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猫道の話

2019.01.11 (Fri)
今晩は。じゃあ話を始めさせてもらいます。僕、小学校の教員をしてるんです。
はい、音楽をのぞいたすべての教科を教えてますけど、
大学で専攻したのは社会で、歴史が専門なんです。
ですから、趣味は地方史の研究です。ジジ臭いって言われることもありますけど、
これがねえ、けっこう面白いんです。例えば、地元にあるお稲荷さんは
いつごろできたかとか、この地域にいた戦国武将は誰で、
どんな合戦をしたのかとか、調べ始めると興味はつきないです。
研究の進め方は、まず図書館に行くことですね。
そこで、江戸時代以前の古文書を見せてもらいます。貸出不可のものです。
もちろん、変体仮名で書いてあるものが多いですが、
それは大学で勉強してだいたいは読めます。

あとは、先人が書いた地方史の本を読むことですね。これも、図書館専門です。
いや、そういう本って、目の玉が飛び出るほど高価いし、
僕の給料で買えるとしても、東京の古書店から取り寄せになってしまいます。
ですから、週末はほとんど図書館通いですね。
それならほとんどお金はかからないし、人からもいい趣味って言われます。
それで、3週間前の日曜日のことです。その日も市立図書館に行って、
郷土史本がまとまってるコーナーから、1冊を選んで閲覧室で読んでたんです。
あ、本の題名は『烏円奇譚集』という変わったもので、そのとき初めて
読み出したんです。いや、古文書じゃなく大正時代に書かれたものでしたね。
しばらく読み進めていったんですが、どうもよく意味がつかめませんでした。
おかしいなあと思って、後書きを見ようとしたとき、

はらっと、机の下に紙が一枚落ちたんです。しおりかなと思って拾い上げたら、
新しい和紙に、変体仮名が筆字で書いてたので読んでみました。
これ、昔の文章だったんで、現代語に直して話しますけど、
「一、○○神社の鳥居を一度だけ逆側から通り抜けろ 
二、△△家の板塀に沿って西に向かえ 三、☓☓公園の枡形遊具の一番下をくぐれ
そうすれば大いなる幸運が訪れるであろう」・・・こんな内容だったんです。
変だと思いますよね。変体仮名で古文で書いてるけど、☓☓公園はできてから、
まだ10年くらいしかたってないんです。で、ちょっとわくわくしました。
1から3の場所は、道はやや遠回りになりますけど、アパートに帰る途中にあるんです。
あ、はい、図書館へは自転車で来てたんですよ。
だから、書いてるとおりに行ってみようと思ったんです。

いやまあ、それで幸運が舞い込むとかは信じてませんでしたけど。
その本は意味がわからなかったので書架に返して、夕方の4時ころまで
別の本を読んでました。その帰りです。紙は本の中に戻しましたけど、
書いてたことは頭の中に入ってました。まず、○○神社だったよな、
「鳥居を一度だけ逆側から通る」ってどういうことだろう?
その神社は、ちょっと高い丘の上にあるんで、坂の下に自転車を停め、
石段を上っていきました。そしたら鳥居があったんで、わざとくぐらず、
横の藪を通って向こう側に出て、それから石段を下りて鳥居をくぐりました。
これで、1回だけ逆から通ったことになりますよね。それで、鳥居から出たときに、
何だか奇妙な感じがしたんです。うーん、うまく言葉では表現できないんですが、
あたりの空気が湿っぽく感じたっていうか・・・

で、また自転車に乗って、△△家のほうへ向かいました。△△家は、この地方で
江戸時代から続く造り酒屋なんです。敷地も大きくて、四方に黒い板塀が
たてまわしてある。西に向かうには、△△家の裏側を通らなくちゃならないので、
塀に沿って自転車でゆっくり走っていったんです。そしたら、塀の中から大きな
松の木の枝が道路に張り出してるところがあり、頭を下げてそれをくぐったら、
また、何とも言いようのない感じがしたんですよ。一瞬、体温が高くなったみたいな
感覚です。でも、熱っぽいというのとはまた違う。自転車がふらついたので、
しばらく立ち止まってたら治りました。それで、最後の場所、
☓☓公園に向かったんです。はい、かなりの広さのある公園で、
僕が勤めてる小学校の児童もよく遊んでる場所です。
ですが、日曜の夕方ということで、中には人影はありませんでしたね。

