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西洋魔術の3つのルーツ

2019.05.23 (Thu)
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今回はこういうお題でいきます。カテゴリはオカルト論です。
西洋魔術は、映画や小説、ゲームによく登場しますが、
日本で西洋魔術の成り立ちについて理解している人って、
じつはあんまりいないんですね。なぜかというと、
これには西洋の歴史の大きな流れが深く関連しているからです。

さて、どれからいきましょうか。まず西洋魔術の一つ目のルーツは、
キリスト教以前の土着宗教です。最盛期には、
西ヨーロッパと中央ヨーロッパの大部分に広がっていたケルト民族は、
ローマ帝国による征服とキリスト教への改宗により、
だんだんに結束力を失って、それぞれの地域に同化していきました。

古代ケルトのイメージの強い、トールキンの『指輪物語』
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古代ケルト宗教については、残念ながら文字資料が残っていません。
そのため、考古学的な遺物から推測するしかないんですが、
ドルイド教は古代ケルト宗教の一つで、イギリスにあるストーンヘンジ
などは、ドルイド教のモニュメントです。

ストーンヘンジ
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1812年、ドイツのグリム兄弟が民間伝承を採集して
『グリム童話』にまとめましたが、あれに出てくる魔術のほとんどは
この土着宗教由来のものです。魔女の呪いによって王子がヒキガエルに
変えられたり、お姫様が永遠の眠りについたりするような内容ですね。

関連記事 『怖い童話について』

実際は、ここに出てくる魔女は民間療法師のようなもので、
村の外れに住んでいて、病気になった村人に薬草を処方したり、
失せ物を探したり、転居や結婚の吉凶を占ったりしていました。
この形の拝み屋はアフリカや南北アメリカ大陸など、
世界各地に存在し、日本でも昭和初期まで残っていたんです。

グリム童話の魔女のイメージ
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この、いわゆる「魔女」たちは、キリスト教によって
大弾圧を受けます。悪魔の力を借りて術を使っているとされたんですね。
そして悪名高い魔女狩りが始まり、一説には、全ヨーロッパで
推定4万人から6万人が処刑されたと言われています。

ですが、魔女たちはもちろんキリスト教の悪魔の力を借りていた
のではなく、上記のように古代から伝わる民間治療を行っていただけでした。
魔女の集会「サバト」があり、そこに悪魔が降臨して乱交するなどと
いうのは、魔女たちに濡れ衣を着せるため、
キリスト教によってつくられたイメージなんです。

魔女の宴「サバト」
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次、2つ目は古代ギリシアの自然哲学に由来するものです。
みなさんも、アリストテレス、プラトン、アルキメデス、ピタゴラス等々、
ギリシャ哲学者についてご存知だと思いますが、
その知識は古代ローマに受け継がれました。

ところが、392年、ローマ帝国のテオドシウス帝がアタナシウス派
キリスト教を国教とし、それ以外の宗教、宗派を禁止したため、
それらの知識は失われてしまったんですね。ギリシャ哲学者の著書の
中には、禁書になってしまったものもあります。そのあたりのことを
描いたのが、ウンベルト・エーコの歴史推理小説『薔薇の名前』です。

それらの叡智は完全に消え去ってしまったかというと、そうではなく、
中東やエジプトなどのオリエント地域に残り、
独自の発展をとげていました。それが、聖地エルサレム奪還のために
12世紀から始まった十字軍遠征により、
ヨーロッパ社会に再発見されることになります。

錬金術師のイメージ
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天文学、占星術、錬金術、医術、数学などの知識が、
キリスト教によって、自然科学的には暗黒社会となっていた
西ヨーロッパに、どっとばかりに流れ込んだんですね。ですが、
錬金術で卑金属を金に変えるのは不可能ですので、錬金術師は
貴族に取り入るため、さまざまなイカサマ手口を発明しました。

現在に残る「魔導書」と言われるものの多くは、そういった錬金術師が、
王侯貴族をだまくらかすために書いたものなんです。
最初に書いた土着宗教由来の魔術が民衆のものだとすれば、
2つ目のルーツは、当時の知識層がつくりだしたものということです。

さて、最後の3つ目ですが、これはキリスト教で信じられた悪魔の力を
借りて行うもので、神に反抗する行為です。
「召喚魔術」などとも言いますね。ある特定の悪魔を呼び出し、
その力を使って自らの目的を達成しようとするものです。

ファウスト博士と悪魔メフィスト・フェレス
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ゲーテが書いた有名な戯曲『ファウスト』は、典型的な悪魔召喚の物語で、
年老いた学者で、学問しかしてこなかったファウスト博士のもとに
悪魔が現れ、現世で人生のあらゆる快楽や悲哀を体験させると
約束します。そのかわりに魂をささげなくてはなりません。

悪魔との契約は悲劇的な結末で終わることが多いんですね。
ちなみに、ファウスト博士は実在した錬金術師で、実験中に爆死し、
五体がバラバラになってしまったため、悪魔の力を借りて
研究を行っていたため破滅したのだと噂されました。

さてさて、ということで、ここまでのまとめをすると、西洋魔術のルーツは、
① 古代から伝わる民間信仰に由来するもの
② 古代ギリシア、ローマ時代の自然哲学に由来するもの
③ キリスト教の悪魔の概念から派生したもの
  となりますが、

この3つのことは、それぞれに影響を与え合っています。
まあ実際には、西洋魔術はこれ以外にも、ロマ(ジプシー)のものや、
ロシア・東欧系のものもあるんですが、この3つの基本を押さえておけば、
大きく間違えることはないんじゃないでしょうか。

西洋魔術の世界を見事に再構築した『ハリー・ポッター』シリーズ
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例えば『ハリー・ポッター』シリーズを見ても、暖炉を使って移動するなど、
ほとんどは①ですし、賢者の石なんかは②からのものです。
ただ、作者のJ・K・ローリングが慧眼だったのは、③を注意深く排除して、
キリスト教側からの非難を最小限にとどめたことです。
やはり成功する人は頭がいいですね。では、今回はこのへんで。

『関連記事 『ハリー・ポッターとキリスト教』




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コメント
 ゲーム脳で分類するなら、①はシャーマン技能、②はアルケミスト技能、③はソーサラー技能といったところでしょうか。ここに神の奇跡を扱うプリースト技能を加えれば、マジックユーザー大集合ですw
 ゲームデザイン的には「(キリスト教的な)神の奇跡」も西洋魔術と大差ないんですよね。その批判を避けるためか、たとえばドラゴンクエストに出てくる十字架のグラフィックは、海外版では星などに変更されています。「神(GOD)」の単語と同じく、扱いには慎重を要するようです。
| 2019.05.27 20:25 | 編集
コメントありがとうございます
そうですね、ゲームだとヒーリングや復活
アンデッド類を祓うのは神官の役目ですね

キリスト教の奇跡の概念は難しくて
基本的に神は人々の願いには答えないんです
あくまで神が主体で、その思慮によって世の中が動いていくので
人々は翻弄されてしまいます
お祈りのときも「何事も神の御心のままに」と唱えるのが
よいとされるんです



bigbossman | 2019.05.28 04:00 | 編集
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