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アーカイブ 明人くんの話

2019.04.24 (Wed)
これ、今から15年くらい前からのことです。当時僕は小6で、妹が小3でした。
たしか平日だったと思うけど、先生方の研究会かなんかで、
学校が午前で終わった日があったんです。その日は母が頭が痛いと言って、
仕事を休んで家で寝てたんです。だから、僕ら兄妹で母が書いたリストを持って、
近くのスーパーまで買い物に行くことになったんですよ。
スーパーまでは歩きで10分もかからないんですが、途中で橋を渡ります。
その橋の上で、妹が欄干のすき間から川を見たんです。
これはいつものことで、きれいな水なので魚を探してたんですね。
しばらく待ってましたが、手を引いていこうとしたときに、
「お兄ちゃん、あれ」と川面を指差して叫びました。「ん、なんだ・・・ええ?」
信じられないものがいたんですよ。赤ちゃんです、たぶんまだ1歳にならない。

その赤ちゃんが、川の水の上を這っていたんです。「えー嘘だろ!」
しかも、ベビー服を着た全身が金色に光ってました。
「ね、お兄ちゃん、赤ちゃんだよね?」 「ああ・・・下に降りてみよう」
河の両面は凸凹のあるコンクリブロックで護岸されていたので、子どもでも
降りることができました。土手に入って赤ちゃんのいるあたりに駆け下りると、
川の中央付近にいる赤ちゃんの背中を見下ろす形になりました。
男か女かはわからなかったんですが、笑顔で手足を動かしているようで・・・
でも、水の上なんですよ。金色というのは、赤ちゃんがその色をしてるわけじゃなく、
金と銀が混じったような光を体から発してたんです。
「ありえねえ」と妹と顔を見合わせたとき、シュンと赤ちゃんが上に動きました。
宙に浮いたってことですけど、これがものすごい速さで。

はい、橋の上に跳び上がったんです。慌てて僕らも上に戻りました。
それで橋の先を見ると、ずっと向こうにベビーカーがあって、
お母さんらしい人が傍らで立ち話をしてたんです。走っていってみました。
ベビーカーをのぞき込むと、赤ちゃんは起きてて機嫌よくにこにこ笑ってたんです。
さっき、川の上で見た赤ちゃんかどうかははっきりわからななかったんですが、
金色には光ってませんでした。お母さんが僕らに気がついて、
「あら、お兄ちゃんたちよ」と赤ちゃんに話しかけました。
僕らは何と言っていいかわからず、ペコッと礼をしただけなんですが、
お母さんは赤ちゃんに興味を持って見にきたと思ったようでした。
これ、さすがに「川の上に赤ちゃんがいて金色に光ってた」なんて言えませんよねえ。
赤ちゃんはピンクの帽子をかぶり、ベビー服は白に赤いイチゴの柄が入ってました。

僕が「女の子ですか?」と尋ねると、お母さんは、
「あ、そんな服着てるけど男の子なのよ。7ヶ月」と答え、妹が名前を聞くと、
「明人(あきと)」ということでした。
妹が足をさわると、赤ちゃん・・・明人くんは「あきゃあきゃあ」と笑い崩れました。
妹がさらに「洋服お下がりですか」と失礼なことを聞き、
お母さんは笑って「いえね、そういうわけじゃないんだけど、ちょっと事情があって、
女の子みたいなかっこうをさせてるの」と言いました。
それで、そのときは別れたんです。買い物を済ませて家に戻ってくると、
うちの母が起きだしていて、「あら、ご苦労さん。頭痛いのさっき治った。心配かけたわね」
って言ったんです。それから部屋に行って、さっき見たことを妹と話し合いました。
水の上をハイハイする金色の光を放つ赤ちゃん・・・やっぱりこのとおりでしたよ。

それから、時間帯が合わないせいか明人くんを見かけたことはなかったんですが、
1年後ですね。僕は中学生になっていて、夏休み中。台風が近づいていました。
中学生になったんで、部屋はアコーディオンカーテンで仕切って別々になってたんですが、
妹が僕のほうに走りこんできて、「窓、窓の外!!」って叫びました。
窓は妹側にあってカーテンを閉めてたはずですが、行ってみると、
カーテンが開いて、窓の外がぼうっと金色に光っていたんです。
ガラス戸の2mほど先に、宙に浮いて明人くんが立っていました。一目見ただけで、
前にあったことや名前を思い出したのは、あの光のせいかもしれません。
もう2歳近かったんでしょうけど、顔立ちは変わってませんでした。
だけど表情が険しかったんです。まゆの間にシワが寄って、
片手を、肩の上から前にしきりに動かしていました。

それからブルブル強く首を振って、また前のときのように、
ゴムひもで引っ張られるようにしてピュンと後ろに飛んでいってしまったんです。
「あ・・・お前覚えてるか?」 「明人くん・・・」
とにかく何かを訴えたがっていることはわかりました。
かなり風が強まってきてたので、これは台風に関係があることだと思ったんです。
明人くんのことは、両親には言いませんでした。信じてもられるとは思わなかったんです。
だから、風が強くて怖いからと言って、その夜は下で寝ることになったんです。
ええはい、あの記録的な台風のときでした。斜め向かいの家の2階の屋根が飛ばされて、
僕らの部屋に突っ込んできたんですよ。部屋はめちゃくちゃになって、
あのままいたら、死なないまでも大ケガをしていたでしょうね。
これが2つ目のエピソードですね。

その後も、街で明人くんを見ることはなかったんですが、2年後です。
僕は高校受験で塾に行った帰り、もう9時過ぎでしたね。
信号待ちで自転車を止めていると、横の電信柱が光るのがわかりました。
見ると、かなり高いところの横木の上に、幼稚園児くらいの子どもが立っていました。
明人くん、このときもすぐにわかりました。金色の光は柔らかく優しく、
明人くんはにこにこと笑いながら、僕に向かって手を振ったんです。
このときにね、なんとなく神社に行って手を合わせるときみたいな気持ちになりました。
いえ、自転車のハンドルを握っていたんで、実際に合掌はしませんでしたけど。
家に戻って部屋に行くと、妹がすぐに来て「また、明人くんが来た」と、
窓の外を指さしました。「お別れを言ってたんじゃないか」
ということで印象が一致したんです。まあこんな話ですが、後日談が二つあります。

一つは、職場の検診で母が人間ドックに入ったんです。そしたら、CTスキャンで、
頭部に腫瘍の跡が見つかりました。定期検診ではわからなかったんですね。
でも医者の話では、自然に小さくなって治癒した状態だし、
今後もまず問題ないだろうってことでした。これ、あの最初に明人くんに会った、
橋の上のとき、母がすごく頭痛がってたときのことなんじゃないでしょうか。
いや、治った時期はわからないようでしたけど、そうとしか思えないんです。
もう一つは、妹とは今は別々に暮らしてるんですが、メールが入ってて、
「◯◯という女性週刊誌を見ろ」ってことでした。さっそくコンビニで買ってきたら、
「今どきの神様」という特集があって、新興宗教の教祖様が紹介されていたんですが、
中に「明人師」というのも出てたんです。白い顔に神主装束をつけたあの明人くんでしたよ。
金色の光はなかったですが、間違いないです。






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