ゾンビのいる風景

2013.12.08 (Sun)
 ゾンビはもともとアフリカ由来ですよね。それが奴隷商人にかどわかされてきた黒人たちと
ともに中米に広まり、ヴードゥ教の一要素となりました。
この本来のゾンビの概念は、映画によってだいぶ変遷を遂げてきています。
その契機となったのが、ジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』
なのはよく知られています。
そしてロメロがこの映画のアイデアを得たのが、リチャード・マシスンによるホラーSF
『地球最後の男』であることもマニアなら知っているでしょう。

 ただ『地球最後の男』は死者の黄泉返りの話ではなく、
オカルト的に分類するとしたら吸血鬼ものです。
ウイルスに侵された者が生きながら吸血鬼になり、日光を避けるようになる。
彼らはそれなりに知性があり、動きもそう遅くはなかったはずです。
この話から、ロメロは感染者に噛まれたり引っ掻かれたりした者は感染者になるという
設定を取り入れゾンビの属性としたことで、さまざまなドラマが生まれてきました。
愛する家族がゾンビ化し、それを知らずに近づいていって襲われる、
自分がゾンビから傷をうけてしまい、おぞましい姿になる前に自殺する、
あるいは友人に殺してくれと頼む。
いくつものゾンビ映画に出てくるお決まりのシーンですが、
この設定によって、単なる怪物ものにとどまらず話に深みが加わったと思います。

 最近のゾンビは走ります。2004年のリメイク版『ドーン・オブ・ザ・デッド』が最初かな。
『28日後...』のほうが早いですが、あれはウイルス感染者です。『28日後...』から走るゾンビの
ヒントを得ているのは確かでしょうが。
ゾンビが走り出すことによって、ドラマのサスペンス性は高まり、映画に緊迫感が生まれました。
映画制作側としては、観客の心理をいっそう操作しやすくなったとは思います。
脳を破壊されなければ運動を停止しない、ちょっと引っ掻かれただけでも感染してしまうという
ゾンビの優位点?が、人間と同等以上の運動能力を得ることで一気に拡大したのです。
『地球最後の男』の時点に先祖返りしたとも言えるかもしれません。
しかしかわりに失ってしまったものも大きかったと思います。

 死後硬直しながら独特の動きをするゾンビには哀感があります。
少数では銃器を持った人間にはかなわず、次々と無力に倒されていきます。
(またこれによって人体破壊ショー的な特殊効果の見どころも生まれました)
またゆっくり歩くゾンビだと、様々な服装(看護師の白衣とか、EMOファッションとか)や
表情で生前の職業や個性を見てとるゆとりがあります。
ああ、このゾンビはこういう人生を歩んできたんじゃないか、みたいな感慨があるんですね。
大げさに言えば、そこに生と死の境目を読みとることができるような気がします。
ロメロ監督の『ランド・オブ・ザ・デッド』だったか。生き残った人間が気を引こうと
打ち上げる花火を呆然と見上げるゾンビたち、ああいう哀感はなくなってほしくないです。
ちなみに『地球最後の男』は、ウイル・スミスが主演した『アイ・アム・レジェンド』の
原作でもあります。

『Night of the living dead』


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