FC2ブログ

アーカイブ 罰

2019.04.29 (Mon)
昨年の夏にダチと3人で海に行ってからの話。
目的はナンパで、昼の浜では仲良くなった地元の女の子たちもいたが、
怒らせてしまって関係を夜まで持ち込めなかったんでその点は失敗。
まあ面白かったからそれはそれでいいんだが、ちょっと妙なことになった。
ダチの一人の山本が、翌日デジカメを大学に持ってきて、
海で撮った画像をパソコンにつないで見せてくれた。
女の子と一緒に写ってるやつなんかをスライドショーでずらずらと見てたら、
翌朝、帰り際に車の前で撮ったのがお終いのほうで出てきた。
それを指さして山本がこんなことを言い出した。
「その一番最後のやつ変だと思わねえか」 「えっ、何が?」
最後の画像は乗ってきた、ダチのもう一人の西田ってやつの車の前で
3人並んで写ってる画像だ。

「だってこのとき俺ら3人しかいなかったよな。これいったい誰が撮ったんだ?」
「あれ、そうだな・・・撮影を頼んだなんてことはないな、確かに」
「だろ、不思議なんだよ」その画像の前は、2人ずつ車を前にして写ってる数枚で、
これは交替して撮ったから何の不思議もない。
つい昨日のことなんで、こんな画像があるはずがないというのは納得がいった。
「それともう一つ、変なところがあるんだよ。西田の右膝を見てみろ、何に見える?」
そう言われて短パンから出ている膝の部分を見ると、人の顔のようなものが浮き出ていた。
ぼんやりとだが、2つの目と口らしいのが膝の上にある。
「あー顔か、顔に見えるといえば見える」
「やっぱりそうか。これ心霊写真だよな。しかも写真の存在自体がオカルトだ」
「早く西田こねえかな。あいつこういうの好きだから見せてやれば喜ぶだろ」

ところが西田はその日大学に来なかった。
画像に写っているエクストレイルで事故ったんだ。
あちこちケガしたが、一番ひどいのは右膝の皿が砕けたことで、
完治は難しいらしかった。数日後、山本と病院に見舞いに行ったが、
あの画像のことはよけいな心配をかけるだろうと黙っていることに2人で決めた。
画像は加工ソフトにかけて調べてみると言って山本が持って帰っていた。
その夜に山本のアパートを訪れると、
ちょうど加工ソフトであれこれやっているところだったが、
俺の顔を見るなり「変だ、おかしいよこの画像」と興奮した口調でまくしたてた。

話によると、まずExifを調べたのだそうだ。俺はあまり詳しくないが、
Exifというのは自動的に記録される画像のデータで、
撮影の日時や使ったカメラの機種などがわかるらしい。
それによれば間違いなくあの日民宿の駐車場で撮ったもの、ということだった。
「それはいいんだけど、これ見ろよ」と山本がカーソルで
さしたところは俺の右肘だった。

顔がある、と思った。前に見たときにどうだったかは覚えてないが、
肘の内側には西田の膝にあるのと同じような顔が浮かんでいた。
しかも膝にあるのより鮮明になっている気がした。
「うーん・・・顔だよな・・・、前にもあったっけ」
「なかった気がするんだよな。これ西田のやつよりはっきり顔っぽいだろ。
こんなのがあればぜったい気づいたと思うんだよ」
「そうだ、元のデジカメのデータがあるだろ。そっちはどうなんだ?」
「それもさっき見た。やっぱり肘のところに顔がある」
「うーん」 「それより、この顔見覚えないか?」 
「え?」 山本は俺の肘の部分を拡大した。それにつれて顔も大きくなったが、
生きた人間の顔とは思えない。絵か彫刻みたいだった。
「あ、もしかして」俺は言った。

