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地獄から来た子どもの話

2018.08.14 (Tue)
※ 冷房風邪をひいて体調悪いです。なんか話の出来もあまりよくない。

こんばんは、じゃあ私の話を始めさせていただきます。
ただ、始めにお断りしておきたいのは、この話、今からもう20年も前の
ことなんです。わずか2日間の出来事で、しかもその後ずっと何も起きてません。
ですから、私の思い出話みたいなもので、
みなさんにはあんまり怖くないかもしれないです。
あれは、私が小学校4年生のときでした。まだ妹が産まれる前のことです。
両親と祖母と私の4人で、私の夏休み中、温泉地に行ったんです。
場所は言わないでおきますね。全国的には有名ではないものの、
私が住んでた地方ではそこそこ有名な、隣県の温泉です。
私はまだ子どもだったから、遊園地なんかのほうがよかったんだけど、
祖母がすごく温泉好きだったんです。父の車で行きました。

宿に着いたら、やはり夏休み期間だけあって、駐車場にはずらっと車が並んで、
けっこう混んでました。すぐ部屋に通され、まだ日が高かったので、
外に散歩に出ることになりました。そこは大きな一軒宿なので、
温泉街などはなく、自然の中を通る遊歩道があったんです。
硫黄のにおいが立ち込め、そこここから煙が上がってました。
夕方なので、散歩に出てるお客さんはちらほらで、
私たちは祖母に合わせてゆっくり歩いていったんです。
そしたら、横手の林が途切れて右側が崖になりました。
といっても、それほどの高さはなかったんです。5、6mくらい下に、
ぼこぼこと泡がたってる黄土色の沼がありました。
木の橋があり、そのたもとのところに「地獄沼」という看板が立ってて。

そこでたしか私が父に、「ここって地獄なの?」って聞いた気がします。
そしたら父は、「ああ、温泉地獄といって、日本のあちこちにあるんだよ。
 あの底から温泉が湧き出してるんだな」こう答えました。
橋はしっかりした作りで、手すりも高かったんですが、
こっから落ちたら助からないと思って、祖母と手をつないで恐々渡っていきました。
と、下の地獄沼の端のほうにひときわ大きな泡がわき上がってきたんです。
泡はかなりの高さまでふくらみ、びしゃっという感じで弾けましたが、
その跡に、泥の色をした人の背中が見えました。
「あ、お父さん、人がいる」思わずそう声をかけました。
「え、この沼の中にか。まさか」 「えー、だっているから。ほらあそこ」
指さしたんですが、父にはわからないようでした。

「えー、なになに?」今度は母、それで母にも下を指し示して、
「ほら、あそこに、人!」 「うーん、お母さんわからない」でもやっぱり、
母にも見えてなかったんです。そうしてるうち、私たちは沼の中央を過ぎ、
その地獄沼から生まれたものは、泥の上を這うように進んで、
ほとりの岩に上がったんです。子ども、に見えました。
全身が黄色い泥色の、そのころの私より少し年下の子ども・・・
でも、髪は泥で固まってたし、男か女かわかりませんでした。
私が歩きながら後ろをふり返ってそれを見ていると、
祖母が握ってた手に力を込めて、「おばあちゃんには見えるよ。
 けど、あれ、見ないほうがいいものだから」そう言ったように覚えてます。
だから、私は無理やりそれから視線を切って、遊歩道を進んでいったんです。

そのときの散歩は小1時間くらいだったと思います。
帰りも同じ道を通ったので、沼でさっき見たものを探したんですが、
もういなくなってしまってました。それから、夕食前に1回大浴場に行き、
夕食後は家族で、宿の中のカラオケをやったり、ゲームコーナーに行ったりしたので、
祖母にさっきのもののことを聞こうと思ってたのが、
すっかり忘れてしまってたんです。その夜は、何もおかしなことはなく、
翌日の朝になりました。朝食は、1階にある食堂でとることになってたので、
家族でそこに行きましたら、団体客や家族連れなど、
他のお客さんがたくさん入ってました。私たちの名前があるテーブルに行くと、
お膳が並んでて、私は「いただきます」を言って食べ始めたんですが、
しばらくして、むっと強い硫黄のにおいがしたんです。

その温泉は、どこもかしこも硫黄のにおいで、私ももう気にならなくなってたんですが、
とても強いにおいで、思わずそっちのほうを見たら・・・
子どもが、やや離れた通路の床に這いつくばってました。
その宿の浴衣を着てたような気がします。髪は短く、男の子だと思いました。
その子はゆっくりと立ち上がり、振り向いてこっちを見ました。
そしたら、顔が泥だったんです。黄土色の泥がぐるぐる渦巻くような、目も口もない顔。
私は「キャッ!」と叫んで立ち上がってしまいした。
「どうした?」と父が聞き、「あれ、あれ、あそこ!!」と大きな声を出すと、
父は「指さすのはやめなさい。何もいないじゃないか」そう言い、
私は、昨日と同なじだ、見えないんだって思ったんです。
その子は、ひょこひょこした動きで、ゆっくり私たちのテーブルの近くまできて、

そのとき、祖母が小さな声でその子に、「よそへ行きなさい」って言ったんです。
その声は父母にも聞こえ、「何? おばあちゃん」と母が聞きました。
祖母はそれには答えず、泥の顔をした子どもはくるっとふり向き、
全身を引きずるようにし通路を戻って、別の家族連れのほうに近づいていったんです。
「なんかすごい硫黄のにおいだなあ」って父が言ったのを覚えてます。
部屋に戻るとき、祖母に「おばあちゃん、さっきのあれ、何?」って聞きました。
祖母は、「わからないねえ、ただ悪いものだとしかわからない。
 お前にも見えるんだねえ」って言いました。
それから部屋に戻り、もう一度最後に温泉に入って、宿を発つことになりました。
駐車場の父の車に向かうと、やや離れた場所で、
やはり家族連れが車に乗り込むところでした。

そのときの私の両親よりも齢が上に見える父親と母親、中学生くらいの女の子。
それと・・・旅館の浴衣を着た子どもが、女の子の後ろにいました。
「!! あれ、さっきの」と思いました。その浴衣を着た子どもが、
車に乗ろうとしたとき、横顔が見えました。
やはり黄色い泥の固まりが動いているみたいでした。
バタンと車のドアが閉まり、その家族の車は走り出し、
私たちも出発しました。その日は、ある有名な小説家の記念館に行き、
その近くで昼食をとってから、家に戻ったんです。
翌日も父の仕事は休みでした。私は前日の旅行で疲れてたので遅く起き、
10時過ぎに下に降りていきました。
すると、ダイニングで新聞を読んでた父がこう言ったんです。

「おはよ。何か昨日行った温泉の近くで事故があったみたいだぞ。
 家族連れの車が、崖崩れ防止用のコンクリに衝突して、
 全員が亡くなったみたいだ。あの温泉の泊り客だったんじゃないかなあ」
思わず「何人死んだの?」って聞いてしまいました。
父は、「両親と女の子3人みたいだ・・どうかしたのか?」
こう聞き返してきましたが、私には答えられませんでした。
これで、終わりです。







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