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アーカイブ 鳩がいう

2019.04.21 (Sun)
自分は、某市役所の高齢者福祉課に勤務しています。ですから、これから話す内容は、
公務員の守秘義務に反することで、まず、それを理解してもらいたいんです。
それでもここに来た理由は、体験したことがあまりに不可解で、不気味で、
自分の頭がおかしくなったんじゃないかって気がして。
ですから、こういうことが専門だという皆さんに、ぜひともご意見を伺いたくて。
先週の火曜のことでしたから、もう一週間たつんですが、
起きたことの整理がまったくつかないんです。ええ、順を追って話しますよ。
まず自分の仕事は、簡単に言えば市在住の高齢者のお世話なんですが、
市域は広いので、自分が受け持つのはその中のごく一部の地域で、
自分は若いので、郊外のほうの担当になってるんです。さまざまな仕事内容がありますが、
基本は孤独死を防ぐための見守り活動で、介護とはまた違います。

ただ、自分が毎回、高齢者の方のご自宅を訪問するということではなく、
民生委員や、市で委嘱した見守りボランテイアの人との連絡調整が主なんです。
けど自分でも訪問をしますよ。一軒について2ヶ月に1度くらいは。
春は緊急通報システムなどの点検、夏は熱中症予防、秋冬はノロウイルス関連と雪よせ。
もっとも雪は積もるほど降るような地方ではありませんが。
あとは通年で電話による詐欺事件への啓蒙活動。
でね、先週のその日は直通サービスがうまく働いているかどうか、
担当してる家を一軒一軒訪問してたんです。対象は65歳以上の一人暮らしの方ですから、
かなりの数になりますし、もちろん1日では終わりません。
仕事を引退した方が多いので、不在の場合が少ないのは助かりますけど。
その日の午後4時ころですね。もう1、2軒で今日は終わろうかと思ってました。

川沿いの集落の、あるおばあさんのところです。84歳で、足腰は弱っていたものの、
日常生活に困っているということはなく、週1回、買い物のサービスを受けてたんです。
家は藁葺の旧家だったのを、子どもさんらが簡素なツーバイフォーに建てかえて、
台所とあとふた間しかありません。おそらくおばあさんが亡くなったら、
更地にして売るつもりだったんでしょう。で、敷地内に車を停め、
玄関のチャイムを押したとき、ちょっと嫌な予感がしました。
ええ、郵便物が数日分郵便受けに溜まってたからです。
返事がなく、戸に手をかけると鍵はかかってませんでした。
でね、一歩中に入ったら、饐えたような臭いを感じたんです。
ますます嫌でしょう。何度か名前を呼んでみたものの返事はなし。
こういう場合はいちおうマニュアルがあって、あがってもいいことにはなってます。

ご本人から了解もとってありますし。いざとなったら救急車、警察を呼びます。
「あがりますよ~」と言いながら、中の引き戸を開けると台所で、
正面のサッシ戸の下半分のガラスにベニヤ板がはってあるのが見えました。
おばあさんが自身でやったんだと思いました。
不細工にガムテープではっつけてるだけでしたから。
でね、そのとき、「ああ、そういえばここのおばあさん、このサッシ戸を開けて、
 鳩に餌をやってたよなあ」って思い出しました。前来たときに見てるんです。
サッシ戸の外は斜面になってて、その下をちょっとした川が流れてる。
川の向こうは林で、土鳩の巣がいくつもあるって聞いてました。
それにね、おばあさん餌を与えていたんですよ。
米粒やホームセンターで売ってる鳥の餌なんか。

