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異空間の話 2題

2019.03.16 (Sat)
ひょっとこ空間
俺が小学5年生のときの話だなあ。こう見えても俺、ガキ大将だったのよ。
子分が何人もいてな、いろいろ悪さしてたんだよ。
あ、悪さたって、今どきのガキみたいなイジメじゃねえぞ。
あんな陰湿なものは俺らの頃にゃなかった。もっと何というか、
素朴な悪さだった。例えば夏場に畑のトマトやスイカを取って食ったりとか、
冬場は、カチカチに表面が凍った肥溜めの上を歩くとかな。
肥溜めについては、いろいろ面白れえ話があるんだが、
まあ今回はやめておくわ。でな、たしか夏休み中だったと思うが、
子分のAとB、2人を連れて裏山に登ったわけ。
山はいい遊び場だった。虫捕りはもちろん、猟師の仕掛けた罠にかかってる
獣を見て歩いたり、雨降りの後にわざと山に登って、

尻の下にビニール敷いて、登山道を下まで滑り降りてくるとかな。
で、その日もカブトムシなんかを捕って、日が暮れかけてきたんで
そろそろ帰ろうとしたとき、登山路の脇の崖下に小屋が見えたんだよ。
崖ったってせいぜいが3mくらいの高さで、その下に小屋の屋根がある。
それが木の皮で葺いたもので、夏の陽ざしに焼かれて、
じつにふかふかと柔らかそうに思えた。それでな、「飛び降りてみねえか」
って言ったんだ。AとBがうなづいたんで、まず思い切って俺から飛んだ。
・・・こういうときに子分に先にやらせるってことはしないんだよ。
何でも思い切ったことを最初にやるのがガキ大将なんだ。
ふわっと着地すると、屋根は柔らかく両足が沈んだが、破れることはなかった。
「お前らも来いよ」A、Bが続いて飛び降りてきて、

屋根がぐわっとたわんだ。それでそのまま底が抜けて、俺ら3人は小屋の中に
落っこちまったのよ。でん、でん、でん、と3人が床に落ち、
尻が思いっきり痛かったが、ガマンして「大丈夫か?」って声かけたら、
「お、おう」って返事が返ってきた。小屋の中は、まあ普通の猟師小屋だな。
下は土間で真ん中に簡単な囲炉裏が切ってある。冬場の非常時に泊まり込んだり
するときのもんで、隅のほうにマキが積み上げてあった。
中からカンヌキを開けて出ようとしたら、Aが「あ、面があるぞ」って言った。
そっち見ると、板壁に、口を尖らして目が左右に向いた木彫りの面が
かかってた。「ほう、ひょっとこだなあ」近づいてったが、
子どもでは届かない高さだった。伸ばしかけた手をさげたときに、後ろから
「ぴーぴーぴー」という音が聞こえた。「ああ、何だよ?」

そう言って振り向いたら、AとBの2人ともが、面と同じように口を尖らして、
しかも手足をでたらめに振り回して踊ってたんだよ。
「何やってんだお前ら!」と言ったつもりだったが、俺の口から出たのも、
「ぴ~ひょろら~」って音だった。そのうちに体がムズムズしてきて、
俺も踊り出してしまったのよ。・・・そうだなあ、小1時間も踊ってたか。
心臓はもうバクバクで、今にも倒れてしまいそうだったが、
体が止まらない。ああ、もうダメだって思ったときに、パンという手を叩く
ような音がして、俺は床に倒れたんだ。AとBも同じよ。
3人してゼイゼイ、ハーハー、しばらく立ち上がることもできなかった。
で、なんとか回復すると、戸口のカンヌキを外して、
ほうほうの体でその小屋を逃げ出したんだよ。

まあ、こんな話なんだが、もう少し続きがある。家に帰って、
小屋のことは親には言わなかったんだよ。屋根壊しちゃったからな。
AとBにも話をするなって口止めしといた。でな、晩飯のときだ。
俺、猫舌なんだよ。熱いものが苦手でな、かあちゃんがよそってくれた
味噌汁に息を吹きかけてさまそうとしたとき、息を吐いた口から
「ぴ~ひょろろ~~」って音が出たんだよ。弟、妹が目を丸くして
驚いてたな。親父が「ぎゃはははははははっ」って笑いだして、
それがおさまると、「お前、ひょっとこ小屋に入ったか」って聞かれた。
怖い親父に嘘はつけねえんで、入ったし、屋根を壊したことも白状した。
んで、罰として1ヶ月風呂炊きをさせられたんだ。小屋は大人たちが直した
みたいだった。口から変な音が出るのは、その罰が終わる頃になくなったよ。

