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「アルケー」って何?

2019.04.28 (Sun)
今回はこういうお題でいきます。「アルケー」という語を聞かれた
ことがある方は少ないと思います。これは、古代ギリシアの自然哲学で
「万物の根源」を指しています。すべての自然を生み出す源、
世界をつくりだしている根源的な要素、と言っていいかもしれません。

さて、古代ギリシアからエーゲ海をはさんだ対岸(現在のトルコ)は、
イオニア地方と呼ばれ、ギリシア人の植民都市がありました。
ここでは、宇宙や生命の成り立ちを神話によらず説明しようとする
学問が生まれ、それを「イオニア学派」と言います。

イオニア学派を興したのは、タレスと言って前6世紀の人物です。
みなさんは中学生のときに、「半円に内接する角は直角である」
という定理を勉強されたと思います。これを考え出したのが
タレスであるとされています。また、天文学にも精通し、
日食が起きる期日を予言したとも言われます。

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で、このタレスがつくりだした概念がアルケーなんですね。
タレスは万物の根源であるアルケーは水だと考えました。たしかに、
人間の体のほとんどが水分ですので、この考え方は理解できます。
川や海、雨や雲など、自然界には水が満ち満ちています。

その他、ヘラクレイトスは火を、ピタゴラスは数をアルケーとしました。
また、デモクリトスは万物の根源として「アトモス」を考え、
これは「最小の単位にして、それ以上分割できないもの」という意味ですが、
現在使われている科学用語「原子 atom」の語源になっています。

ただ、だんだんにギリシア哲学が進むにつれて、
一つのものからすべてが生まれるという考え方には無理があるのではないか
という論が出てきました。例えば、水がアルケーだとして、
石などの鉱物には水は含まれていないように見えますよね。

エンペドクレス
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そこで出てきたのが「四大元素説」で、始めに提唱したのは、
前5世紀のエンペドクレスという人物です。
エンペドクレスが考えた四大元素は「水・火・土・空気(風)」でした。
彼はこれらの4つを「リゾーマタ rizomata」と呼び、
すべてのものは、この4つの結合と分離からできていると説明します。

ちなみに、みなさんの中には、ファンタジー小説で、火の精霊、水の精霊
などが出てくるものを読まれたことがある方がおられると思いますが、
あれも四大元素説をもとにして想像され、伝説化したものです。
四大元素説はギリシア時代に続く古代ローマ時代に受け継がれましたが、
キリスト教の登場でいったん下火になってしまいます。

古代ギリシアの四大元素説
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その理由はおわかりだと思います。キリスト教では、
万物の根源となるものは「神」なんですね。神がすべてを創り、定め、
支配する。ということで、ヨーロッパ地方は自然哲学にとっては
暗黒の時代になってしまいました。ですが、ギリシア・ローマ時代の
考え方はイスラム社会で継承され、独自の発展をとげます。

そしてその知識が、12世紀から始まる十字軍遠征によって
再発見されることになります。何度か記事に書いたんですが、
ヨーロッパで錬金術が盛んになるのは、この十字軍遠征以降なんですね。
錬金術は、卑金属から金をつくりだそうとするもので、
基本的に、四大元素説にしたがって実験が行われました。

アントワーヌ・ラヴォアジェ
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さて、それから長い年月がたち、はじめて四大元素説を否定したのは、
17世紀の化学者にして錬金術師、ロバート・ボイルであるとされます。
ボイルがいくら四大元素説にしたがって実験をくり返しても、
金はできなかったからです。18世紀に入ると、すべてのものは
「元素」から成り立っているということが、だんだんにわかってきました。

元素周期律表
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アントワーヌ・ラヴォアジェが、著書で33の元素と「質量保存の法則」
を発表したことが、錬金術の終焉、近代化学の始まりとされています。
そして、元素の実質は「原子」であると考えられるようになりましたが、
原子の存在が広く認められるようになったのは20世紀の初頭、
ちょうどアインシュタインが一般相対性理論を発表した頃です。

ということで、古代ギリシアの時代から、長い長い期間をかけて、
物質は原子からできているということが判明したわけです。
さらに、原子はもっと小さく分けることができるのではないかという
考えが出てきました。ただし、これには強い批判もあったんです。

みなさんは中学校で、原子は原子核の周囲を電子が回る構造を持つ
ことを学習しましたよね。そして、原子核はさらに、
素粒子の組み合わせからできていることが判明します。
クオークやレプトンなどのことです。では、素粒子をさらに分割した
最小単位があるのか。これは現在の科学ではわかっていません。

素粒子からできている原子核
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超ひも理論では、素粒子は振動するひもとして説明されますが、
そのひもが万物の最終単位であると言っているわけではありません。
万物の最終的な単位があるのかどうか、
プランク長という限界があるので、なんとも言えないんです。

さてさて、では、素粒子はいったいどうやってできたんでしょう。
これは、特異点から始まったとされるビッグバン直後のごくごく短い時間に
できたと考えられます。そうすると、万物の根源である「アルケー」は、
物質ではなくビッグバンだったと考えたほうがいいのかもしれません。
では、今回はこのへんで。




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