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血塊の家の話

2018.10.29 (Mon)
今晩は、じゃあ、話していきます。去年の夏休みですね。
ああ、俺、ある大学の2年生なんです。お盆過ぎたあたりでしたね。
長い休みをちょっともてあましてたところ、清田って友だちから、心霊スポット探索に
行かないかって話があったんです。「金かからんのなら行くよ」
ふたつ返事で承知しました。話を聞いてみると、なんでも心霊系の雑誌の先月号に、
関東某県にある心霊スポットが紹介されてて、そこがすごい建物の雰囲気よかったから
ってことでした。心霊スポットの雰囲気がいいってのも変ですけど、
俺ら、専攻が建築学なんですよ。だから、ただの面白半分じゃなく、
実地見学もかねてってことです・・・まあ、こじつけなんですけどね。
その建物は、バブル期に建てられ、しばらく使われた後に放置されてる別荘だったんです。
これ、後になって調べたんだけど、そういう場所ってけっこうあるんです。

別荘地っていうと、軽井沢が有名ですけど、あの周辺に、
新しく開発されて、その後放置された別荘地ってあちこちあるんです。
もう別荘で過ごすお金の余裕がなくなって、かといって売ろうとしても売れない。
そのうちに管理費用も払わなくなって、電気や水道がきれた状態で放置されてる家。
それでも固定資産税はかかるから、まさに負の遺産ってわけです。
で、隣近所の別荘もみんなそんな感じで、放置された初期の頃に泥棒が入って、
中の金目のものはみんな荒らされてる。まあ、そういう場所です。
でね、中には有名建築家に依頼して建てたのもあって、
雑誌に掲載されてたのも、そんな一つでした。
「どうやっていくんだよ?」 「1泊2日。ワンボックスのレンタカーを
 借りていく。運転は俺がするよ。あと、岸島も来ることになってる」

「その別荘に泊まるのか?」 「いや、たぶん中はホコリだらけだと思うから、 
 車中泊を考えてる。3人なのにワンボックスを借りるのはそのためだよ」
「ははあ、体、痛くなりそうだな。でも、面白そうだ」
「だろ、その家を建てたのは、〇〇競技場を設計した建築家がまだ無名だった
 ころって話だぜ」 「ふーん、たしかに勉強にもなるな。
 俺はのるけど、建物の中に入るのは違法だろ」 「そうだけど、おそらく
 雑誌社のやつらも許可なんかとっちゃいない。それに山の中でまわりの別荘も
 すべて空だ。別に問題ないだろ」 「そうだな」
こんな話になって、8月の27日、午後から車で出かけたんです。
道中は3時間半ほどかかりましたね。もっと早く行けたんでしょうが、山の中に
入ってからナビがきかなくなって。その別荘地を見つけるのに時間がかかって。

でね、その建物、けっこうな高地にあったんです。植物相が変わってましたから。
道もガードレールはありましたが、険しい崖が多かったです。やっと見つけたのは、
白い壁の洋風の建物で、そうですねえ、教会のようにも見えました。
着いたときには夕方の時間帯でしたが、夏なのでまだ明るかったです。でね、
まず建物の周囲を回って写真を撮りました。2階建てで、外から見た感じでは、
部屋数は6から7だと思いましたね。あと、変だなあと思ったのは、
2階の屋根を突き破る形で、妙なものが外に出てたんです。どう説明すればいいのかなあ。
チューリップの茎をハサミで途中で切ったような感じ。
微妙にカーブした赤い色のそれが、3mほども空に伸び上がってたんですよ。
何なのかはまったくわかりませんでしたね。それで、車を置いた草地に戻ってくると、
別の大きな外車が隣に停まってて、残ってた清田が人と話してました。

それ見てね、ああ、マズイ、何かトラブルかって思ったんです。相手はやっぱり3人で、
女が一人入ってました。それがね、3人とも俺らと同じくらいの齢に見えたんです。
俺と岸島が近づいていくと、清田が「ああ、この人たちね、別荘の持ち主なんだって」
そう言いました。すると、その中の一人が、「あ、持ち主っていうか、
 親父が持ってる別荘なんです。でもね、使わなくなってからもう15年くらいたちます。
 僕ら、東京の大学生なんですけど、僕が子どもの頃に行った別荘の話をしたら、 
 見たいっていうから、ドライブがてら来てみたんです。道に迷っちゃって、
 すごく時間かかっちゃいましたけど」ああ、俺らと同んなじだと思いました。
「話は聞きましたよ。この建物、有名な建築家が建てたものなんですってね。
 知りませんでした。僕らもね、中をひと回りしたら帰るつもりですから、
 いっしょに中を見てみませんか」こんなふうに言ってくれたんです。

