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「アーサー王伝説」について

2019.05.20 (Mon)


これ、昨日の続きみたいな内容ですが、たぶん、焦点の定まらない
散漫な記事になると予想されます(笑)。スルー推奨かもしれません。
じつは自分は、学生時代から「アーサー王伝説」について興味を持っていまして。
これは、伝説そのものに対してではなく、「アーサー王伝説」が、
イギリスの史学界で、どうあつかわれるかについてです。

ずっと、アーサー王は実在の人物かどうかという論争があったんですね。
アーサーは、もし実在したとすれば、6世紀初めころ、ブリトン人を率いて、
サクソン人の侵攻を何度か撃退した人物とされます。ただし、
彼の名が出てくるのは9・10世紀ころの文献で、それもごく断片的な内容です。

アーサー王


そこには、アーサーがブリテン島の王だったとも書かれていないし、
戦闘も、倒した敵兵が数百人と、大規模といえるものではありません。
つまり、もし仮に実在だったとしても、せいぜいが地方豪族の長 程度、
歴史に名を残すほどの大人物だった、というわけじゃなさそうなんですね。

ですから、現在のイギリス史に、アーサーの名が公的に出てくることは
ほとんどありません。ただ、一方で、アーサーがブリテン島の歴史上、
大きな役割を果たしたと考える人たちもそれなりにいて、
アヴァロン島(おそらく現在のグラストンベリー)で、
アーサーの墓を発見したなどという話題が定期的に出てきます。

このあたりは、自説にこだわりを持っている人が多い、
日本の邪馬台国論争と共通する面もあります。イギリス人にとって、
アーサー王伝説は、歴史上のロマンをかきたてられる存在なわけです。
ですから、いつまでたっても論争が収まらないんですね。

さて、アーサー王伝説が広まったのは、一つには、中世における騎士道物語の
隆盛があげられるでしょう。騎士道物語は、吟遊詩人によって
11世紀ころから広められはじめましたが、
内容は、旅する騎士が、立ち寄った地の貴婦人の願いで
ドラゴンなどを退治するという類型的なものです。

これが、当時の人々にすごくウケまして、次から次へと同じような物語が
つくり出されました。現在の日本のラノベで、異世界ものが流行るのと、
やや似てるかもしれません。17世紀になって、ミゲル・デ・セルバンテスにより、
騎士道物語の滑稽なパロディ、『ドン・キホーテ』が発表され、

『ドン・キホーテ』


この頃から、やっと下火になっていったんですね。
で、この騎士道物語の隆盛した期間中、王妃グイネヴィア、魔術師マーリン、
魔法の円卓と騎士たち、湖の乙女、愛剣エクスカリバーと、
アーサー王伝説の小道具がそろっていきます。

次にあげられるのは、キリスト教の影響です。イギリスは島国だったこともあり、
キリスト教の受容は遅れましたが、アーサー王伝説では、
円卓の上に聖杯(キリストが最後の晩餐で用いたもの)が現れて消え、
騎士たちは、それぞれ聖杯探しの旅に出ることになります。
ただ、もしアーサーが実在の人物であったとすれば、皮肉なことに、
おそらくドルイドなど、ケルト系土着宗教の教徒だったと考えられるんですね。

円卓の騎士


さて、やっとエクスカリバーの話にたどりつきました。英文検索で出てきた
画像を見るかぎり、騎馬で用いる片手剣のようです。
森の中に、石(あるいは鉄床)に刺さった剣があり、石には、
「これを抜くことができたものは、ブリテンの真の王となる」と、
金の文字で書かれていました。並みいる勇士が挑戦したものの、誰も抜けない。

それをやすやすと引き抜いたのが、若き日のアーサーだったんですね。
この剣は、エクスカリバーだったとも、違うとも言われています。
鞘から抜くと、松明数十本ぶんの光を発して敵の軍勢の目をくらます力があり、
アーサーは連戦連勝することができましたが、
あるとき、強力な敵との戦いで折れてしまいます。

失意のアーサーが舟で湖を渡っていると、水の中から乙女の腕が出てきて、
新たな剣を授けられます。こちらは間違いなくエクスカリバーです。
剣自体には特殊な力はないものの、鞘には魔力が込められてあり、
それを持つ者の体からは一滴の血も流れないという、身を護る力を持っていました。



しかし、物語の終盤、剣の鞘は悪い魔女の手によってすり替えられ、
アーサーは命を落とすことになります。エクスカリバーは、
死を悟ったアーサーの命で、騎士の一人により湖に持っていかれ、
湖面から出てきた手に返されることになります。この湖の場所にも諸説があります。

さてさて、最後に、昨年、イギリスのドーズマリープールという湖で、
「7歳の少女が、エクスカリバーと思しき大きな剣を発見した」というニュースが
報じられました。(下図)たしかにそこはアーサー王伝説の残る場所ですが、
考古学的には、6世紀の鉄剣が水中で現代まで残っているというは考えにくいです。

はたして、剣は30年ほど前のもので、形式はドイツの両手剣。
少しうんちくを言わせてもらうと、長い柄と、刀身に刃のついてない部分があり、
歩兵が、そこを持って槍のように使って馬上の兵を倒す
ためのものだろうと思われます。

おそらく、映画撮影などに使われたものを、
誰かが面白半分で沈めたのだろう、という見解が出されていました。
まあ、ネッシーや幽霊城などもそうなんですが、
イギリス人はこの手のロマンのある話が好きなんですよね。では、このへんで。





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