FC2ブログ

「世界5分前仮説」と創造論

2018.10.24 (Wed)
vsda (3)

今回はこういうお題でいきますが、これ、あんまり面白い内容になりそうも
ないので、スルー推奨かもしれません。まず、「創造論」とは何か?
当ブログでは何度もとり上げていますが。簡単に言うと「キリスト教やイスラム教
にいう全知全能の創造主が、この世界のすべてをつくった」という説のことです。

ちなみに、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の創造主は、基本的に同じ神、
と考えられています。よく「キリスト教世界とイスラム教世界の対立」
なんて言いますが、これじつは、同じ神をいただいた上での、
神学的な解釈上の対立と見ることができるんですね。

アララット山系の「ノアの方舟」地形
vsda (6)

さて、何から話しましょうか。みなさんは思考実験の一つとして、
「世界5分前仮説」というのをご存知でしょうか?
「今みなさんが生きている世界は、つい5分前に始まった」とするものです。
こう聞けば「えー、そんな馬鹿な、ありえない」と思いますよね。

「だって、自分には5分よりも以前の記憶がある。2時間前、昼飯にそば定食を食べた」
こんな感じで反論されると思います。しかし、世界5分前仮説では、
みなさんはそれらの記憶を持った状態で、5分前にいきなり発生した
ということになります。すると、ここでまた反論したくなりますよね。

「だって、うちには自分が小さい頃の写真がある。子どもの頃に背比べをした 
柱の傷もある」とか。でも、世界5分前仮説では、それらのものも5分前に一気に
できあがったことになるんです。ここまで聞くと、たいていの人は、
「えー、バカバカしい。そんな議論は時間のムダだ」と言うと思います。

なぜなら、世界5分前仮説には、否定する材料もないかわり、
肯定する材料もないからです。こういうのを「反証可能性がない」と言います。
反証可能性がないものは科学的な議論にはなりえない、いわば反則なんですね。
では、この仮説、誰が、何のために言い出したのか、
知ってる方はおられるでしょうか。

バートランド・ラッセル
vsda (2)

まず、初めに提唱したのは、20世紀のイギリス人哲学者で、
ノーベル文学賞を受賞したバートランド・ラッセルです。
彼は、懐疑論的な立場からこの仮説を持ち出したわけですが、
もともとはキリスト教の創造論から影響を受けたものだ、と聞くと驚かれる方も
いるんじゃないかと思います。ラッセルは徹底した無神論者でした。

さて、前に「進化論と心霊主義の時代」という記事で、
「ダーウインが進化論を発表したことで、キリスト教的な宇宙観が揺らいだ」
と書きましたが、まあ、それ以前から、キリスト教的宇宙観に
疑問を持っていたインテリ層は多かったと思います。それが、
ダーウイン以降は、おおっぴらに意見を主張できるようになったんですね。

関連記事 『進化論と心霊主義の時代』

聖書の記述を解釈すると、この世界は6000年くらい前にできた、
とみることができますが、地質学から、地球はもっと古いものである
という意見が出されました。現在では、地球の年齢は約46億年と考えられています。
ちなみに、宇宙の年齢は138億年くらいのようです。



また、古生物学からは恐竜などの化石、人類学からはネアンデルタール人等の
化石が提示され、これらに対して、キリスト教側は防戦一方になったんですが、
このときにいろいろな珍説が出されたんですね。一つ目が、
「若い地球論」これは、地球ができてからせいぜい1万年もたってないという、
地質年代や科学的年代測定を全否定するものです。

もう一つは、ある程度まで地質学的年代観を認める「古い地球論」。
三つ目は「断絶論」。『旧約聖書』の創世記1章の1節と2節の間に、
じつは、書かれていない数十億年?の長い断絶があるとする議論です。
この他にも、聖書にある1日は5億年くらいのことだ、なんて説もあるんですが、
上記の世界5分前仮説のもとになったのは、「オムファロス仮説」と呼ばれるものです。

1857年、当時はまだ聖書派の勢いも強く、
「アダムは神が創り、その肋骨からイヴを創った。では、人間の胎内から
産まれたのではないアダムとイヴには、へそがあるのか、ないのか?」
なんてことが、知識人の間では真面目に議論されていたんですね。
今から思えば信じられませんが、それだけキリスト教の影響は強かったんです。

ここで、イギリスの自然学者フィリップ・ヘンリー・ゴスという人物が、
「アダムとイヴは最初からへそがあるように神が創った。さらに、地層や化石なども、
わざと古く見えるように神が創った」こう主張したんですね。
ゴスの主張は徹底していて、「アダムとイヴの腸の中には創造された初めから
排泄物があっただろうが、それも神がすべて創ったのだ」こんな内容なんです。

アメリカ「創造博物館」のアダムとイブ
vsda (5)

これはゴスなりに、原因があるから結果があるという因果論と、
聖書の記述をすり合わせようとしたもので、「アダムの血管に血が流れているなら、
それは摂取した食物からできたものだ。食物を摂取したなら、
腸にもウンコが詰まっているのも自然なこと」こんな感じの理論だったんですね。
ですが、残念ながらこの説、聖書派にも自然科学派にも相手にされませんでした。

それはそうですよね。神がわざわざ、なんでそんなムダことをしなければならないのか。
ただまあ、この論を聞いて面白がった知識人はかなりいたようで、
20世紀になって、ラッセルの世界5分前仮説につながっていくわけです。
ただもちろん、ラッセルの意図は、「疑うつもりなら、何でも、
いくらでも疑うことができるんだよ」みたいな主張なんです。

さてさて、ローマ・カトリックは進化論を大筋で認め、神の世界創造は、
宇宙論におけるビッグバンのことだ、みたいに柔軟に変化してきていますが、
アメリカには、今も頑なに創造論を信じる原理主義的な人が、
かなりの数いるんですよね。では、今回はこのへんで。

vsda (1)



関連記事
スポンサーサイト

トラックバックURL
http://scoby.blog.fc2.com/tb.php/1638-f603588c
トラックバック
コメント
 世界五分前仮説は個人的に大好きな思考実験です。こうして成立過程を見ていると、イギリスのお国柄を感じますね。最初に聞いたときは、こんなことを真面目に考えるのは狂人・暇人・哲人のいずれかだと思ったものですがw オムファロス仮説がインテリに受けたというのもむべなるかな。
| 2018.11.13 16:39 | 編集
コメントありがとうございます
「神は実在する」という結論(というか信念)が先にあると
「オムファロス仮説」みたいな突飛な理論が出てくるわけで
ラッセルは「まず疑いなさい」みたいなことを言ってるんでしょうね
bigbossman | 2018.11.13 18:24 | 編集
管理者にだけ表示を許可する