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うちの金魚水槽の話

2019.05.06 (Mon)
こんばんは、じゃあ話をさせていただきますけど、
そんな怖い内容でもないんですよ。まあ、それでよろしければってことで。
今から10年ほど前になるんですが、うちで金魚の水槽を
やってましてね。玄関先に、60cmワイド水槽ってのを置いてたんです。
あ、最初はね、もっと小さい水槽でした。よくありがちな
ことだと思うんですが、当時9歳だった息子と夏祭りに行きまして、
そこで金魚すくいをやってね、赤い金魚を1匹とったんです。
小赤って言うんですか、全身真っ赤な和金の小さいやつ。
ええ、ホームセンターに行けば1匹30円くらいで売ってます。
で、とったはいいんですけど、うちには水槽がなくて。
それで、安いプラケースとブクブク、あと餌を買ってきまして。

でも、それ設置してたのは2ヶ月ほどでした。金魚ってすぐに
大きくなるんですよね。餌をやってたのは息子ですが、
泳ぐスペースがなくなってかわいそうだったんで、60cmの水槽を
買ったんです。で、そのとき、ついでというか、何匹か金魚を買い足したんです。
いや、買ったのがホムセンですから、高いのはおりません。
1匹300円くらいの琉金てやつが2匹と、丹頂というのが2匹。
丹頂は丹頂鶴からきてるんでしょうね。全身が白で頭のてっぺんだけ赤い。
で、底に砂を敷いて水草も入れて。ただ、水草はすぐに金魚たちに
食い散らかされてしまうんですけど。それでも、前よりぐんと
見栄えがよくなって、わたし自身、金魚の飼育が面白くなってきたんです。
それで、インターネットであれこれ調べましたら、

夏場は金魚を外で飼ったほうが大きくなるし、色も鮮やかになる。
そういう記事を見ましたので、いったん水を抜いてせまい庭に
水槽を持ち出したんです。はい、ネットの記事では、外飼いする場合は
濾過器のブクブクはいらないみたいなんですね。
青水といって、外の日光で植物プランクトンが発生して水が緑色になる。
で、金魚はそれを食べながら育ってぐんと大きくなるって。
また、植物プランクトンは光合成をして酸素を出すので、
金魚は酸欠にならないっていう。たしかにそのとおりだったんですが・・・
水槽を設置してるとき、「ああ、金魚ですか」って、
垣根越しに声をかけられたんです。見ると、面識のないおじいさんでした。
「外で飼うと、金魚は大きくなるよ。だけど、そのままだと、

 ノラ猫や鳥にとられてしまうかもしれんなあ」ああ、なるほどと
思いました。おじいさんは続けて、「この小赤、いいねえ、どこにでもいる
 金魚だと思うかもしれんが、これは美人さんだよ。ぜひにもうちの息子の
 嫁にほしいねえ」って。意味がわからなかったので、
聞き返そうと思ったら、おじいさんはもうかなり離れたところまで
歩き去ってしまってたんです。で、よくわからないながらも、
水槽には蓋をして、上に重しの小石を乗っけておきました。
それから、1ヶ月くらいは特に何事もなかったんです。
毎日朝起きて、まだ暑くならないうちに金魚の餌をやるんです。
息子は早起きが苦手でしたので、それがわたしの日課になりました。
で、あれは8月が終わる頃のことですねえ。

朝起きて庭に出たら、水槽の水が黒く濁ってたんですよ。
真っ黒ってわけじゃなく、墨を中に垂らしたみたいに黒い色が
煙のように渦巻いてたんです。「何だ?」と思いまして近寄ってみたら、
その黒い色がぐるぐると動いてたんです。はい、水槽にはフィルターは
入れてないので水が動くはずはありません。
おかしいなあと思って、水槽に手をかけて少し動かしてみたんです。
そしたら、黒い色は急に一ヶ所に集まって、人の顔になったんですよ。
うーん、そのときはびっくりして尻餅をついてしまい、
よく見ることができなかったんですが、男の顔じゃなかったかと
思います。でも、顔のように見えたのは一瞬だけで、
すぐに消えて、水は透明というか、いつもの青水に戻ってたんです。