でもこれ、迷惑行為っていうか、土鳩は今、増えてるらしいですから。
注意したことはないです。数少ない楽しみだろうし、他の家もないところですから。
それをなんで塞いだんだろう?ガラスが割れたのだろうかと思いましたが、
とにかくおばあさんの安否を確認するのが先なので、
居間へ続くフスマを声かけながら開けました。電気コタツがかけられて、
おばあさんはいつもそこにいるんですが、人の姿はなし・・・
いや間違いなく誰もいなかったんですよ。
テーブルの上に湯のみとりんごジュースのペットボトル、テレビはついてなくて、
座椅子は空っぽ・・・だったはずです。それが・・・
さらに次の間は寝室でしたが、あまり使われた様子はなく、
おばあさんはいつもコタツで寝てたみたいでした。

トイレも風呂も確認しましたがばおばあさんはおらず、
これは外出してるんだ、と思うしかないですよね。最初に感じた、
饐えたような臭いは、居間や寝室ではあまりそう感じず、
台所の生ゴミなんだろうと思いました。外歩きできるほど元気なんだと、
まずは一安心しまして、市のパンフレットに書き置きを残していこうと思いました。
そのときです、台所のほうでコツコツコツという、
尖ったもので木を叩くような音がしました。かなり強い音でしたから見にいくと、
サッシにはられたベニヤ板のようでした。上のガラスからのぞきましたが、
陰になって下が見えない。その間にもコツコツコツコツコツと音は続いて、
サッシを開けようと思ったんですが、鍵の部分までベニヤがかぶさっていまして。
それで足先でトンと軽く、ベニヤを蹴ってみたんです。

そしたら、ベニヤの右横がぶわっと膨らんで、そのすき間から緑のものが
顔を出しました。「うっ!」と思わず後ずさりしましたが、鳩の頭でした。
「なんだ」と思いましたが、鳩は真ん丸い目の首を激しく左右に振り、
上半身が中に入ってきました。そして自分のほうに嘴を向けて、
「バアサンは死んでいるぞ」ってしゃべったんです。確かに聞きました、
信じてください。年齢はわからないですが、男の声でしたよ。
それで、恥ずかしい話ですが尻もちをついてしまいました。
そのとき手をベニヤの上端にかけてたので、板がはがれて倒れかかってきて。
でもね、今の今見たはずの鳩の姿はどこにもなかったんです。
ガラスは割れてませんでしたが、大きくヒビが入ってました。
それと、外のたたきの石の上に、たくさんの鳩の羽根が散らばってました。

パニックになりかけてましたが、なんとか立ち上がって、
半分開けていた居間のフスマのほうを見ました。そしたらですよ、
座椅子に逆さになった顔と目が合ってしまったんです。おばあさんでした。
白髪の小さい頭をザンバラに乱して、かっと目を開け、座椅子にあおのけになって・・・
でもね、そんなはずないんです。居間に入ったときに、
座椅子の座布団の上まで見えたはずなんです。「ああーっ」と叫んで目をつぶり、
もう一度開けてもやっぱりおばあさんの顔が。
死んでいるとしか見えませんでしたが、携帯で救急に連絡しました。
それから警察にも。もちろん救急のほうから呼吸と心臓を確かめるよう指示があり、
座椅子の横に寝かせて心臓マッサージなどの措置をしましたが、
その間ずっと怖くてたまりませんでしたよ。

それでね、これは事後談なんですが、救急病院の話では、
おばあさんは死後8時間ほどたっていたんだそうです。
死因は、解剖はしませんでしたが、
腹部の内出血での脱水によるものだろうということでした。
これが顛末ですよ。え? 鳩が、おばあさんが亡くなっているのを
教えてくれたんだろうって? いや・・・たぶんそんないい話じゃないと思うんです。
というのは、おばあさんの遺体は死後1日未満ですし、まだ寒い時期ですから、
死臭がしてたわけじゃなく、さっき話した、一番最初に感じた饐えた臭いは、
やっぱり台所の生ごみのポリバケツの中からでした。
何が見つかったと思いますか? 他のゴミに混じって、土鳩の頭が4つと大量の羽根。
おばあさんが食べてたのかって? それはわかりません、考えたくもないですよ。

はないskそうあy



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