FC2ブログ

ゴミ屋敷の清掃の話

2018.10.27 (Sat)
特殊清掃の会社に勤めてたんですよ。体悪くしてやめちゃいましたけどね。
ええ、仕事はきつかったです。肉体的にもだけど、精神的にもね。
ああでも、特殊清掃については、誤解されてる部分もあるんです。
俺らは、基本的には遺体を扱ったりはしないですから。
例えば、ある家で孤独死があったとします。死体はグズグズに腐った状態で、
1ヶ月後に発見された。こういう場合、死体を運び出すのは警察です。
検屍、場合によっては司法解剖しなくてはなりませんから。
で、その後に死体を扱うのは葬儀社なんですよ。
だからね、俺らが直接死体を目にするってことはまずありません。
ま、肉ごと髪の毛のこびりついた畳や、人の形をした体液が死体じゃないって
言うならね。そういう仕事は、特殊なマスクしてやるんですが、気が滅入ります。

あとね、俺はできなかったけど、班長はお経知ってましたね。
まず清掃に入る前、それから片づけが終った後、作業員がみなで集まって
手を合わせてました。そんときに班長が短くお経を唱える。
それから、ゴミ屋敷の清掃もあります。これ、テレビに出てくるのは一軒家が多いけど、
じつはアパートやマンションの部屋のほうが何倍もあるんです。
まあでも、賃貸の部屋の場合は楽です。せいぜいが1部屋か2部屋だから。
けどね、田舎の一軒家だと部屋数も多いし、天井につくまでゴミが積み上がってる。
でね、その下のほうなんかはドロドロに溶けてるんですよ。
そこに虫やネズミがすみついてる。だから、虫が嫌いな人間には絶対に務まらない。
俺の同僚で、ネズミに手を噛まれたやつがいまして、もちろん分厚い手袋をして
やるんだけど、それを通して歯が刺さっちゃった。

そいつはバイ菌に感染して、あぶなく脇の下から切断ってことになりかけたんです。
あと、意外なところでは感電。ほら、電源コードの上にゴミが積み上がってるわけでしょ。
そのゴミの床部分が液状化してる。だから漏電してる場合がありまして。
そっから火事になったりもします。一人暮らしの住人が、火災で死亡って場合、
けっこうな割合でゴミ屋敷だったりするんです。いったん火が出ればゴミは燃えやすいし、
住人は気がついたとしても、ゴミに通路を塞がれてて、簡単には逃げ出せないですよね。
ああ、すみません。仕事内容の話ばっかりして。で、あるときにやった
ゴミ屋敷の清掃の話なんです。特殊なケースで、中規模の市の一軒家がゴミ屋敷と化してて、
住んでたのは高齢者の男性一人、その人はほぼ毎日、近くのコンビニで
食料とか買ってたんですが、数日姿を見せない。でね、近所の人が相談して警察に
通報したんです。これは中で死んでるかもって思ったんですね。

警察が立ち入り捜査して、中は本格的なゴミ屋敷。ええ、6つある部屋が全部、
あと風呂もトイレもゴミでいっぱいでね。でも、警察は住人を見つけられなかったんです。
でね、ゴミとはいえ、所有権のある立派な財産なんですよ。
勝手に捨てることはできない。だから、その老人の家族に連絡しました。
遠く離れたところに娘さんが一人いて、その人の許可をとって、
市役所に行政代執行してもらうことになった。で、俺らの会社が委託を受けたんです。
ゴミ屋敷の清掃の場合、まず最初に見積もりをするんですが、
その結果、ゴミの量は70L入りのゴミ袋で400袋、4トントラック3台分てことでした。
これを清掃するには、4人がかりで3日くらいかかるんですが、
この場合、清掃はいらない。とにかくゴミをまず搬出することになります。
それで、班長と俺ら作業員の計4人でその屋敷に向かいました。

ある程度事前に話は聞いてましたので、気味が悪かったですよ。
ゴミの中からその行方不明のじいさんの死体が出てくるかもしれないわけだし。
でね、班長の指示にしたがって、まず通路を確保しました。
ゴミを運び出すための動線をつくるんです。あと、一人は道路トラック内に待機。
で、1階の奥の部屋から片づけ始めましたが、そこで奇妙なことに気がついたんです。
ゴミがきれいなんですよ。ゴミがきれいというのも変ですが、
ほとんどのゴミがゴミ袋の中に入ってる。ふつうはもっと散らばってるもんなんです。
それと、臭いが少なかったんです。つまり、生ゴミみたいなものが少ない。
あとね、ゴミ袋は大きいやつでしたが、その市で使われてる回収用のとは違うもので、
白くて半透明で何も書かれていない。で、その中に妙に軽いやつがあったんです。
ふわっと持ち上がってしまうような。その袋を透かしてみると、

