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夢の町

2013.11.08 (Fri)
私の体験を書きます。
私はごくごく平凡な家庭の生まれで、父は高校の教師をしていましたが
校長にも教頭にもならず退職しました。
私自身も堅実に公務員をめざして勉強に励み、念願がかなって
今は県の水道局で技師をしております。
本題に移ります。
私は子供の頃から同じような夢をくり返し見ていました。
それも悪夢でもないやはり平々凡々とした夢です。
この夢を見るときは、寝入りばなに夏でも薄寒いような何とも言えない奇妙な感覚があって、
気がつくともう夢の中に入っているのです。

どんな夢かといいますと、典型的な田舎の街路を歩いているだけです。
夢の中での季節は夏の時もあれば冬のときもありました。
冬の場合は道ばたに雪がつもったりしているわけです。
これは現実の季節と同じ時も、
まるで違っていて秋なのに夢の中では春の花が花壇に咲いていることもありました。
普通の夢のようなぼんやりしたものではなく、夢の中の風景の質感はリアルそのものです。
ただ私自身は歩きながら、ああこれはいつもの夢だなということを理解しているのです。

田舎といっても夢の中で通るのは田んぼ道ではなく舗装道路で、
両側は町並みです。黒い板塀や生け垣の並んだ道を、
何か探し物をしているような気ぜわしい心持ちで、
下を向いてずっと歩いていくのです。
この道をずうっと行くと、左手に火の見櫓と消防ポンプの入った木造の小屋が見え、
さらに行くと右手に小さな郵便局がありそこで道は右に折れて、
向こうの突き当たりにお寺の門が見えます。

道は全長2kmくらいのものでしょうか。
不思議なことに私が歩いている間は車はおろか人っ子一人通りません。
そこをとぼとぼとした感じで歩いていくのですが、毎回違うところで夢は終わります。
ある家の門の前までくると急に、
目的が達せられたような実にほっとした感じがしていつもそこで目が覚めます。
そして私が立ちどまる家は毎回夢を見るたびに違っているのです。
郵便局を曲がった突き当たりのお寺にまでたどりついたことはありません。
そしてひと仕事しおえたような充実した感じは、目が覚めてからもしばらく残っているのです。
ですからこの夢を見るのは私はけっして嫌いではありませんでしたし、
誰かに相談したこともありません。

この夢を見るのは年に1回までの頻度はありません。
3年に2回くらいのペースで、私が小学校6年生になったときに見たのがはじめてです。
それからもう30年近くもたつのですが、面白いことに夢の中の田舎町も、
私が成長し時代が進むにつれて様相が変化していくのです。
例えば街灯一つをとってもずいぶん現代的な形に変わってきています。
現実の時代の進歩とリンクしているといえばよいでしょうか。
ただちょっと見では町は繁栄しているという様子ではなく、
なんだかさびれていっているような感じがしますが、
今日び田舎はどこもそんなものかもしれません。

そして先日のことです。年度末の3月に珍しく一人で出張することになりました。
このようなところに書いてはいけないのでしょうが、
出張旅費の予算が余ってしまいそれを消化するための視察旅行です。
このような場合、たいがいは大きな都市の近代的な設備を見てくることになるのですが、
担当部署から回されてきた計画書の行き先は辺鄙な田舎町の浄水場でした。
何でもその町では地元の農業高校と共同研究をしていて、
浄化槽の生物濾過にちょっと変わったバクテリアを用いているのだそうです。
そんなものを見ても機械専門の私にはおそらくちゃんとは理解できないでしょうが、
要はパンフレットをもらってきて報告書を書けばいいだけですので、
この忙しい時期、独身の私には頼みやすかったのでしょう。

計画では電車を乗りついでその町の駅までいき、
そこからタクシーで川沿いの浄水場に行って視察をします。
そして町中へタクシーで戻り、一泊して次の日の午前に電車で帰ってくるというだけですが、
上で書いたような事情があり十分な旅費をいただいています。
浄水場では事前に上から話を通してもらっていたこともあり歓迎していただきました。
また研究している内容も素人の私からみても興味深いものでした。
そこでタクシーを呼んでいただき町へと戻ります。
ホテルなどない町でしたので昔からの商人宿のようなところを予約してあります。
タクシーが町中に入り2・3回交差点を曲がると町の風景に見覚えがあります。
この道はあの夢でいつも見ている町そのものです。
タクシーの窓から下の部分だけ見える火の見櫓もまったく同じです。

私はタクシーを停めてもらい領収書を受け取りました。
子どもの頃から夢で見ていた謎がとけるかもしれないと思ったからです。
道を歩き始めて、風景は最後にこの夢を見た2年前の記憶とほとんど変わりありません。
ただ夢と違っているのは道行く人がちらほらといて車通りがあることです。
雪解けの道を歩いていくと、黒いフードをかぶったお婆さんとすれ違いました。
お婆さんは私の姿をちらっと見るとぎょっとしたように立ち止まり、
こちらの顔を穴のあくほど見つめましたが、
その歳でよくもという勢いでフードを両手で引っ張り顔を隠して走り去っていきました。

それだけではありません。
次にはちょうど家の門を出てくる私と同年配の男の人と鉢合わせたのですが、
その人はこちらの顔を見るなり、
泣き出すような情けないような表情になりすぐに家に引っ込んでしまったのです。
その後数人の人に出会いましたが、どの人も私を見ると、
この世の終わりが来たような顔つきでその場を去ってしまうのです。
何なんだと思いながら歩いているうち、道の行き止まりになっているお寺に近づいてきました。

私はわけがわからないながらも参詣だけでもしていこうとお寺の門をくぐりました。
本堂の前で作務衣の上にジャンバーを着た70代くらいのお坊さんが掃き掃除をしています。
そして私の気配に気づくとつかつかと歩み寄ってきて、
しげしげと確認するように私の顔を見つめると、
「あんた、何でこんなとこに来た。帰りなさい」
と強い口調でまくしたててきます。
私が「出張ですが・・・私のことをご存じなんですか?」と問い返すと、
「この町で、あんたのことを知らない人間はおらんだろ。
まさか実際に来るとは思わなかった。・・・どうだ来てみた感想は」
「そうですね、失礼ですがあまり活気がある感じはしません。
それに、町の人はよそ者が嫌いなのでしょうか、
私の姿を見ると逃げていってしまうんですよ」私が冗談めかしてそういうと、

老僧は「活気がない・・・そうだろう。この町には人の魂をとっていく幽霊が出るんだ。
10何人もここで葬式をあげた」
と、にこりともせず応じます。
私が「幽霊、まさか。何かの冗談なんですか・・・どんな幽霊です?」
とさらにおどけた口調でいうと、苦々しそうに「あんたの幽霊だよ」
そう言い残して、後ろも見ず足早に寺務所の中へと歩み去っていきました。

*これも前に書いたものです。ちょっと長すぎるし、やはり今いちの感が強い。
あとこの話は有名な元ネタがあります。


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