でね、その3人、言葉遣いとか、あと着てるものも高そうで、
俺らとはだいぶグレードの違う大学のやつらだと思いました。
「中の写真撮ってもいいですか」そう聞くと、「ああ、ぜんぜんかまいません」ってことで。
昔はさぞ立派だったろう洋風の庭を通って玄関口まで来ると、
やはり荒らされてて、玄関の扉のガラスが全部落ちてました。
そっから入れそうだったのが、別荘の持ち主だという人が鍵を出して開けたんです。
中はね、かなりひどいホコリで、足跡もいくつかついてました。
けど、スプレーの落書きなんかはなかったです。入ってすぐ、けっこう広い
ホールになってて、ぜいたくに空間が使われてました。
でね、その中央に不思議なものがあったんです。周囲が1m以上、
一抱えはありそうな球根状のものが地面から生えてて、

それが1階の高い天井を突き破ってて。あの、2階の屋根から見えたものの
下の部分なんだろうと思いました。 「これ、何ですか?」
向こうも首をかしげて、「何だろうなあ、植物の一部に見える。こんなの前は
 ありませんでした」そんな感じだったんで、近寄ってさわってみました。
そしたら、ごつごつして見えるのに、意外に柔らかく、暖かかったんです。
ドクン、ドクンという鼓動のようなものまで感じられました。
そしたら後ろにいた清田が、「わからんけど、それ、お前にとってすごく大事なものだと思う」
「え、何で?」 「いや・・・まあ」 「変なやつだな」1階を案内され、またホールに戻って、
2階への階段を上がりました。そのときに俺、何だか頭が痛くなってきたんです。
でね、2階の床からさっきの植物が突き出て、さらに上の天井を破ってました。
色が、1階では緑がちだったのが、赤黒く変わってて、中央部分にこぶがあったんです。

「あれ、あの3人は?」俺らのすぐ先を上ってた3人の姿が見えなくなってました。
すると岸島が唐突に、「あの3人は死んだよ。死んだ人なんだ。それに俺たちも」 
「え!?」 清田が植物のこぶの裏に回り込み、「来てみろよ、これ、お前みたいだぞ」
「何だよ、お前ら、さっきから何言ってるんだ」清田のいる側に出て 指さすほうを見ると、
植物のこぶには無数のしわが寄って、盛り上がった部分に顔が浮き出てました。
それ、俺の顔だったんです。「!?」ズキン、頭の傷みが強まり、岸島が近づいてきて、
「これで切れよ」と刃物を出し、清田が、「お前には助かってほしいんだよ」
そのとき俺は頭の傷みでわけがわらなくなってて、いつの間にか受け取ってた
刃物をやみくもに振り回してたんです。「うう、痛え、痛てえよう」
植物に刃があたったのか、突き出てる俺の頭がぱっくりと裂け、
大量の血がしぶきました。「ああ、痛てええええ」俺が覚えてるのはそこまでです。

こっからは後日談になります。俺は病院で目を覚ましたんです。
開頭手術を受けてから3日後のICUでです。それから、ゆっくりと回復していき、
自力でトイレに行けるようになったのは3週間後でした。
事故にあったんですね。時間帯からすると、俺らがあの別荘を出て帰る途中のこと
だと思います。ワンボックスカーが崖から転落し、
岸島と清田は即死だったようです。俺はかろうじて生きてましたが、
発見者の連絡で救急搬送され、硬膜外血腫ってことで、
緊急の開頭手術になったんですね。かなり生存確率は低かったみたいですが、
なんとか成功して、3ヶ月後に退院しました。幸いというか、後遺症は特にないです。
でね、清田と岸島の葬式はとっくに終わってたんで、墓参りと、自宅に線香を上げさせて
もらいに行きました。運転してたのは清田だし、俺が責められるということはなかったです。

あと、別荘であったあの3人なんですが、いろいろ調べたら、
俺らが事故った場所からやや離れたところで、その2年前に転落事故があって、
3人死んでたんです。顔写真は出てなかったけど、男2人、女1人。
それから、今年の夏休み、一人であの別荘に行きました。
金かかりましたけど、電車とタクシーで。中の間取りは、
俺が夢?で見たのと同じでしたけど、あの建物を突っ切ってた植物のようなのはなく、
屋根にも穴は開いてなかったんです。まあ、こんなところなんですが、
警察から俺の持ち物が戻ってきまして。ほら、俺、あの家の中の写真を撮ったじゃないですか。
そのデジカメ壊れてなくて。でね、画像を見てみましたら、
写ってるのはどれも、赤く暗いぐちゃぐちゃしたもので、人間の体内、
もっと言えば、俺の頭の中なんじゃないかと思いました。今、ここに持ってきてますよ。




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