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拾ってくる話

2018.07.30 (Mon)
あの、じゃあ話していきます。俺、ある大学の3回生で、山根って言います。
これね、俺自身の話じゃなく、俺の学部仲間の西崎ってやつの身に
起きたことなんです。だから、よくわからない部分もあるんですよ。
そこ、まず、断って起きますね。始まりは、1ヶ月ほど前の夕方でした。
薄暗くなってきた中、俺が大学構内の喫煙所でタバコ吸ってたら、
山根がやってきたんです。そんときに、小ぶりだけど、やつには似合わない、
革製のスーツケースを手に下げてまして。
「お前、それどうしたんだ?」って聞いたんです。そしたら、
ベンチに置いてあるのを拾ったって言うんです。
で、いかにも高級そうな物だったんで、「それ、教授とかのじゃないのか。
 事務室に届けてこいよ」って言ったら、

「ん、ああ、そうだな」とか生返事をして、
タバコ1本吸っていなくなっちゃいましてね。まあどうせ、届けやしないで
ネコババするんだろうとは思いましたけど。で、数日して、
同じゼミに西崎がいたんで、そんときのことを思い出して、
授業が終った後に、「お前、こないだスーツケース拾ったよな。
 あれ、何か金目のもんとか入ってたか?」って聞いてみました。
そしたら西崎はだらっとにやけた顔になって、
「ああ、あれか。アパートに戻って開けてみたら、
 すげえいいもんが入ってたんだ」
って言うんです。で、「何だったんだよ」って俺が言っても、
にたにた笑うだけで答えなかったんです。

それで俺もちょっとカチンときまして、
「知らねえぞ、ネコババはたしか、占有離脱物横領って罪になるんだからな」
って言いました。そしたら、西崎はますますにやけて、
俺のほうに顔を近づけ、「首だよ、首、きれいな女の首」って答えたんです。
「コノヤロ」って思いました。だってそのスーツケース、
薄型で、人間の首なんて入るようなもんじゃなかったですから。
「嘘つくなよ!」って言ったら、西崎のやつ、少し真顔に戻って、
「じつはなあ、開けてみたら土地登記みたいな書類の束が重なってて、
 それと・・・驚くものが入ってたんだよ。何だかわかるか?」
俺が「わかんねえよ、そんなもん」って答えたら、
「位牌だったんだよ、女の」って。

「位牌!?」 「ああ、なんとか信女って書いてあったから、女のだろ」
「うええ、気味悪いな。で、それどうしたんだよ」
「部屋に飾ってる」 「何言ってんだお前、失くした人はすごく困ってるだろ。
 今からでも警察に届けろよ」 「ああ・・・けどなあ」
こんな会話になりまして。そこで、俺のサークル仲間が通りかかったんで、
西崎とは別れました。いや、位牌をスーツケースに入れて忘れるなんて、
変な話だなあとは思ったんですけど、ほら、電車の網棚に骨壷忘れてて、
しかも引き取り手が出てこないなんて話もあるじゃないですか。
まあ、そんなことがあって、それからしばらく西崎とは会わなかったんですよ。
で、1週間後くらいだったかなあ。俺、大学がある駅前で酒飲んだんです。
仲間と別れて、夜中の1時過ぎ、部屋に戻ろうと一人でぶらぶら歩いてたら、

街路樹のとこに人がいて、石崎だと思いました。
その街路樹はポプラ科かなんかなんだけど、根本のところに別の小さな植え込みが
あるやつで、西崎はそこに頭を突っ込むようにして何かやってたんです。
「おい、西崎じゃないか。何やってんだお前?」そしたらやつはこっち見て、
「あー山根いいところに来た。引っかかってて取れないんだ、手伝ってくれ」
って言いまして。見ると、植え込みの中にホースみたいなのがあったんです。
西崎はそれを両手でつかんでまして。「何だよそれ、ゴミじゃないか」
「いいから頼む、何かおごるから」それでね、俺も酔ってたから、
2人で持って綱引きみたいに引っぱったんです。
そしたら急にずるっと抜けて、俺ら2人とも尻もちついちゃって。
でね、植え込みから出てきたのは、古い掃除機のホースなのかなあ。

