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実話怪談とホラー小説

2013.11.25 (Mon)
昨今、立て続けに本が出て、出版不況といわれる中で健闘している実話怪談ですが、
この実話怪談とホラー小説の違いについて書いてみます。
違いはいろいろとあるでしょうが、
自分が考えるところでは、(ホラー)小説には独自の世界観がありますが、
実話怪談はわれわれが生きているこの現実世界を舞台としているというのが、
最も大きい相違点ではないかと思います。

どういうことかというと、小説は私小説やモデル小説のようなものをのぞけば、
ホラーに限らず虚構世界を舞台としています。
われわれはそのような世界が現実には存在しないことを知りながら、
その舞台装置の中に意識的に誘い込まれていくわけです。
これは時代小説やSFを考えてみればわかりやすいと思います。
作者側としては、すんなりと話の中に導き入れるためには、
詳しい舞台設定と効果的な情景描写が必要になります。

また登場人物についても、そのような人物が架空のものであることを前提として
読者に感情移入させるためには、
キャラクター設定をしっかりさせておかなくてはなりません。
そして登場人物どうしの人間関係にも工夫をこらす必要があります。

ところが、実話怪談に登場するのは基本的には市井の一人物です。
そして描かれる世界は、われわれが日常的に身を置いている駅のホームであり、
満員電車であり、会社のオフィスであり、暗い帰り道なわけです。
その世界は身近で現実感があり、また登場人物も名もない一般人であるからこそ、
その身に起きる怪異を、それを読む自分に起きたとしてもおかしくないこととして
実感できるのではないでしょうか。
ですから、あくまでも実在の人物から取材して書いたのだという形を崩しては
いけないのです。

そう考えると実話怪談では、詳しい情景描写や人物のキャラ設定は、
かえって現実感を損なうことになるのではないかという気がします。
あえて筆を抑制して、小説に近づいていかないことが肝要だと思うのです。
また、話の中で起きる怪異や事件も、
小説であれば非現実的なことでも読者は受け入れてくれますが、
実話怪談の場合は、ありえない、創作臭いといった批判につながってくるでしょう。

実話怪談とホラー小説で、どちらがジャンルとして優れているとかは
比較してもあまり意味はないと思います。
ただホラー小説のほうが、
詳しく設定して筋を練る分だけ書くのに時間がかかるとは言えそうです。
また実話怪談のほうは、現実感を損ねないために様々な書き方の制約があり
そのあたりが難しいところかなと思います。
現在の実話怪談作者では、実話としての制約をしっかり守っている人、
小説に近づきつつある人、様々な形が見られて興味深いところです。

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