神社空間
こらあ俺がまだ、ある組の構成員だったときの話だな。
ああ、もう何十年か前のことだから時効になってるだろ。
そんときはシノギとして、金貸しをやってたんだ。今でいう闇金だな。
いや、当時はそんな言葉はなかったと思う。俗にカラス金って言ってた。
日歩で、日が暮れてカラスがカーって鳴くたびに利子が増えるからカラス金。
当日金を借りたら、翌日の朝まできっちり返さにゃなんねえ。
もちろん非合法だし、そんなのに手を出すやつはまともじゃねえ、
客は博打打ちとか、芸人、その日暮らしの零細業者とかだな。
あとまあ、夜になって急にソープとか、そのころはまだトルコ風呂と言ってたが、
そんなとこに行きたくなったやつらが店に来ることもあった。
ほら、昔は今みてえなATMもなかったし、銀行が閉まるのも早かったから。

そのかわりみてえなもんだったのよ。あと、長期の高額の融資もやってた。
これも法定よりはるかに高い利息がつく。もちろん借りにくるのは、
銀行で断られた中小業者とかだよ。だから貸しが焦げつくこともあるが、
俺らは筋者だから、貸した金はどうやっても回収するんだよ。
え、娘を売らせる? いやまあ、そういうこともたしかにあった。
けどよ、そもそも年頃の娘を持ってるやつなんてそんなに多くはない。
かといって、本人をタコ部屋に叩き込んだところでたいした金にはならん。
それでな、組の幹部たちがいろいろ相談して、「神社部屋」ってのを
作ったんだよ。当時の組長に神道関係の右翼の知り合いがいてな、
その人の発案だったらしい。え、どういうものかって?
慌てなさんな、それを今から説明していくんだよ。

組の事務所が入ってるビルの地下な、そこは物置になってたんだが、改造して、
全面にコンクリを張った部屋にした。いやいやいや、拷問なんかしねえよ。
そんなことしても1銭にもならん。壁の四方のコンクリには
四角い穴を開けて、そこに神社を入れたんだ。そうだな、社殿の大きさは
実際の神社の4分の1くれえかな。ミニチュアよりは立派な造りでな。
そこに入った4つは、全部 別々の神社なんだ。選定したのは、
組長の知り合いの右翼の人。俺にはよくわからねえが、
どの神社も分霊ってのをやって、きちんと神様を入れた。だから4つとも
本物の神社なんだ。え、御祭神? そんなの俺にわかるわけねえだろ。
でな、部屋の真ん中には立派なソファを置いて、大型の冷蔵庫もあった。
中にはキャビアとかすげえご馳走が入ってる。

もちろん酒も、年代物のワインとかいろいろ用意した。それで、
借金を焦げつかせた客には、3日間その中で過ごしていただく。
まあ、そういう場所なんだよ。ただな、そこに入る前に、
健康診断を受けて生命保険に入ってもらう、かなり高額のな。
受取人は俺らだよ。あとはもうわかるだろ。その神社部屋で3日の間、
借金のことは忘れて、好きなだけ飲んで食って気楽に過ごしてもらう。
テレビもあるし、当時出たてのVHSビデオで映画を見ることもできた。
で、それが終わったら家に帰ってもらうんだが、おそろしいことに、
3ヶ月以内に確実に癌になるんだよ。それも末期で見つかる。
そして半年で死ぬ。そうすると保険金が俺らの組に入るってわけ。
いや、何一つ違法なことはねえだろ。

最初の健康診断は国立の大学病院で受けてるわけだし、そんときには
癌はねえ。俺らがその客を痛めつけたりしたわけじゃなく、ご馳走して、
酒飲ませて帰した、ただそれだけだ。何もやましいことはねえ。
ねえんだが・・・俺な、その頃は下っ端だったから、客が帰った後の
片づけとかで、その神社部屋に何度か入ったことがあるんだ。
そしたら、別に気分が悪くなるとかはないが、出た後にジンマシンに
なることがあったんだよ。体中腫れて、かゆくてたまらなかったが、
数日で治まった。そんなこともあって、そこがよくねえ場所ってのはわかってた。
でな、この神社部屋がどうなったかって言うと、地下ごと地震でつぶれちまったんだ。
震度2くらいの地震で、俺らの組以外に何の被害もなかったんだが、
あとで気象庁のやつらが来てな、震源地が組のビルの直下だって言ったんだよ。





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