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P・T・バーナムとオカルト

2018.12.04 (Tue)
今回はこういうお題でいきます。カテゴリはオカルト論です。
昨年、『グレーテスト・ショーマン』というアメリカ映画が公開されましたが、
みなさんの中で、ご覧になった方はおられるでしょうか。この映画、
なかなか評価の難しい内容で、アメリカでの評論家の意見も分かれています。

P・T・バーナム
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さて、映画の主人公になったP・T・バーナムは、19世紀に活躍した
アメリカの興行師です。アメリカの国土はひじょうに広いですよね
しかも、ふだんは娯楽がほとんどない田舎町が数多く点在しています。
かつてアメリカの興行師は、自分の目玉となる展示物をかかえて、
そういう町々を興行して回ることが多かったんです。

そのような見世物の中には、インチキなものがかなり混じっていました。
バーナムが最初に手がけた興行もその類で、1835年、彼は、
年老いた黒人奴隷の女性ジョイス・ヘスを、安価な値段で買い取りました。
これはもちろん、リンカーンによる奴隷解放宣言以前の話です。

で、バーナムはどうしたかというと、「ジョイス・ヘスは今年で160歳になり、
アメリカ初代大統領、ジョージ・ワシントンの乳母をしていた」というふれこみで、
アメリカ全土を興行して回り、たいへんな成功を収めたんですね。
ちなみに、ジョイス・ヘスが亡くなった後、その年齢が調査され、
70歳を超えていないことが判明しています。

こういう形で、何もないところからネタを作って金を産み出すのが当時の興行なんです。
これは日本でも同じでした。日本の見世物の伝統は古く、江戸時代以前からあります。
「大イタチ」という話は有名なので、ご存知の方も多いでしょう。
見世物小屋の宣伝書きに、「○○山中でつかまえた大イタチ」と書かれていて、
木戸銭を払って入ってみると、大きな板があり真ん中にべったりと血がついている。

つまり「大板血」なわけです。小屋の中に入ってそれを見た人は、
最初は「騙された」と憤慨するものの、やがてその洒落っ気に笑いだしてしまう。
もし、どうしても納得しない客がいれば「お代は見てのお帰り」。
木戸銭を取らなければいいわけで、元手はタダみたいなものなので、
それでも商売が成り立つんですね。

「カーディフの巨人」
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「カーディフの巨人」という、この手の有名な話があります。
ジョージ・ハルという人物が、カーディフという町の郊外に身長3mの石膏像を埋め、
自分で掘り出して、井戸掘削のときに見つかった「巨人の化石」として展示を始めました。
誰が見ても、ひと目で人工物とわかるずさんなものでしたが、いったん興行を始めると、
全米各地から、毎日数百人の見物人が訪れたといわれます。

これに目をつけたのがバーナムです。バーナムはハルに、巨人の貸出を持ちかけ、
断られると、自分で、石、粘土、乾燥卵などを混ぜて第二の巨人を制作、
それを用いて全米で興行を始めました。当然、この巨人について、
アメリカの考古学者などから、本物ではないというクレームがつきましたが、
バーナムは、「世間は騙されたがっている」という言葉を吐いて平然としていました。

この話は、オカルトのある一面を表していると言えます。「ミネソタ・アイスマン」
というのを、オカルトにくわしい方なら知っておられるかもしれません。
1967年、ベーリング海峡の氷塊の中から氷漬けのまま発見されたという、
謎の類人猿型未確認生物がミネソタ・アイスマン(下図)。

「ミネソタ・アイスマン」
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この正体は、じつはハリウッドで制作された着ぐるみなんですが、全米各地で
巡回興行されて大評判になりました。もちろん疑いを持つ専門家も多かったんですが、
バーナムの言葉どおりの結果になったんですね。この手のオカルトは、
手を変え品を変え、現在でもいろんなものが出回っています。

「巨人ネフィリム」の生きた化石(笑)


さて、バーナムにはもう一つの名言が知られていて、「どんな人にでも当てはまる
要点というものがある」というものです。アメリカの心理学者ポール・ミールが、
このことを証明しようとして実験を行い、結果を「バーナム効果 Barnum effect」
と名づけました。これは現在でも、心理学用語の一つになっています。

どんな実験が行われたのか。フォアという心理学者が行ったものを見てみましょう。
フォアは、学生たちを被験者にして、簡単な心理テストを行い、その結果として、
「あなたは他人から好かれたい、賞賛してほしいと思っており、
 それにかかわらず自己を批判する傾向にあります.」

「あなたは弱みを持っているときでも、それを普段は克服することができます」
「あなたは使われず生かしきれていない才能を、かなり持っています」
「あなたは人前では自制的ですが、内心ではくよくよしたり不安になる傾向があります」
などの分析結果を示しました。ですがこれ、心理テストとは何の関係もない、
雑誌などに載っている占いの内容を、適当に組み合わせただけのものです。

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ところが、学生たちにこの結果が自分に当てはまっているかどうかを
5段階評価させると、学生たちの平均は4.6。つまり、ほとんどの学生が、
「このテスト結果はよく当たっている」と考えたことになります。
バーナム効果はくり返し追試され、その正当性が認められています。

その後の実験で、バーナム効果は、
・被験者がその分析は自分にだけに適合すると信じている
・被験者が評価者の権威を信じている ・分析が前向きな内容ばかりである
という3つの条件を満たすときに、最も強く発揮されることがわかっていて、
じつは、これを利用している占い師は多いんですよ。

さてさて、ここまで見てきたように、興行師バーナムは心理学者ではありませんでしたが、
人間がどういうものか、たいへんよく理解していました。それがあったから、
数々の興行を成功させ、現在のオカルトにつながる源流を作っていったわけですね。
では、今回はこのへんで。

関連記事 『リーディングの話2』

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