「気がついたか。これってあの海蝕洞穴の奥にあった仏像の顔に似てるだろ」
そうだった。ナンパした地元の女の子たちに案内されて、
岩が巨大なアーチ状になってるのをくぐって洞穴に入っていったんだった。
洞穴は観光地ではないらしく整備もされておらず、
20mほど入ると急にせまくなって注連縄が張られていた。
その先にはいっちゃけないと女の子たちが止めたのもきかず、
俺ら3人はくぐっていったんだっけ。奥はすぐ行き止まりになってて、
岩に仏像が彫られていた。前に平たい石の祭壇にロウソクのロウが流れた跡が
たくさんあった。その仏像の顔に、画像の顔はよく似ている気がした。
「ああ、そうだ。お前あの仏像も写真に撮ったんだよな。その画像ってあるんだろ」
「それが、いくら探してもないんだよ。撮影の枚数は合ってるから、
仏像の画像の代わりに3人が写ってるのが入ってるんだとしか考えられない」

・・・フラッシュで内部の写真を撮ったことがわかって、
怒った女の子たちと別れたんだ。「なんだよ、
 入れないんだったら、案内とかするなよ」そう文句を言ったんだっけ。
「お前、西田のこともあるし右肘、気をつけたほうがいいぞ」
「偶然だとお思うけどな・・・もちろん注意はするよ」こんなやりとりをして帰った。
また数日後、サッカーの試合で右肘を骨折した。
俺はサッカー部だが、部そのものはろくに練習もしていない弱小チームで、
その試合でケガをした。別に接触プレイもなにもなく、
ただ走っていてパタリと転び、軽く手をついただけなのにポキリと折れてしまったんだ。
幸い手術の必要はなく、その日入院するだけで済んだ。
次の日、休んでいる俺の家に山本がケガをした俺より青い顔をして現れた。

「やっぱり肘やっちまったな。たいしたことがなくてよかったが」
「こうなるとあの写真のせいとしか考えられないか・・・
 仏像の祟りと言えばいいのか。写真はどうなった?」
「それが・・・増えてるんだよ、顔が」山本がデジカメのモニター画像を見せた。
山本の顔の真上に仏像の顔が出ていた。それはこれまでよりもずっと鮮明で、
記憶は薄れているものの洞穴の仏像に違いないように思われた。
こうなると祟りとしか思えなくなった。
「これは・・・前には絶対になかったな。おい、顔はヤバイんじゃないか」そう言うと、
「もう一度あの浜辺に行って、謝ってこようと思ってるんだ」

その週の土曜日、山本と2人であの洞穴に行った。
2人とも車も免許も持ってないんで、電車とタクシーを乗り継いだ
金のかかる旅になった。駅の観光案内所で海岸の洞穴について聞いてみたが、
存在は知っていたけど、詳しいいわれを知る人はいなかった。
その土地近辺だけで信じられているもののようだった。
よくわからなかったんで、おわびの品として酒と5kg入の米の袋、菓子などを買ったが
これで許してもらえるのかどうか・・・大潮の時間が近いんで、
洞穴に急ぐと9月に入った浜は人気がなかった。
注連縄が真新しいのに変えられていた。「これ俺達のせいかな」山本が言った。

かなり躊躇したが注連縄をまたぎ越えて奥に進むと仏像があった。
あのときと同じ顔だし、画像に写っているのもこれだと確信を持った。
祭壇の石の上に酒と米などをお供えし、あとは手を合わせて祈った。
「この間は申しわけありませんでした。お許しください」これを心の中で何度もくり返した。
20分は像の前にいたが、特に変わったことは起きない。
オカルト的なことの渦中にいると、次々と不思議なことが起きるような気がしてくるが、
仏像がうなずくとか、お供えがカタカタ揺れるということもない。
最後に一礼して洞穴を出た。なんとなく説教が済んで解放されたような気分だった。
それから携帯でタクシーを呼んだが、そのタクシーが事故った。
なんと自衛隊の大型車両に追突されたんだ。
俺は骨折していた右手をさらに痛めて切断することになり、
山本は車外に投げ出されてほぼ即死だった。頭が割れて顔が潰れていた。




関連記事
スポンサーサイト




トラックバックURL
http://scoby.blog.fc2.com/tb.php/1926-e1d8396a
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する