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にらまれる話

2019.04.24 (Wed)
あ、どうぞよろしくお願いします。では、話をしていきます。
私、ある地方都市の神社で神職の修行をしてるんです。
そこの神社は、それほど名前は知られてはいませんが、由緒はかなり古く、
全国のあちこちから神職の卵が修行に来ていて、私もその中の一人です。
はい、代々神職の家系で、父は別の県の神社で宮司を務めていて、
ゆくゆくは私が後を継ぐことになると思います。
それで、1ヶ月ばかり前のことです。修行をしている神社の、
先代の宮司様に、私たち修行中の3人が呼び出されたんです。
先代の宮司様は90歳近い高齢で、10年ほど前に引退して、
現在は山の麓にある別宅で暮らしておられます。
もちろん面識はありましたが、そうやって呼ばれたのは初めてのことです。

はい、私は先代様が引退されから派遣されてきましたので。
先代様は足腰も弱られてて、神社のほうに顔を出されることはなかったので、
急な呼び出しは何事かと思いました。行ってみると、
先代様は眺めのいい部屋のベッドに横になっておられまして、
その枕元にかしこまった私たちに、こんなお話をされたんです。
「おお、よく来たな。じつはお前たちにやってもらいたい仕事がある。
 これはお前たちの修行にもなることだよ」私たちがうなずくと、
先代様は続けて、「じつはな、市の別の神社の神主が、
 ここ2ヶ月の間に3人、立て続けに亡くなった。まあ、みな高齢だから、
 それほど不思議なわけでもないのだが、といって、
 病気で長く寝ついていたということもない」

「その3人とも、御奉仕中に急に倒れたんだ。心臓の発作らしい。
 しかし、心臓が悪かったということもないのだよ。それで不審に思っていたが、
 1周間前、4人目が出た。われわれの神社の分社を担当していた者だ。
 ただしまだ死んではいない。○○大学病院に入院して面会謝絶中なのだが、
 そこの教授とは懇意での、来てもらって話を聞いたら、
 意識はしっかりしているが、奇妙なことを口走っているそうだ」
「どんなことですか?」 「それがな、2つの目がこの市をにらんでいる、
 憎んでいると」 「目?」 「そう。どうやら事は急を要するようだ。
 医者の話では経過は順調で、来週には面会がかなうそうだから、
 まず病院に行って話を聞いてみることだな。本来ならこの仕事、
 息子にやらせるところだが、まだしばらくローマから帰れんから」

そのとき当代の宮司様は、世界宗教会議というのがあって、その実行委員の
一人としてイタリアに長期滞在中だったんです。私たちのうちの一人が、
「先代様には、何か心あたりはおありでしょうか?」こう質問をしました。
先代様は、何でもよく見通せる方ということでしたから。
そしたら、「うん、気になってることはないでもないが、確証は持てない。
 ただ、これ以上人死にが出ないよう、守りを固めるのはやっておく。
 あとはお前たちが頼むぞ」そうおっしゃられ、疲れたように
目を閉じられたんです。こうして、私たちの調査が始まりました。
翌週、大学病院に入院している神主の方にお会いしに行きました。
先代様のおっしゃっていたとおり、かなり回復されていて、
個室の病棟で面会してお話を聞くことができたんです。

開胸手術ではなく、カテーテル治療で回復されたということで、
もうご自分でトイレにも歩くことができていました。その方は50代で、
神主は本職ではなく、あちこちにある小さな神社を5つほど受け持って、
掃除をしたり、祭事を司っておられたんです。はい、そういう方がいないと、
地方の小さな神社やお堂は、あっという間に朽ち果ててしまいます。
こんなお話でした。「その日はね、仕事が休みだったから、
 朝から受け持ちの神社を回って、お賽銭を回収したり、
 境内の枯葉を掃いたりしてたんだよ。そうしたら、3社目のお堂を
 掃き清めているときに、背中に強い視線を感じたんだ。
 痛いくらいに、まじまじと見つめられている」
「それで?」 「ふり向くのが怖いように感じたんだけど、

 思い切って後ろを見ると、空にね、大きな目が2つあったんだよ」
「顔はなく、目だけってことですか?」 「そう、それもね、ものすごい
 憎しみに満ちた目で、はっきり私を憎んでるんだってことがわかった。
 ああ、恐ろしいと思ったときに、突然胸が痛くなって倒れてしまったんだ。
 そのお堂は町中にあって、ときおり参拝者があるんで、倒れている私を
 見つけて救急車を呼んでくださった。運が良かったんだよ」
「その目、何か特徴はありましたか?」 「わからないが、なんとなくだが、
 男の目じゃないかと思った、女じゃなく」 このとき、私が思いついたことを
聞いてみたんです。「境内のお掃除をされているときということでしたよね。
 その目、どちらの方角にあったんでしょうか?」
「ああ・・・ お堂の正面は東向きだから・・・北の方角だな」

