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イレズミの話

2018.09.18 (Tue)
今回はこういうお題でいきます。ニュースで、格闘家であった
山本 KID 徳郁氏が亡くなられたという話が出て、情報が錯綜していたんですが、
どうやら胃癌で、2年ほど闘病を続けておられたようです。
ネットでは「イレズミのせいだ」みたいなレスが多かったですが、
まあ、さすがにそれは違うだろうと思います。ご冥福をお祈りします。

何で「イレズミ」と書いたかというと、使われる字がたくさんあるからです。
文身、紋身、刺青、彫物、入墨、紋々・・・当て字が多いですが、
これみんな「イレズミ」と読むんですよね。
ただ、どんな場合にどの字を使うという、厳密な区別があるわけではないようです。

土偶と埴輪の文身 クリックで拡大できます
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さて、イレズミは日本には古代からありました。
卑弥呼や邪馬台国のことが書いてある『三国志』の「魏志倭人伝」には、
男子無大小 皆黥面文身(中略)文身亦以厭 大魚水禽(中略)
 諸國文身各異 或左或右 或大或小 尊卑有差」と出てきます。

「男子はみな顔と体にイレズミをしている。イレズミによって(水に潜ったときに)
危険な魚の害を避けることができる。倭の各国のイレズミはそれぞれ異なっており、
大きかったり小さかったり、右にあったり左にあったりするのは、
身分の尊卑の差を表している」だいたいこんな意味になるでしょうか。

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顔にしているイレズミを「黥面 げいめん」。
体にあるものを「文身 もんしん」と考えればいいかもしれません。
このあたりの記述からは、倭国の風俗が南方よりであること。
また、身分の差の大きい階層社会であったことが読みとれそうです。

邪馬台国は3世紀の話ですが、それ以前の弥生時代、縄文時代の土偶にも、
イレズミをしているとみられるものは多数あります。あの、宇宙人説もある
青森県出土の「遮光器土偶」も、全身にイレズミをしている姿だという
説があるんです。自分もまあ、宇宙人説よりは信憑性があると考えています。

さて、イレズミは古墳時代の埴輪にも多く見られ、あたり前の風習だったようですが、
だんだんに少なくなっていき、6世紀頃には一般的な貴族はイレズミをしなくなって
いたと思われます。顔にイレズミをした聖徳太子とか天智天皇とか、
さすがに、想像するのが難しいですよね。

で、この頃から、イレズミは刑罰に用いられるようになりました。
『日本書紀』の第17代履中天皇紀には、反乱に加担した阿曇野連浜子という人物に、
罰として黥面させた、という記述が出てきます。
履中天皇は、もし実在していたとすれば5世紀頃の人物と考えられます。

この刑罰としてのイレズミはこの後も長く続き、江戸時代には、
江戸、大阪では罪人の腕に、2本、3本と輪になる形でイレズミを入れ、
前科がわかるようにしていました。このイレズミがある者がさらに罪を犯した場合、
刑が重くなるわけですね。イレズミの形は地方によって違い、
額に入れるところもあったようです。

刑罰としての入墨
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広島では、初犯の場合は額に「一」、2回目は「ナ」、3回目は「大」
4回目は「犬」とイレズミの画数が増えていき、5回目は死罪となりました。
さすがに前科5犯では救いようがないと見なされたわけです。こういう刑罰としての
イレズミは墨刑と言いましたので、「入墨」の字を使えばいいかもしれません。

さて、刑罰としての入墨は不名誉なものですが、江戸の職人や飛脚、
火消し、鳶職などが彫るイレズミはこれとはまったく別の、粋でいなせなものと
考えられていました。これは町人文化であり、武士でイレズミをしている人は
多くはありませんでしたが、「武家彫り」というのもあったようです。

飛脚の見事な彫物
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時代劇の「遠山の金さん」遠山景元は桜吹雪のイレズミをしていたという
話がありますよね。この真偽はわかりませんが、遠山が若い頃に
町人の侠客と交わっていたこと、町奉行になってから着物の袖を気にし、
肌を見せるのを嫌がっていたのは事実のようで、
あってもおかしくないかもしれません。

このような江戸文化としてのイレズミは「彫物」と呼ぶのがいいでしょう。
絵の図柄は、日本の神話や軍記、『水滸伝』などの中国物、
「不動明王」など仏教関係のもの、竜や虎、唐獅子や鯉などの生き物と
多岐にわたって採用され、様式化していきます。

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ここまでをまとめて、古代のイレズミは「文身」、
刑罰としてのイレズミは「入墨」、粋な文化としてのイレズミは「彫物」と
自分なりに分類してみました。また、イレズミ全般をまとめて「刺青」。
最近の洋彫りのものは「タトゥー」とすればわかりやすいですね。

さてさて、刺青が出てくる怖い話はいろいろありますが、
谷崎純一郎の書いた『刺青』が最も有名でしょうか。元浮世絵職人の主人公は、
理想の女の背中に精魂込めた刺青を彫りたいと日頃念願していたが、
ついにそれにふさわし女を見つけ、眠り薬で眠らせ、

背中にすさまじい女郎蜘蛛の刺青を彫る。すると、眠りから覚めた女は、
怖ろしい魔性のものに变化(へんげ)していた・・・というお話です。
山本KID氏も、刺青を重ねるたびに新しい自分を発見していたのかもしれませんね。
では、今回はこのへんで。

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