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中国の話 2題

2019.05.03 (Fri)
自分(bigbossman)は大学で考古学を専攻しまして、学生時代、
何度か中国で遺跡の発掘を手伝ったことがあります。
中国の田舎のほうは遺跡の宝庫で、そこらの畑をちょっと掘れば、
さまざまな時代が重なった複合遺跡が出てきます。
秦の始皇帝の兵馬俑は世界的に有名になりましたが、ああいうものが
どこに眠ってるかわからないんですね。中国の遺跡の特徴としては、
文字が書かれた遺物の出土が珍しくないことです。
漢字は古くからありましたので、墓誌や木簡、文字の書かれた磚
(せん タイルのようなもの)などが出てきて、
時代や遺跡の性質がはっきりわかる場合が多いんです。
ただ残念なことに、あまりに遺跡の数が多いのに対し、

発掘に熟練した考古学者が少ないせいで、保存がままなりません。
さらに盗掘も多いんですね。貴重な人類の遺産が多数失われてしまって
いる現状です。その学生時代に、現在は中国社会科学院の若手研究者と
なっているKさんという方と知り合いになりまして、
年に1回以上、中国に招待していただいています。
自分は中国語はほとんどできないんですが、Kさんは日本語ペラペラで、
いつもいろいろと興味深い場所に案内していただいているんです。
それは一般的な観光地ではなく、じつに不思議な体験をさせてもらいました。
今回は、そのうちの2つの話をご紹介させていただきますが、
なにぶん全体主義の国ですので、はっきり書けないこともあります。
具体的な場所や人名はボカさせていただきます。

笑う囲碁
Kさんと北京の空港でお会いしまして、その後、いっしょに飛行機で
中国南部に向かいました。揚子江上流の発掘現場を見せて
いただいたんです。それも大変に興味深いことでしたが、
専門的になりますので割愛させていただきます。
で、その日の夜、遺跡のある村に宿泊したんですが、
そこにはホテルなどはなく、現地の有力者の方の家にお世話になった
んですね。たいへん歓待していただいたんですが、
その家の主人に、「bigbossmanさん、囲碁はおできになりますか?」
こう聞かれました。自分はかろうじてルールを知っているくらいで、
実戦はまったく弱いので、そう答えると、
「ああ、ルールを知っておられるなら大丈夫です。

 うちの村には囲碁の名人がおりますので、夕食前につれてきます。
 どうです、1度対局されてみては」でも、相手が名人なら、
自分は井目(囲碁のハンデ)置いても勝負にならないと言ったんですが、
「まあまあ」ということで、その名人とお会いしたんです。
名人は70歳は確実に超えていたと思います。100歳と言われても
おかしくないような老人で、顔には深いシワが何層にも刻まれ、
長く白いあごひげを伸ばしていました。まるで中国の仙画の人物みたい
だったんです。立派な碁盤が持ち出されて対局となったんですが、
自分が大変弱いことを通訳してもらいました。
そしたら、名人はニコリともせず何か言い、「囲碁は勝負ではない。
 今回はあなたを笑わせてあげよう」こういう内容だったんですね。

わけがわからないまま、自分が先手で対局が始まりました。
ハンデはなしです。で、後手の名人は二手目に天元(碁盤の真ん中)に打ち、
その後の着手も変だったんですね。こっちの手とまるで関係のないところに
バラバラに白石を置いていく。その間、自分は隅のほうを囲ってたんですが、
だんだんに名人の着手の意味がわかってきました。
これは自分が占星術をやっているせいで、名人が並べているのは、
どうやら中国の古い天文図の星座らしいと理解できたんです。
30手ほど進んだとき、名人が白石を二本の指にはさみ、
自分に見せつけるように目の前にかざすと、ある位置にチョーンと打ちました。
そしたら、特別おかしいこともないのに、自分はいきなり笑いだして、
それが止まらなくなってしまったんです。

いや、苦しいなんてもんじゃなかったです。最初のうちは口に手をあてて
たんですが、「ぎゃはははは」と声が出て、とにかく笑って笑って、
座ってられなくなり、碁盤の脇に倒れて転げながら笑いました。
息ができなくなり、もうやめてくれと手を振ったんです。
すると名人がザッと碁盤の上を手で払って石を崩しました。
そしたらもうおかしくないんですね。今まで転げ回って笑ってたのが
嘘みたいに治まったんです。これは不思議でした。その後、酒宴となり、
名人は夜半に一人で帰っていきました。後になって、
Kさんに「あれは何だったんですか」と聞くと、Kさんは真面目な顔で、
「石の配置によって人の心を操る、古くからある術だということです。
 その昔は、暗殺などにも使われていたという」こう答えられたんですよ。

長寿の村
これは5年ほど前だったと思います。やはりKさんに、中国の南の
国境付近にある村に案内してもらいました。そこは長寿の村として知られていて、
100歳を超える人がごろごろいるということでした。
中国の平均寿命は日本よりも短いですし、何か特別な健康法や食べ物などが
あるのかと興味を持ちました。空港から車で何時間もかけて行ってみると、
産業もないひじょうに貧しい農村なんですが、
たしかに高齢の人が多かったんです。Kさんは、
「この村の平均寿命は87歳と判明しています。中央政府がさまざまな
 調査をしたんですが、その原因ははっきりとはわかりません。
 他の村と特別変わってる点はないんですが、ただ・・・・
 この村ではまだ水道設備が整っておらず、井戸を掘っても水が出ないため、
 
 林の中にある湖から飲料水をくんでいるんです」
「ははあ、その水に何か有効成分があるんですか」 「いや、それが、
 分析しても、何の変哲もないただの水なんです」 「うーん」
「ですが、不思議な事はないわけじゃなくて。明日の朝、その湖を見に行きましょう」
こう言われ、翌朝4時ころに起きて、ちょっとした山登りをしたんですね。
「湖に行くんじゃないですか」 「いや、高いところから見ると
 わかりやすいですから」ということで、100mないくらいですかね、
小高い丘に登りまして、木の間から見下ろすと、さしわたし500mくらいの、
池と言ったほうがいいような小さな湖が黒く見えました。「もうすぐです」
やがて朝日がさしてきて湖水が一瞬透明になり、水の中に、
たくさんの塔を持った建物が見えたんです。その間を大きな魚が泳いでました。

「えっ、あれは?」 「わかりません。寺院のように思えますが、
 仏教でも道教の建築でもありません。いつの時代のものかも不明です」
自分が見たかぎりでも、中国建築のようには思えませんでした。
あえて言うなら、インドのヒンズー教の寺院に似てたかもしれません。
「あれ、発掘調査しないんですか」 「水中ですから、なかなか難しいですが、
 計画はあります。ただ、そのためには湖の水を抜かなくてはならないので、
 反対もあるんですよ」 「どうしてですか?」
「ほら、あそこに舗装された道が見えるでしょう。この湖の水は、
 汲み上げられてトラックと飛行機で輸送されています。
 党の要人に配布されてるんです」 「・・・」
そのうちに陽は上りきり、湖面が光って水中の建物は見えなくなったんです。





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