白い短冊みたいな紙がたくさん入ってまして。詳しくは見ませんでしたけど、
どれも黒い字が書かれてるようでした。でね、そんなんだから、
計画よりも早く片づいていったんです。1日目で階段周辺をのぞいて1階が終わりました。
畳や床板はそんなに痛んでなかったし、生活用品もほとんどなかったです。
それと、一番奥の和室が6畳間だったんですが、そこにね、でかい神棚があったんです。
部屋の半分くらいを占めるような。ええ、仏壇じゃなく神棚で、扉は閉まってました。
で、2日目、9時前にその家に着いて、まず階段のゴミを片づけだしました。
2階に上がれるようにね。俺が階段の上のほうで大きなゴミ袋を抱えたとき、
ばっと、顔に何かが飛び移ってきまして。目の端に大きなムカデの尾が見えました。
俺は、「うわあ!」って叫んで、バランスを崩したんです。悪いことに、
その階段、手すりも何もなくて、俺、横の空間に落っこっちゃってね。

ただね、階段まわりのゴミはまだ片づいてなかったんで、頭からゴミ袋の山に落ちて、
ずぶずぶって下まで潜っていって・・・ゴンって頭を固いものにぶつけました。
それ、床だと思ったんですが、そうじゃなく、天井だったんです。
あたりは真っ暗で、ただゴミ袋の感触はなし。動くとまた頭をぶつけそうだったんで、
しばらくじっとしてたら、だんだんに目が慣れてきて・・・
顔にクモの巣の感触がありました。で、ずっと向こうに白い空間が見えたんで、
そっちに向かってそろそろ這ていったんです。頭を出してみたら、
草が生えてましてね。上を見上げると古い白木の建物・・・
俺、高床の神社の床下にいたんですよ。あたりは薄暗く、夕方だと思いました。
完全に這い出て立ち上がると、かなり大きな神社だったんですが、
その形がね、ゴミを片づけてた家にあった神棚に似てたんです。

まあ、神社のつくりはどこも同じようなもんでしょうけどもね。
何が何だかわけわからず、呆然と立ちつくしてました。そしたら、ややあって、
神社の横手から、白い着物を着たばあさんが出てきたんです。
白髪を振り乱した、ホラー映画にでも出てきそうなばあさん。それが手に、
中身が半分くらい入った白いゴミ袋を持ってました。で、俺を見つけると、
口から泡を飛ばして、俺に向かって走ってきたんです。
すごい勢いで、俺は怖くなって横によけたんですが、ばあさんに着てるものを
つかまれまして。そのときにね、自分が会社の作業着じゃなく、
ばあさんと同じような白い着物を着てることに気がついたんです。
ばあさんはつかんだ着物を、ぶらさがるようにして思いっきり引っぱって、
着物は大きく破けたんです。すると、ばあさんはそれを丸めて、

持ってたゴミ袋に入れて・・・そのときに、ザワザワ音がするのに気がついて、
そっち見ると、かなり離れた神社の鳥居の下に、白いものがたくさん集まって
動いてるのがわかりました。たぶん・・・ばあさんと同じような人だと思ったんです。
ばあさんは、なおも俺にしがみついてきて、着物を引っ掻いて破ろうとして。
俺はばあさんを突き飛ばして逃げました。さっき出てきた、
神社の高床の下にもぐり込んだんですよ。どうしてそっちに逃げたか
わからないけど、何となくそうしたほうがいいような気がしてね。
でね、這ったまま砂らしい上を進んでいくと、またどーんと落ちたんです。
けっこう長い時間、落ちてたような気がしますけど。ずぼっと出た先で、
俺は身動きがとれませんでした。体がゴミ袋に埋まってたんです。
ええ、あの家に戻ったと思うでしょ。ところが違ってたんです。

俺は積み上がったゴミ袋の中をつま先立ちで移動して、窓があるところまで来ました。
でね、外を見て愕然としたんです。かなりの高さ、ビルの10階近いような場所だったんです。
幸いなことに、業務用の会社のPHSを持ってたので、なんとかゴミの上に這い上がって、
それで警察に連絡しました。ええ、「助けてくれ」って。15分ほどで警察が来ましたが、
そっから出るのに1時間はかかりました。場所は、驚いたことに、じいさんの家から
10km以上離れたマンションの一部屋だったんです。それで、現場のほうでは、
ゴミの中に落ちた俺の姿が見えなくなったって、騒ぎになってたんですね。
で、俺はその仕事から外されまして、後で聞いたら、2階でもじいさんは
見つからなかったそうです。今でも行方不明のままなんじゃないかな。あとね、
俺が行ったあの神社のある場所って何なんでしょう? ゴミを溜めた人間が堕ちる
地獄みたいなものなのか・・・ここの方なら何かわかりますでしょうかね?
                                 





関連記事
スポンサーサイト

トラックバックURL
http://scoby.blog.fc2.com/tb.php/1640-8a64517c
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する