とにかくそういうもので、土とかゴミがついて汚らしかったんです。
でも、西崎は顔を輝かせて、「ありがてえ、これで右腕ゲット」って言ったんです。
で、大事そうにそれ抱えて歩き出したんで、「待てよ、おごるって言ったろ」
そしたらやつは、「今金ねんだよな。俺のアパート近くだから寄ってけよ。
 ビールやるから」って言って。でね、歩いて5分くらいだって言うから
ついてったんです。でね、ボロアパートの1階の部屋の前で、
西崎は鍵を出して、「ちょっとここで待っててくれ」ってドアを開けました。
部屋の中にも引き戸があって、西崎がそれも開けたとき、
ちらっと女の顔が見えたんですよ。若い・・・中学生か高校生に見えました。
それで「ああ、こいつ女引っぱり込んでるんだな」そう思いまして。
それから西崎は缶ビール数本抱えて戻ってきて、俺に渡してよこしたんです。

そのことがあって、次とその次のゼミに西崎は出てこなかったんですよ。
そのゼミは卒論と関係があるやつで、単位落とすと卒業できなくなってしまう。
まあでも、しょせん人のことだし、西崎は親友ってわけでもなかったですし。
で、その次のゼミも西崎は来なくって、さすがに担当教官が、
「あいつ、どうしてるんだ」みたいな話をして。そしたらゼミの一人が、
「西崎くん、こないだ灰皿抱えて歩いてるのを見た」って言い出して。
それがほら、喫煙所にある縦長の大きなやつだったてことで、
俺も前のホースの件を思い出してしゃべったんです。
「変な話だなあ、誰かあいつの電話番号かメアド知ってるやついるか」
でも、知ってるやつがかけてみても不在着信になるだけで。
それで、アパートの場所知ってるのが俺だけだったんで、様子見てこいって言われて。

でね、その午後に行ってみたんですよ。ドアのチャイムを押しても返答なし。
それでノブに手をかけたら開いてたんで、「おーい、西崎いるのか?」
そう言いながら中に入って、引き戸を開けたら、
若い女が立ってたんです。「あ、失礼しました」でもね、それ女じゃなかったんです。
なんであんな見間違いをしたのかわかんないですけど、
そこにあったのはガラクタオブジェでした。片足が三角コーン、
もう片足が飲み屋の看板の壊れたやつ。その上に大型の灰皿がのっかって
腕の片方が電線の束、もう一方が、俺が前に引っぱり出すのを手伝った、
あのホースみたいなので・・・・かろうじ人間のように見えるものだったんです。
それで・・・灰皿の上、人でいえば頭にあたる部分に、
位牌に見えるものがのっかってました。

それを呆然と見てたら、背後から「こら山根、お前なにやってるんだよ!!」
怒声が聞こえて、ふり向くと西崎が立ってたんです。
「何って、お前が大学来ないから様子を見に・・・」 「うるせえ、今すぐ出て行け!!」
すごい剣幕で、殴られるかと思ったんで部屋から出ました。
そりゃ、せっかく心配して来てやったのに何だよ、って思いましたよ。
でね、そんとき西崎のやつ、片手に麻袋みたいなのを持ってたんですが、
それ、動いてたんですよね。もしかしたら中に、
ノラネコか何か、生き物が入ってたかもしれません。
それにしてもね、普通じゃないですよね。授業にも出ないで
あんなガラクタ組み上げてるんですから。完全にいかれるんだと思いました。
ただねえ、一瞬だけど、あれが女の姿に見えたのが、どうもわからないんですよね。

それでね、西崎は次の回のゼミにも出てこなくて、
大学で姿を見たものも誰もいなかったんです。でね、その後、指導教官から、
「西崎が行方不明になってて、実家のご両親が学生課まで来て、 
 行方を尋ねてる。山根、お前何かわかるか」って聞かれました。
でも、「わかりません」って答えるしかないじゃないですか。
あの位牌やガラクタの話はしませんでした。
変な話ですし、関係ないだろって思うのがふつうですよね。
でね、それから2週間して西崎が見つかったんです。大学からも、やつの実家からも
ずっと離れた県の墓地で倒れて死んでたんです。体には傷とかはなくて、
ずいぶん痩せてたんで、衰弱死ってことになったみたいで。え、位牌?
いや、持ってたかどうか、そこまでは聞いてないですけど・・・







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