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アーカイブ 秘密

2019.04.29 (Mon)
中学校3年のときの話だよ。俺は中高一貫校に行ってて、だから受験もなくて、
部活は引退してたから、毎日放課後は仲間と遊び暮らしてたんだ。
でな、その日、同じクラスのやつが2人俺んちに来たんだよ。親は留守だった。
一人は松井っていう部活のときの仲間で、もう一人は滋賀っていうやつだった。
この滋賀は夏休み後に転校して来たんだよ。
だから友だちもいなくて寂しいだろうってんで、その頃たまに誘ってたんだ。
で、3人で俺の部屋に入ったけど、やることはゲームしかねえ。
あとはマンガ読んだりとか、勝手にバラバラにしてたな。
今のガキだってそんなもんだろ。そのうち1時間くらいたって、
なんだか腹が減ってきたんだよ。それで2人に、
ポテチとジュース買いにコンビニ行かないかって誘ったんだ。

そしたら松井は行くって言ったけど、
滋賀は「ゲーム、今、いいとこだから」って
コントローラー離さなかったんだよ。それで2人でコンビニ行ったわけ。
ああそれで、俺んちはその頃、犬飼ってたんだよ。トイプードル。
おとなしいけど人懐っこいやつで、名前はジョンっていった。
で、俺もそれなりにかわいがってたんだ。そいつが部屋の中にいたけど、
滋賀と残して、コンビニに行ってきたんだ。
そしたら家に入った階段のところで、
ジョンがギャンギャン鳴く声が聞こえてきてな。
そんな声出すことはなかったんで、小走りに部屋に入ったら、
滋賀が小さな犬の上に馬乗りになって、両手で首絞めてたんだ。

「あ、おい何してる! やめろ!」俺はあわてて滋賀の背中に飛びつき、
後ろから手をつかんでジョンから引き離したんだ。
「何だよ! 何やってるんだ、ジョンが噛んだのか?」滋賀にそう聞いたら、
やつは息をはずませながら、
「今よう、この犬しゃべったんだ。それも俺の大事な秘密を」
こんなことを言い出した。でも、犬がしゃべるわけないだろ。
それで、滋賀はゲームのやりすぎで錯乱したんだと思うことにした。
で、その場は白けた感じになって、遊ぶのをやめて解散したんだよ。
ああ、ジョンは大事なかった。2時間くらいは喉のあたりを気にしてたけど、
夜になった頃には普通に戻ってたな。ああもちろん、
ジョンがしゃべったりすることはなかったよ。

これがあって、俺も松井も、滋賀とは遊ばなくなったんだ。
そうすると学校に友だちはいないから、いつも一人でいるようになった。
それから1ヶ月くらいたって、
俺が一人で帰ってたら道の前のほうに滋賀がいて、
横の塀を向いてなんか大声を出してたんだ。
「こら、しゃべるな。俺らの秘密をなんでしゃべるんだよ!!」って。
それでジョンのときのことを思い出したんだが、滋賀の目線の先の塀の上に、
ノラ猫が一匹いたんだよ。猫に向かって怒鳴ってるとしか見えなかった。
そうしてるうちに、滋賀は塀に走り寄って猫のしっぽをつかもうとし、
猫は向こう側に飛び降りて逃げってたんだよ。
それで「ああ、こいつはやっぱ危ないやつなんだな」って思って、

俺はその場から離れて道を変えた。動物が話をするわけはねえし、
だいいち、滋賀の秘密ってのがあるとして、
犬や猫がそんなことを知ってるはずもねえしな。
それから10日くらいして、滋賀は学校に来なくなった。
不登校になったんだよ。やっぱ精神を病んでたんだな、
くらいにしか思わなかったけど。
で、さらに2ヶ月ほどたって、次の年に入ったころ、
友だちから滋賀の噂を聞いたんだよ。あいつ猫殺しをしてるみたいだって。
そいつは滋賀の家族が入ってる市営住宅の近くに住んでたんだが、
日曜日に、滋賀が団地と団地の間のせまい通路で、
高価そうな金網のワナで猫をとってるのを見たんだ。

で、金網に入った猫を布袋に移して、猫が暴れるのもかまわず、
袋ごと何度も団地の壁に何度も叩きつけ、だんだん袋が赤く染まっていって・・・
それ以外にも、これは殺してるとこを直接見たわけじゃないけど、
そいつの家のまわりで猫のむごたらしい死体をよく見かけるようになり、
これもやっぱ、滋賀がやってるんだろうと思うって言ってたな。
え、滋賀の家族? いや、わかんねえけど、
両親はそろってたと思う。でも、市営住宅に入ってるんだから、
たいした仕事はしてなかっただろ。
でな、3月になって、もうすぐ中学は卒業ってときに事件は起きたんだ。
ホームルームで帰りの会をしてるときに、突然滋賀が入ってきて、
担任を押しのけて、教壇の前でしゃべりはじめたんだよ。

泣くようなかすれた声だったけど、何を言ってるかはわかった。
「俺と家族の秘密を知ってる犬猫がこの町でも100匹をこえた。
 秘密を知ってる犬猫が100匹をこせば人間にもばれてしまう。
 そうすればまた転校だ。こんなのは俺はもう嫌だ」
だいたいこんな内容だったな。で、滋賀はスタスタ窓のほうに近寄っていき、
サッシを開けてベランダに出ると、
あっさり手すりを乗りこえて飛び降りたんだよ。
ああ、担任もとめる隙がなかった。すぐに下でゴッツンみたいな音がしてな・・・
教室は3階だったけど、滋賀はプールの飛び込みみたいに頭から落ちたから、
助からなかった。ほぼ即死に近かったみたいだ。
それで学校中大混乱になって、警察や救急車も来たんだよ。

それで、その夜のことだよ。
夕食のときに俺が学校であったことを話したんだよ。
そのときにはソファの上にジョンもいた。
母親は他の保護者から電話がきたみたいで滋賀の自殺のことを知ってたけど、
父親のほうはかなり驚いてたな。
俺は「お前も悩みがあったら一人で困ってないで誰かに相談するんだぞ」
みたいなことを言われて、夕食を済ませて自分の部屋に行った。
んで、ベッドに寝転んでマンガを読もうとした。
したら、いつのまにかジョンが部屋に入ってて、
ベッドの俺の足元によっこらせと登ってきた。
いつものことだから、そのままにしてマンガを読み続けたら不意に、

「死んだのか、あんな秘密を持ってりゃ当然だな」こんな声が聞こえた。
なんかアニメの声優がやってるようなかわいらしい声だった。
「えっ!」思わずマンガ本をとり落としてそっち見たら、
きょとんとした顔でジョンがいるだけだったんだよ。
「え? え? 今しゃべったのお前か?」
けど、ジョンは舌を出して、甘えたそうな顔をしてるだけでな・・・
ああ、それからは1度もジョンがしゃべるのを聞いたことはねえよ。
だから俺の聞き間違いだったと思うしかないんだが・・・
ジョンはそれから10年以上生きて死んだよ。でなあ、やっぱ気になるだろ。
滋賀の言ってた秘密ってやつ。もし、もし本当にそういうのがあったんだとしたら、
いったいどんなことだったんだろうな・・・って。




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