長くなってはいけないと思い、お礼を言い、お見舞いを置いて病室を
後にしました。それから、3人でファミレスに入って作戦会議を開いたんです。
そのとき、乗ってた車に入れていた市の地図を持ち出して
広げてみました。お堂のある場所から北には、ずっと果樹園が広がっていて、
やがて山につきあたります。地図の上では特に原因となるものはないと思いました。
そのとき仲間の一人が、「あ、この山の上、たしか新興宗教の施設が
 あったんじゃないか」こう言い出しました。たしかにそういう話は聞いたことが
あります。ただ、その宗教団体は3年ほど前に解散し、施設は廃墟に
なっていたはずです。それと、その施設のある山は隣の市の区域に入るため、
地図はふもとまでで切れていたんです。仲間の一人が、
「ネットの地図で調べてみましょう」そう言ったので、

いったん社務所に戻りました。あ、神社にパソコンがあってネット回線が来てるなんて
変だと思われるかもしれませんが、今は、収入や支出を経理ソフトを使って
管理してるんです。これは大きいところはどこもそうだと思います。
社務所でその山をグーグルのソフトで見てみると、中腹に施設らしきものが
ありました。ついでにその宗教団体についても調べると、
やはり3年前、2代目の教祖が信者の拉致監禁、および詐欺の容疑で
逮捕されていることがわかったんです。そのときの警察の捜査には、
私たちの神社でも協力していました。「うーん、これは現地に行ってみるしかないな」
一人がそう言いました。翌日、私たちは朝からその山に入っていったんですが、
高さは800mほどで、宗教団体の施設までは舗装された道路があり、
車で行くことができました。はい、施設には特に立入防止の柵やロープなどはなく、

厳密には不法侵入でしょうが、中に入ることができたんです。
施設は外観も内部もお金をかけたつくりでしたが、柱が金色に塗られているなど、
俗で下品な感じがしました。調度類や神像のたぐいはほとんどなく、
教団解散のときに持ち出されたんだろうと思いました。印象は、
一言で言えばガラーンとした空白で、怪事の原因となるようなものは見あたら
なかったんです。車に戻ろうとしたときです。急にめまいがしました。
思わずしゃがみ込むと、他の2人も同じでした。そして、背中に強い視線を
感じたんです。そちらのほう、山の山頂方向に何かがあるんだとわかりました。
地面にふせるような姿勢で、3人で声を合わせて祝詞を唱えたんです。
厄払いに強い験力のあるものです。そうしているうち、
だんだんに息もおさまり、立ち上がることができるようになりました。

山頂方向に何かある。3人で相談しましたが、行くしかないと決まり、
道を探すと、宗教施設の後ろ側に、やや急な山頂に続く石段があったんです。
20分ほど登りましたが、その間、やはり上から強い視線が降り注いできました。
やがて、木を伐採してつくった直径20mほどの草地が
山頂のすぐ下にあり、そこに大きな・・・7mくらいある神像があったんです。
古代の装束が大理石に彫られてましたので、日本神話の神だと思いましたが、
正統な神道では神様の像はつくりません。像の顔は1mほどもあり、
鼻が長く、目を剥いて私たちの市のほうを見下ろしていました。
「これだ、この像が私たちを憎んで、にらんでいるんだ」3人ともすぐに
わかりました。像からは強い気が出ていて、見ると体の力が抜けていき、
近くに寄ることができなかったんです。「これは手に負えない」私がそう言い、

他の2人もうなずいて、ほうほうの体で山を下りたんですよ。
その後、わかったことを先代様に報告しました。先代様は「やはり」という
顔をなさり、「よくやった。後はまかせなさい」そうおっしゃって、
翌日から、全国の主だった神社の宮司様たちが私たちの市に集まって山に登り、
その神像を封印されたんです。これでだいたい話は終わりですが、
まだわからないことがありますよね。2代目教祖逮捕、教団解散から
3年もたって、なぜこんなことが起きたのか。でも、事情はすぐ判明しました。
逮捕されて公判中の教祖が、3ヶ月前に拘置所内で自殺していたんです。
ノートにはただ、「私にはまるで教祖としての力がない」とだけ書き残されていた
そうです。それから、封印され、解体された邪悪な像ですが、その内部から
人骨が見つかったんです。その教団の、初代の教祖のものだろうということでした。

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