いや、そのときは、わたしが寝ぼけてて幻覚を見たんだろうと
考えました。それでも気持ちが悪かったので、水を換えてから水槽を家の中に
戻したんです。金魚は全部元気でした。最初に入れた小赤も他の金魚も。
まあ、そんなことがありましたが、それ以後ずっと何もなかったので、
わたしも忘れてしまってたんです。で、その年が終わって、
翌年のことです。息子はスポーツ少年団に入ったので、
金魚の世話は完全にわたしの担当になりました。といっても、毎朝の餌やりと
月イチの水換えくらいですから、そんな手間でもなかったんですが。
ある晩ですね。仕事から帰ってきたら、妻が変なことを言ったんです。
「今日の午後ね、黒いスーツを着た人が家を訪ねてきて、
 さゆりさんを嫁にほしい、って言うんですよ。
 
 うちにさゆりなんてそんな人はいません、そう言って帰ってもらったんですけど、
 気味が悪くて」変な話だなあと思いました。うちは4人家族なんです。
わたしたち夫婦と一人息子、それと当時60代のわたしの父親、
母親の方ほうは数年前に病気で亡くなってまして、さゆりなんて
女の子は当然いません。ですから、家を間違えたんだろうくらいに思ったんです。
「もしまた来たら、警察に連絡しますって言っとけ」そう妻には話しておきました。
で、その週の日曜日です。休みで午後ゆっくりしてましたら、
玄関のチャイムが鳴ったんで行って戸を開けると、上下黒いスーツを来た男が
手に花束を持って立ってまして。私の顔を見るなり「あ、お父さんですか、
 さゆりさんを嫁にもらいに来ました」って言ったんです。
妻が言ってたのはこいつのことなんだな、って思いました。

それで、「家を間違えてるんじゃないですか。うちにはさゆりなんて、
 女の子はいませんよ」やや語気を強めてそう言いました。そしたら、
「いや、いるじゃないですか、そこに」そう言って玄関先の水槽を
指さしたんです。あ、これはおかしい人だって思ったんです。ですから、
「何言ってんのあんた、それ、金魚じゃないか。変なことを言うと
 警察に連絡するよ」そしたらその男は下を向いて、
「警察かあ、それは困るなあ。わかりました、今日のところは帰りますよ」
小さい声でそう言って、水槽のほうに手を振りながら出ていったんです。
その後、警察には連絡しました。不審者が近くをうろついてるみたいだって。
すぐに来て話を聞いてくれました。それだけだと犯罪にはならないが、
パトロールを強化しましょうってことで。

それでね、もう男は来なくなったんですが、その男の顔がどうにも
印象に残ってなかったんです。若いような年寄りのような。太ってたような、
そうでもないような。妻も男の顔を見てたんで話し合ったんですが、
ヒゲがあるような気がした、なんて言ってましたね。あ、あと、
うちの金魚に名前をつけてたなんてことはありませんよ。
わたしには雄か雌かもよくわかりませんし、さゆりなんて名前をつけるわけが
ないです。それからね、2年くらいは何事もなかったんです。
金魚のほうは1匹も死ぬことはなく、どんどん大きくなっていって、
小赤は20cmを超えて、水槽が手ぜまに見えてきました。
それで、90cm水槽に買い換えようかなんて話を妻としてたんです。
で、息子が中学校に入学した年ですね。

5月だったと思います。夜遅く、10時頃に玄関のチャイムが鳴りまして。
こんな時間に誰だろうと思って出てみましたら、さっき話した黒スーツの
男でした。ただ、スーツは雨風に打たれたようにボロボロになって、
なんか嫌な臭いがしたんです。「あんたねえ、また来たのか、警察呼ぶよ」
そう言いましたら、「いや、もういいんです。私は病気でもうすぐ死にますから、
 さゆりさんにお別れを言いに来たんです」そう言って、
金魚の水槽に顔をつけて、5分ほどそうしてから帰っていったんです。
その間、わたしはなんかね、その男がかわいそうな気持ちになってしまって、
黙って見てたんです。で、その翌朝ですね。しっかり戸締まりしてたのに、
水槽の前で30cm以上になるナマズが干からびて死んでたんですよ。
でね、すっかり大きくなった小赤が、ガラスに近づいてずっとそれを見てました。





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