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家ものホラー

2013.12.09 (Mon)
 前の項でリチャード・マシスンの『地球最後の男』を取り上げましたが、
この話は最後にどんでん返しというか、価値観の逆転があります。
主人公以外すべてが吸血ウイルスに冒されている中で、いつのまにか主人公こそが、杭を持って
無差別の殺戮を繰り返す伝説の怪物として怖れられるようになっていたとするラストです。
これを原作として、ウイル・スミスのものも入れて3度映画化されていますが、
この価値観の逆転を生かすことができたものはありません。
なかなか映画にするには難しい部分があるんですね。

 さて、才人のマシスンは『地獄の家』という本も書いていて、
これはシャーリー・ジャクスンの『山荘奇譚』と並んで、
「家もの」と呼ばれるホラージャンルの元祖的な作品になっています。
どちらの作品も粗筋的には似ています。
呪われた家という噂のある屋敷に科学者を含む複数人がのり込んで
調査するという内容ですが、テーマはかなり違います。
『地獄の家』が、かつての屋敷の所有者であったベラスコの霊魂(残留思念?)
との戦いの話であるのに対して、
『山荘奇譚』は怪奇現象は添え物的で、コンプレックスを抱えた女主人公の、
内面が崩壊していく過程が話の中心になっています。
『地獄の家』はオカルト的にひじょうによくできた作品だと思いますが、
自分的には『山荘奇譚』のほうが怖いし、後味が悪いです。
ジャクスンは、前に『くじ』という短編も紹介しましたが、
後味の悪い「嫌な」話を書かせたらベストに近いのではないでしょうか。
(他にはアイラ・レヴィンとか?)特に同性である女性に対する残酷な視点が鋭いです。

 この2作も当然ながら映画化されていて、『地獄の家』は『ヘルハウス』の題名で公開され、
マシスン自身が脚本を書いていたはずです。
ストーリーには甘い部分もあるものの、オカルト的な細部がよく描かれており、
こけおどし的な部分は少なく、全体としては好感の持てる映画でした。
『山荘奇譚』は2度映画化され、ロバート・ワイズ『たたり』は、
そこそこ原作の雰囲気を伝えていましたが、
ヤン・デ・ボン監督の『ホーンティング』はひじょうに評判の悪い作品になってしまいました。
CGの多用が主に非難されていましたが、
もともと繊細微妙な心理劇であるものをハリウッドの大作にするには無理があったと思います。
むしろヨーロッパの監督が小予算でやればよいものができたのかもしれません。

 ホラーの「家もの」がどこからきているかといえば、元々あった幽霊屋敷の話に、
ミステリのクローズド・サークル物(「吹雪の山荘」もの)
の設定が加わったんではないでしょうか。
あとは有名なアメリカのポルターガイスト事件「ハイズビル事件」
(後に地下室の壁の中から人骨が発見されたという)のイメージ、
ウインチェスター・ハウスのイメージなども含まれているかもしれません。
(「ハイズビル事件」「ウィンチェスター・ハウス」ともアメリカ心霊主義の産物)
 小説では上記2作の他、キングの『シャイニング』を入れて
家ものベスト3と言われることが多いですが、
最近『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』で映画化された、
スーザン・ヒルの『黒衣の女』も地味ではありますがイギリスらしいよい作品だと思います。
日本でも、小池真理子『墓地を見おろす家』とかいろいろありますね。
ホラー作家なら一度は書いてみたくなるテーマなんでしょう。
映画だと『悪魔の棲む家』『ポルターガイスト』『ローズ・マダー(テレビ映画)』
『家(ダン・カーティス監督 これ知ってる人は少ないですがなかなかおすすめ)』
『アザース』『ゴースト・ハウス』・・・
とかいろいろあります。日本だと『スウィートホーム』とか。

「ハイズヒル事件」(フォックス姉妹)Wiki

「ウィンチェスター・ハウス」Wiki

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コメント
「山荘奇譚」は本当に良いですよね! 細々とした描写の積み重ねから、じわじわ嫌な感じが滲み出してくるような。「ホーンティング」は久々に金返せって思った作品でした。ファンタジーになってた・・
serpent sea | 2013.12.10 00:14 | 編集
ですよね。
原作の名前だけ使ってまったく別のものをつくるのは勘弁してほしいです。
bigbossman | 2013.12.11 16:04 | 編集
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