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諱(いみな)の話

2019.02.22 (Fri)
今回はこういうお題でいきます。あんまり面白くないと思います。
さて、どうしましょう。最初に歴史クイズでもやりますか。難しくはないです。
① 尾張出身で、安土城を築いた戦国武将は誰か?
② 江戸時代に北町奉行を務め、その背には彫物があると噂された旗本は誰か?
③ 幕末、新選組の局長を務めた天然理心流の剣客は誰か?

①は「織田信長」、③は「近藤勇」ですよね。②もおわかりでしょうが、
みなさんはどう答えられますかね。「遠山の金さん」でしょうか、
それとも「遠山金四郎」、あるいは「遠山左衛門尉(さえもんのじょう)」・・・
「遠山景元」と答えられる人は、あんまりいないんじゃないかと思います。

織田信長
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そう、今日は武士の氏名の話をしていきたいと考えています。
まず、織田信長はフルネームで「織田・三郎・平朝臣・信長」。
読みは「おだ・さぶろう・たいらのあそみ・のぶなが」だと思います。
ここで、「織田」は家名つまり名字のことです。

「三郎」は仮名(けみょう)といって、通称・呼び名ですね。
信長は次男でしたが、家督を継いだため父親の仮名をそのまま継承して三郎。
仮名は人によっては複数あり、信長の場合は「上総介」 「弾正忠」
などとも呼ばれました。これは、戦国の覇者となってからの信長を
「三郎」と呼ぶわけにはいかないですからね。

「平朝臣」は信長の「氏 うじ」を表します。平氏の一門に連なるという意味。
最後の「信長」が諱です。諱は「忌み名」であり、信長が他人から
これで呼ばれることはなかったはずです。諱を使うのは、自分で文書などに
署名する場合や、朝廷での儀式関係のときくらいでしょう。
あと、元服前の幼名もあって「吉法師」ですね。

遠山の金さん
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このように、武士のフルネームは「家名・仮名・氏・諱」の順になっていましたが、
よほどの場合でなければ、氏を名のることはありませんでした。
もう一人、遠山の金さんも見てみましょう。これもフルネームは、
「遠山・金四郎 または 左衛門尉・景元」で、
氏は系図を調べればわかるでしょうが、面倒なのでやめておきます。

仮名が二つあるのは、朝廷から「従五位下左衛門少尉」の官位を受けていたため。
ですから、遠山より目上の者は「金四郎 殿」 、目下ならば「左衛門尉 様」と、
呼び方が違っていたと思われます。ここで、実際の官位と仮名が一致するのは、
江戸時代では珍しい例なんですね。

島津・松平薩摩守・斉彬


例えば、九州の島津家では、仮名として「薩摩守」を名のることが多かったんですが、
これは朝廷から正式に与えられた官職ではありません。また、そこらの浪人でも、
「山田左近」とか「佐々木刑部」などと、一見官職のような偉そうな仮名を
勝手に名のってる場合も珍しくはありませんでした。

③の近藤勇の場合は、勇が仮名で、諱は昌宜(まさよし)です。
ただ、「近藤昌宜」とすると、誰のことだかわからなくなってしまいます。
ですから、教科書に載っている歴史上の人物の名前は、
仮名と諱が入り混じってるんです。統一したほうがいいような気もしますが、
現実的にはどうにもならないんでしょうね。

近藤勇
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さて、諱は日常、ほんとうに使われることがなかったので、
ある武士が亡くなって、まわりの友人、知人の誰も諱を知らず、
郷里のお寺まで確かめに人を行かせたなんて話はいくらもあります。
基本的に、諱で呼んでもいいのは、その武士の主君か親だけでした。

これは、諱は、その人物の霊的な人格と強く結びついたものであり、
その名を口にすると、その霊的人格を支配することができると考えられたからです。
夢枕獏氏の『陰陽師』シリーズは平安時代の話ですが、敵に諱を知られ、
呪をかけられてしまうシーンが出てきますが、まさにああいう感じです。

他人の諱は、呪詛に使ったり、あるいは仇討ちなどで憎い相手にわざと
諱で呼びかけるとか、そういう場合にしか出てきませんでした。
さて、諱を使う風習は、中国から日本に伝えられたのは間違いありません。
例えば、三国志で有名な蜀の軍師は「諸葛・亮・孔明」です。

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ここで、諸葛が姓、亮が諱、孔明が字(あざな)ですね。
幕末の国学者、本居宣長はその著書で、「諱は中国から伝わってきた
よくない風習で、本来、日本では名前は美称であったはずだ」と述べています。
ただ、宣長は何でもかんでも中国由来のものを否定する傾向が強く、

本名を他人に知らせない習慣は中国だけでなく世界各地に見られ、
日本でも、中国から諱が入ってくる前から、
もともとそういう風習があったのだとする反論もあります。
で、明治になって戸籍法が発布され、仮名と諱を統一することになり、
ここで、日本人の氏名から呪術的な要素はなくなってしまったんですね。

さてさて、ということで、諱を中心に江戸時代の氏名について
見てきたわけですが、呼び名には上記した以外にも、松尾芭蕉の
芭蕉のような「号」、出家した場合の「法名」があって、たいへん複雑なんです。
みなさんも、歴史的な人物の氏名について、以上のようなことを頭に入れておくと
面白い発見があるかもしれません。では、今回はこのへんで。

関連記事 『漢風諡号小考』

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