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山中湖の巨大魚

2019.03.24 (Sun)
7月の終わり、夏休みに入ったばっかの頃に男だけ5人でキャンプに行った。
場所は富士五湖の一つだな。初日の夜はかなり遅くまで
飲んで俺はひどい二日酔いになり、みなが釣りに行くというときも、
一人貸しテントで寝てたんだよ。昼近くなってやっと少し気分がよくなって、
湖岸の道を仲間が行ったほうへぶらぶら歩いてった。
15分ほど歩くと、だいぶ汗が出て頭痛が治まってきた。
右手が湖で、中に向かって板が張り出してるとこがあった。

舟が着けるような場所ではなく、釣用の足場みたいなもんだ。
そこに人がいたんだが、変なやつだったんだ。
50過ぎくらいのおっさんで、上半身は裸、
下半身に晒をぐるぐる巻きつけてた。
こう書くとお祭りのときの格好みたいだが、そうじゃなく、
その晒が尻のところが盛り上がって、そうだな、
コントに出てくるアヒルみたいだったんだ。
わかるかなあ、尻だけぼこんと突き出てたんだよ。

おかしい人だと思ったから、見るのをやめようとしたが、
向こうがこっちを見て目が合ってしまった。そしたらおっさんが叫んだんだ。
「アンちゃん、ちょっと待てや。30分で5万やるから手伝ってくれ」
かまわず行き過ぎようとしたら、
おっさんが走ってきて俺の右手をつかんだ。
「ちょっとやめてくださいよ」振り払おうとしたが、力がかなり強かった。
おっさんは俺の手をつかんだまま、晒からヘビ革の財布出して、
そしたらすげえ分厚かったんだよ。

「じゃあ10万出す、出すから行かねえでくれよお」
泣きそうな声になったんで足をとめ「どういうことですか」って聞いたら、
「なあに、あと10分ほどしたら俺の両手つかんでてくれればいいだけだから
変な格好してるがホモ関係じゃない、それは誓うから、人助けだと思って」
10万というのはさすがに気を引かれるだろ、
それで「わけを説明してください」って言ったんだよ。

したら「わけはちょっと言えねえが、これ見たらわかる」そう言って、
俺の手をつかんでヤブ陰に引っ張っていき、残った片手で晒をほどき始めたんだ。
「やっぱホモか?」と逃げようとしたら、
それを察したのか「ホモじゃねえったら!!」絶叫した。
で、俺に財布ごと押し付けてきた。
「アンちゃんが好きなだけ取っていいから 頼む もうすぐ来るんだよ」
「わかりました、わかりましたよ、できることならやってもいいです」
こう答えると、「ありがてえ」どんどん晒をほどいてって・・・

んで、尻の後ろがあらわになったとき、俺は「あっ!」と叫んでしまった。
尻たぼの間からでろんと長いものがこぼれたんだ。
長さ40cm、太さ10cmはあったな。
色は黒に蛍光グリーンの太い筋でうねうね動いてた。
ヒルか何か、生き物に思えたが、そんなヤマビルはいないよな。
「これ見えるかアンちゃん、寄生虫だよ、しかも生きたもんじゃない」

「でもよ、触ることもできるし、このままにしてれば内臓までいってしまう。
 わかるか、呪いなんだよ。俺は闇金やってるんだが、客に呪われた。
 だからこの場所に解きにきたんだよ」
「??? 意味わかんないですよ。その虫みたいなのは見えます。
 医者行ったほうがいいんじゃ」
「ダメだ、医者は糞の役にもたたん。ああ、もうくる時間だ」
「くるって何が?」 「魚に決まってるだろ、ここは山中湖だぞ。
 回遊する時間が決まってるんだ」ますますわけがわからんかった。

「いいから、俺がこの板の突端に向かって尻を出すから、
 もってかれないように両手を引っ張ってくれればいいんだよ。
 それだけで財布の中身全部やる」
こんなことを言い合っているうち、湖の中央のほうに白い波が立つのが見えた。
「あああ、来た」おっさんが後ろを向いて尻を湖に突き出し、
そのヒルみたいな生き物がにょーんと水の上に垂れ下がった形になった。
「俺の両手を強く引いてくれ。アンちゃんも踏ん張ってな。
 じゃなきゃ俺まで食われる」

水面の波はかなり高くなり、あきらかにこっちに近づいてきてる。
俺は言われたとおり、両手でおっさんの手首を握って板の上で踏ん張った。
そしたら・・・信じられないかもしれないが、
水の中に巨大な魚の口を開けた顔が見えた。
軽トラックを正面から見た大きさだよ。怖くはなかったな 
魚の顔を前から見ると、なんとなくユーモラスなんだ。

それがどんどん近づいてきて、バジャーッと水が跳ね上がり、
跳び上がった魚が、おっさんの尻の後ろで口を閉じたんだ。
バフッという音がした。一瞬、引っ張り込まれそうになったが、
おっさんの体を通して何かが抜けた感触が伝わってきて、
俺はおっさんごと尻餅をついた。

巨大魚はそのまま体を反転させて水に落ちたが、
口の端におっさんの尻にあったヒルを咥えてるのがわかった。
「あああ、抜けたあ。助かったああ」おっさんが歓喜の声をあげ、
魚は潜って見えなくなった。
ま、こんなことがあって、結局20万もらったんだよ。




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