすらないんだ。

それから、時が流れて、俺の家は印刷屋だったんだけど、大学を出てから
長男の俺があとを継いだ。で、結婚して子どもができ、そこの市にずっと住んでるんだ。
でね、去年の夏。息子は小学校5年で、俺と同じ学校に行ってるんだけど、
「クラスに転校生が来た」って話したんだ。「ふーん、どんな子だ?」って聞いたら、
「名前はさとうみちひこで、背が高くて、すごくオカルトに詳しいんだよ」
それで、俺が小学生の時の道彦を思い出してね。でもまあ、偶然だと考えた。
それはそうだろ。それから2ヶ月くらいして、息子が、
「今日、みちひこくんの家に遊びに行ってきた。オカルトの本がたくさんあったよ」
みたいな話をして、場所を聞いたら間違いなくあの道彦の家だったんだよ。
それで俺は少し怖くなってきたけど、息子に「部屋に大きな機械がなかったか?」
って聞いてみたんだよ。そしたら「あった。お父さん、何でわかるの?

 あの機械って何?」こう問い返されて、答えることはできなかったんだよ。
それから、ちょくちょく息子にはみちひこのことを聞いた。
たいがいはありきたりのことしか返ってこなかったが、
新しい年になって、「みちひこくんが最近、時間がない、時間がないって言って、
 あまり遊ばなくなった」って話したんだ。
これ、俺が小学校のときとそっくりだろ。また、もやもやした不安を感じてね。
それが決定的になったのは、息子が年度末に持ってきた児童会の文集。
全クラスの集合写真が載ってるんだよ。それを息子から借りてみて愕然とした。
最後列に並んでるひときわ背の高い子が、名前は佐藤道彦で、
俺の記憶にある道彦と、多少髪型は違ってたけど、そっくりな顔をしてたんだ。
子どもなのに目尻にしわがあるとこなんか、瓜二つだった。

で、俺は自分の記憶を確認したくて、市の図書館に行ったんだ。
地方新聞の縮刷版を見るためだよ。そこで、あの事件のときの記事を確認した。
そしたら、道彦の顔写真がついてて、やっぱり今の道彦と同じに見えた。それと、
もう一つわかったのは、俺が小学校のときの約30年前に、やはり子どもが殺されてて、
事件は未解決。写真はついてなかったが、殺された子の名前が「鈴木道彦」。
もしかしたら、その前もあるのかもしれないが、そこまではたどれなかった。
なあ、どう思う? 数十年ごとに、この市に「道彦」って子が転校してきて、
翌年に殺される・・・そんなことがあるもんだろうか?
それで、今の道彦君に会いにいこうかとも考えたんだ。いや、会ってどうするって
わけじゃないんだが。まさか、「君、もうすぐ殺されるよ」って言うわけにもいかないし、
それでもし、「はい、わかってます」って答えられたら・・・






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コメント
 いわゆる「ループもの」を外側から見ている感じですかね。完全なループではなさそうですが、道彦君の魂というか本質というか、そういうものが囚われているのは間違いなさそう。語り手氏とは一通りの友情を育んだだけに、なんだか物悲しさもあります。
 以上、久しぶりゆえの連投失礼しました。
| 2018.08.07 20:37 | 編集
コメントありがとうございます
これは何でしょうね
おそらくこの地域に縛られた何かだと思うんですが
それ以上はわからないです
bigbossman | 2018.08.07 22:06 | 編集
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