鉄柵の外に自転車を置いて、中に入ってみました。遊具はブランコや滑り台、
いろいろありましたけど、たしかあの紙には、「枡形遊具の一番下をくぐれ」
って書いてまして。これもすぐにわかりました。枡形ってのは四角いってことでしょう。
だったら、ちょうどジャングルジムがあったんですよ。ですけど、
一番下は、とうていくぐれそうにはなかったです。枠の高さがなくて、
小学校以下の幼児じゃないと体が入りそうもなかったんです。
物好きもここまでだなって思いました。まあでも、ためにし頭を低くして、
一番下の枠から向こうをのぞいてみたんです。そしたら、
どういうことか今だにわかりませんけど、そこ、するっとくぐれちゃったんです。
僕は体も大きいほうだし、ありえないんですけど。で、そっから、
夢の中にいるというか、自分が自分でないというか、そんな状態になりました。

とにかく、何かに呼ばれてる気がしたんです。公園の外に出てどんどん走りました。
はい、自転車は公園に置いたまま、自分の足で、とっとこ、とっとこ駆けてたんです。
いや、すごく体が軽い気がしました。それと、これも今にして思えばですが、
視界がなんか変だったんです。すごく低い、まるではいはいしてる赤ちゃんが
町の中を見てる感じで。それから、人の家の庭や、用水路のフタの上、
草むらなんかを通り抜けて、大きなお屋敷の庭みたいなところに出ました。
一度も来たことのない場所です。で、そこに猫がたくさん集まってたんですよ。
そうですね、20匹くらいはいました。毛並みや汚れ方からみて、
どれもノラ猫なんだと思います。そいつらがいっせいに、お屋敷の縁側に向かって、
にゃーんって鳴いてたんです。で、ややあって、
縁側の雨戸が開き、一人のおばあさんが出てきたんですよ。

たぶん70歳は過ぎてたと思いますが、若い人が着るようなドレス・・・
夜会服って言うんでしょうか、それを着てまして、あと、顔はすごい厚化粧で、
つけまつげなんかもしてたと思います。それと、金髪のかつら。
鼻の横に大きな黒いほくろもありましたね。とにかく異様としか言いようがないんです。
そのおばあさんが、「さあ、お前たち、今日もよく来たな」そう言って、
持っていたボウルから、小魚、たぶんイワシの稚魚かなんかを、
猫たちに向かって撒きはじめて。はい、猫はいっせいに群がって食べてましたけど、
それ見てて、ああ、僕もほしいなって思ったんです。
で、おばあさんは餌を全部撒いてしまうと、「お前たちの中から、今回も一人もらうよ」
優しい声でそう言って、ちょうど僕の隣りにいた白猫を抱き上げ、
家に中に入っていったんです。そこで、気がついたっていうか・・・

はい、僕、あの☓☓公園のジャングルジムの前に、寝そべるようにして倒れてたんです。
はっとして起き上がりましたけど、口の中がべちゃべちゃして生臭くて。
吐いてしまいました。そしたら、あの家でおばあさんが撒いてた小さい魚、
その尾っぽが出てきたんです・・・・公園の水飲み場で口をゆすいで、
それから自転車に乗って部屋へ戻りました。
何事が起きたのかよくわからなかったです。まあ、今でもわからないんですが。
それで、ほら、本にはさまってた紙には、「大いなる幸運が訪れるであろう」
ってあったんですけど、特にそれらしいことはなかったですね。
いやまあ、もしかってこともあるから、宝くじを買ってみようとは考えてます。
それで、先週の土曜日ですね。また市立図書館に行きました。
この間見た、『烏円奇譚集』を探しましたが、書架には見つかりませんでした。

そのときも、夕方まで地方史関係の本を読んでまして、
そろそろ帰ろうと思って、本を返しにいったんです。そしたら、
書棚のところにすごく背の高い女の人がいたんです。そうですね、
179cmある僕よりまだ高い。その人は古風なドレスを着てて、長い金髪でした。
そのときに、前にあの屋敷で見たおばあさんを思い出したんです。けど、
おばあさんは背が小さく太ってたのに、その人はすらっとした体型でした。
僕が立ち止まっていると、その人はふり返ってこっちを見たんですが、
青い目の外国人で、肌が抜けるように白かったです。あと、
あのおばあさんと同じ場所、鼻の横に黒いほくろがあったんです。
その人は、僕に目を向けると軽く会釈をし、「この間は母がお世話になりました。
 ぜひともまた、うちにお寄りください」って言ったんですよ。





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