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怪談の禁じ手

2018.08.25 (Sat)
今回は怪談論でいきます。さて、当ブログをご覧いただいている中には、
ミステリに造形が深い方もおられるかもしれません。
自分は、そんなに詳しいほうではないんですが、それでもいちおう、
古典的名作と呼ばれる作品群は読んでいます。

S・S・ヴァン・ダインという、創成期の推理作家の大御所がいますよね。
名探偵ファイロ・ヴァンスの生みの親で、代表作に『グリーン家殺人事件』
などがあります。で、この人、本名で出版した推理小説論で、
「ヴァン・ダインの二十則」というのを書いてるんです。

「ヴァン・ダインの二十則」

これは、推理小説を書く上での鉄則をまとめた内容で、
「1,事件の謎を解く手がかりは、全て明白に記述されていなくてはならない。」
こんな感じで20の原則論が出されていて、まあ、どれももっともな内容です。
ただこの後、わざとこれに反するトリックを使った作品も出てきています。

それについては、ここではふれませんが、怪談においても似たような原則というのは
あると思うんですよね。じゃあ、怪談で禁じ手とされるのはどんなことでしょうか。
自分はヴァン・ダインのように頭の切れる人間ではないので、
順不同、思いつくままに書いてみたいと思います。

・すべてが夢の話
これはそもそも怪談ではなくて、夢の記録ということになるでしょう。
いくら怖くても、夢は夢です。ですから、怪談に夢が出てくる場合は、
その夢が予知夢であったとか、何らかの形で現実とリンクしていないと
読む人に納得してはもらえないでしょうね。

・現実に起きてない事件を取り入れた話
これはどういうことかというと、例えば、「道路でバスがハザードを出して、
路側帯に停車した。警察がバスを調べたところ、運転手と乗客全員が
席に座ったまま心不全で亡くなっていた」こういう書き出しで始めたとして、
でも、実際にこんな事件があれば、世間が大騒ぎになってますよね。

これは極端な例ですが、ちょっと調べれば現実に起きていないとわかる事件を、
話に取り入れるのはマズイでしょう。
もちろん、フィクションであればまったくかまわないですが、
「実話怪談」としては禁じ手になると思います。

・あまりに非現実的な怪異が出てくる話
例えば、「高速道路を100kmオーバーで走っていたら、白い着物を着た
婆さんが、車に並走してどこまでもついてきた」 都市伝説の100kmババア
のことですが、これはギャグにしかならないと思います。

・伝聞だけの話
これは絶対にダメというわけではないですが、やはり怪談というのは、
本人が体験した話という形が一番いいんじゃないかと思います。
「俺の高校時代の先輩の彼女が体験した話なんだけど・・・」
これだと臨場感がないですし、そもそもその人が、
作り話をしている可能性だってあるわけです。

・あまりにも遠い昔の話
「うちの祖先はその村の庄屋だったんだけど、あるときに旅の坊さんが
宿を借りたいと訪ねてきて・・・」これは昔話になってしまいますね。
ただ、そのときの呪いが現在まで続いているとかなら、
そのかぎりではありません。

・悪い人間が罰を受ける話
どういうことかというと、例えば「DQNが神社に行って罰当たりなことをした。
そのために神罰を受けて次々に死んでいく・・・」こういう内容だと、
怖い以前に、「ザマミロ」とか「当然の報いだ」とか思いますよね。
この手の怪談もないわけではありませんが、本道からは外れてる気がします。

・宗教的に混乱している話
怪談を読んでいると、神社やお寺が出てくるものはけっこう多いんですが、
中には「お坊さんがお祓いしてくれた」みたいなのもあって、
これ、お祓いをするのは神職ですよね。こういう記述が出てくると、
そっから読む気をなくしてしまう、という人は多いんじゃないでしょうか。

・あまりにも手垢のついてしまった話
例えば「行ってはいけないと言われてた裏山に入ったら怖ろしいものを見てしまった。
家に戻ってそのことを話したら、じいさんにさんざん叩かれたうえ、
檀家になっているお寺に連れていかれて・・・」もう何十パターンも出ている
使い古された構成です。よほどの新味がないと誰も読んでくれないでしょう。

・「幽霊より生きた人間が怖い」という結論になる話
現実的な犯罪とか痴情のもつれ、あるいは精神の病気とかそういう内容のことですが、
これは「怖い話」ではあっても、「怪談」ではないんじゃないかと自分は思います。
たしかに、現実に怖い話というのはたくさんありますけど、
かといって「幽霊より生きた人間が怖い」という結論になるのは、
オカルトの敗北なんじゃないでしょうか。

・まだ風化していない出来事をあつかった話
例えば、「太平洋戦争中の空襲で焼かれた人が・・・」みたいな話はいろいろあります。
戦争の体験がある人はだいぶ少なくなり、怪談として成り立ちますが、
「東北の震災の津波で・・・」これだと、不謹慎だと考える人もいるかもしれません。
まだ記憶のなまなましい出来事は、あまり怪談にしないほうがいいと思いますね。

さてさて、書いてみたらけっこう出てきました。
まだこの他にもありそうです。長くなったのでいったん終わりますが、
またいつか、続きを書く機会もあるかと思います。
では、今回はこのへんで。






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