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中国の人工月計画

2018.10.19 (Fri)
今月16日付の「人民日報」によると、2020年に「人工の月」を打ち上げる
予定なのは中国南西部の成都市だ。この人工衛星は「月を補完する目的」
で設計されており、太陽の光を反射して直径10〜80キロメートルの範囲を
誤差数十メートル程度で照らすことができるという。その明るさは本物の月の
およそ8倍とされ、夜の町を夕暮れ時くらいの明るさに照らすことができるという。

この壮大な計画は、今月成都市で行われた展覧会で発表された。計画によれば、
人工の月はおよそ50平方キロメートルを照らすことができ、街灯も必要なくなって
エネルギー消費の節約にもなるという。試験はすでに数年前から始まっており、
技術的にも成熟段階にあるとのことだ。
(tocana)

cddcdc (1)

今回は科学ニュースから、この話題でいきたいと思います。
ただ、自分は理系ではないですので、すごい間違ったことを言うかもしれません。
このニュース、記事はたったこれだけです。その人工衛星がどの程度の大きさで、
どのくらいの高さになるのかも書かれていません。

キーワードを拾って中国語検索してみましたら、中国の国営メディアの
記事が見つかるので、フェイクというわけではないようです。そこで、
まったく見当はずれの可能性もありますが、いったいどういうものになるのか
推理してみたいと思います。まず考えたのは、2年後の2020年打ち上げ
予定ということで、それほど大掛かりなものではないんだろうということです。

じつは、最初にこのニュースを見たときには、中国の話ですので、
でかい気球を打ち上げるんじゃないかと思いました。
でも、あらためて考えると、いろんな観点から気球では無理なことがわかります。
まず、記事に「人工衛星」と書いてありますし(笑)、
気球を高高度に上げると、上空の気象によってかなり不安定になります。

それと、気球が到達できる高度では「夜」を抜け出すことができません。
ですから、太陽の光を反射して光ることができないわけです。また、
もし電力などで気球を光らせるとすれば、莫大なエネルギーが必要になります。
ということで、これは無理ですね。

じゃあ、夜を抜け出すにはどうすればいいんでしょうか。
なぜ夜があるかはおわかりでしょう。地球が自転しているため、
太陽のある方向と反対側に、自分の住んでいる地域がきたときが夜ですよね。
下の図は、夏至のときの地球における昼夜を表したものです。

cddcdc (1)

ここで、南極や北極は白夜になります。ということは、地球の半径の高さにまで
上がれば、十分な太陽の光を受けることができるようにならないでしょうか?
地球の半径は、約6000km、これは人工衛星の高度としては中軌道。
けっして高い位置というわけではありません。
「あ!」 ・・・ここまで考えて、あることに思いあたりました。

こんなのが地球を周回してたら、軌道の下にある地域の人は迷惑ですよね。
おそらくこの人工衛星は、成都市の上空にとどまる静止衛星になると思われます。
静止衛星になるには、軌道傾斜角がゼロにならなくてはならず、その高度は
決まっていて、約36000kmです。最初に気球を思い浮かべたのは、
思考方法としては悪くなかったようです。

人工衛星の静止軌道
cddcdc (2)

この高さなら、成都市が夜であっても、太陽光を受けるのに問題はありません。
次に、どうやって太陽光を反射して地上に届けるのか。
巨大な鏡を打ち上げるというのは現実的に無理と考えられるので、
おそらく、人工衛星が、金属片を組み込んだ自動制御できる網のようなものを、
宇宙空間で広げるということになるんじゃないでしょうか。    


        
あと、記事では、「その明るさは本物の月のおよそ8倍」と出てきますが、
べつに、見た目の大きさが月の8倍というわけではないでしょう。
月は大きく、人工衛星は小さいですが、衛星の高度に比べて、
月ははるかに遠くにあるため、その光は淡いんですね。

ですから、人工の月は大きくなくても、そのぶん反射する太陽光が
強ければいいわけです。こうして考えてみると、
最初は夢物語のように感じましたが、けっこう現実的かなと思えてきました。
これは実際にできるのかもしれません。続報を待ちたいところです。

さて、ではもし人工の月ができたとして、
どのような利点ならびに欠点があるんでしょうか。
利点の一つ目は、人工の月は成都市の観光資源になるということです。
都市の上空に浮かぶ2つの月。これを目当てに旅行に来る人は増えるでしょうし、
月に関するいろんなイベントを行えば、相乗効果が期待できます。

次に、記事にあるとおり、夜間の照明を減らすことができて、
省エネルギーになるでしょう。もしかしたら、夜が明るいので、
犯罪も減ったりするのかもしれません。あとはそうですね、
何か外での仕事をするとき、夜間でもできるので突貫工事がきくとか。

欠点として最大のものは、夜が明るいと、
生物の持つ概日リズムに影響を与える可能性があることです。
まあ、人間はぶ厚いカーテンを閉めて寝ればいいかもしれませんが、
植物や野生動物、昆虫や魚などの生態系に大きな影響がある気がします。
バクテリアとかでも、昼夜を区別できるものはいますしねえ。

1日の生態リズム クリックで拡大できます
cddcdc (4)

あとは、軍事的なことなんかはどうでしょう。
中国全土は、アメリカの軍事偵察衛星によって監視されているはずですので、
夜が明るいと不利になるんじゃないかとか。
でもまあ、きっとそこまでは考えてはいないんでしょうね。

さてさて、みなさんは成都といえば何を連想するでしょうか。
四川省にあり、日本の九州よりもはるかに南方に位置する都市です。
自分は、唐の時代の詩人、杜甫が書いた「春望」の五言律詩を思い浮かべます。
国語の教科書に採用されるなど、有名なので、みなさんもご存知でしょう。

成都の杜甫草堂
cddcdc (3)

「国破山河在 国やぶれて山河あり 城春草木深 城 春にして草木深し・・・」
この詩は、戦乱によって荒れ果てた首都長安から成都に逃れてきた杜甫が、
郊外に草庵をたてて住んだときのもので、南国の美しい自然の中で、
異郷に暮らす悲しみが詠われています。その生態系が、人工物によって
破壊されることがなければいいんですが・・・では、今回はこのへんで。




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コメント
いつも楽しく読ませてもらってます
たかす | 2018.10.21 19:09 | 編集
コメントありがとうございます
今後もよろしくお願いします
bigbossman | 2018.10.21 21:47 | 編集
 中学生の時に放送してた『ウルトラマンマックス』で、宇宙空間に巨大な鏡を設置して地球から夜を奪った悪玉宇宙人がいましたね。
 あの頃はまだ「この話は遠い未来のお話なのです」という感覚だったのに……。
野崎昭彦 | 2018.11.12 23:22 | 編集
コメントありがとうございます
現在の中国では、金があるところにはありあまるほどあります
例えば、成都の市長なんかでもあまり不正蓄財をすると
党から粛清されたりしかねないので
こういうのに金を使おうとしてるんだと思います
bigbossman | 2018.11.13 08:10 | 編集
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