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あるホムセンの話

2019.05.27 (Mon)
今晩は、これから私の体験を話していきます。よろしくお願いします。
上の子が高校生になって時間ができたので、ずっと家にいるより、
何かパートにでも出ようと思ったんです。それで、インターネットで
家の近くの求人を探してたら、ちょうど歩いて10分ほどのところに
あるホームセンターで、アルバイト店員の募集をやってるのを見つけました。
ああ、これがいいかなと思いました。ホムセンのバイトは、
若い頃にも1度やったことがあるんです。スーパーだと、
ひっきりなしにお客さんが来て、かなり忙しいんですけど、
ホムセンの場合は、平日はあんまり混まないんです。
それで時給は同じようなものですし。専門知識が必要な場合もあるんですが、
そこは正社員の方におまかせすればいいし。

で、応募して面接を受けたんです。はい、面接は形ばかりのもので、
その日のうちに採用を言われました。今はほら、極端な人手不足
ってことですから、まず採用されるのは間違いないと思ってました。
そのとき他に採用されたのは、私より5歳くらい若く見える主婦の方と、
20代のフリーターの男性でした。それで、翌週の月曜日から
出社したんですが、まず最初に店長さんから訓示のようなことがあり、
これは通り一遍の内容でしたけど、その後、ベテラン男性の主任の方が
出てきて、奇妙な話をされたんです。だいたいこんな内容でした。
「えー、みなさん、これからお話することは奇妙だと思われる
 でしょうが、当店の勤務の際にはぜひ知っておいてほしいことです。
 当店は生体の販売に力を入れています」

その店は大手チェーンの一つで、店の前のスペースがかなり広く、
そこで園芸用品や花、野菜の苗なんかを売ってました。あと、店内にも、
熱帯魚コーナー、それから犬猫、小動物のコーナー、
それから格安のトリミングサロンがあって、それを目あてに
ペットをつれてくるお客さんもけっこういたんです。主任は続けて、
「それでですね・・・説明が難しいんですが、はっきり言うと、
 どうも当店には、命をとる魔物のようなものがすみついてるみたいなんです、
 かなり以前から。で、もしそれが来ている場合、相手をせず、
 無視するようにしてください。それが来るのは月に1回程度のことですし、
 命をとると言っても一つだけですから、損害は微々たるものです」
ねえ、どう思いますか。にわかには信じられない話ですよね。

他の人もそう思ったようで、若い男性がこんな質問をしました。
「命をとる・・・って、販売してる生体が死んでしまうってことですか?」
「そうです」 「・・・その魔物というのは、どんな姿なんです?」
ここで主任は少し困った顔をし、「実体はよくわからないんですよ。
 そのとき店に来ているお客さんにとり憑くんです。
 ですから男性の場合も女性のときもあります。それで、命を一つとると、
 その憑き物は落ちる。どうもそういうことらしいんですね。
 とり憑かれたお客さんは、その間のことは何もおぼえていないようです」
はい、はっきり言って信じられませんでしたし、それは他の2人も
同じだっと思います。とにかく、そういうことがあって勤務が始まりました。
私は熱帯魚コーナーのサブということになり、これは楽でした。

お客さんは1時間で数人ちらほらと来るだけで、魚をつかまえるなどの
難しい仕事は正社員の方がやってくれたし、私は魚に餌をやったり、
水換えの手伝いをするだけでした。それで、勤めて1ヶ月くらいしたときです。
平日の午前中でしたからお客さんは少なく、ちょっとぼんやりしていたとき、
熱帯魚コーナーに4歳くらいの女のお子さんが歩いて入ってきたんです。
まあ、親から離れて魚を見に来たんだと思いますよね。
けど、その子の顔を見てぎょっとしました。目が裏返って
白目だけになってたんです。その子は右手の指を一本前に出したまま、
金魚の水槽が並んだ前を行ったり来たりしてましたが、
背が小さいので一番下の水槽の一つのガラスに指をあて、何かぶつぶつ
つぶやき始めたんです。でも、何を言ってるかはわかりませんでした。

「あ、もしかしてこれか」って思いました。怖かったので、近づかず背後から
見てたんですが、少しすると、元気よく泳いでいた琉金の一匹が
ぐるんとひっくり返って水面に腹を向け、浮き上がったんです。
そのとき、「ああ、命をとられた」ってわかったんですよ。
コーナーの外から、「おーい、○○」と女の子の名前を呼ぶ声が聞こえ、
その子は「パパー」と言ってそっちに走っていきました。
目は普通に戻っていたと思います。金魚は浮いたままで、気味が悪かったので、
時間がたってから網ですくい上げてみたら、完全に死んでいました。
その翌日ですね。休憩の時間に、同じときに採用された方といっしょになったので、
前日の話をしたら、その人も「先月、私も見た」って言ったんです。
その人は外の園芸スペースに配属されてたんです。

「私のときはお婆さんだった。今聞いたのと同じで、目が裏返ってたよ。
 そのお婆さんが指を出してミニトマトの鉢にさわると、
 そんなことありえないのに、その苗、あっという間に枯れちゃったの」
・・・前もって主任に言われてなかったら気がつかなかったと思います。
それに、もし気がついてもどうすることもできませんよね。
それからまた1ヶ月くらいして、私がいる熱帯魚コーナーの隣の
トリミングサロンで大きな声が上がったんです。
「○○ちゃん、〇〇ちゃん」って。ガラス越しに見ると、
トリマーの人がすごく困惑してて、上品そうな奥様が自分のペットの
トイプードルを揺すっていました。でも、犬は横たわったまま、
ピクリとも動かなかったんです。中途半端に刈られた毛がかわいそうでした。

そのことがあって翌週の月曜日、ホムセンは臨時休業になりました。
理由は、店内全体のシステムの点検整備ということでしたが、
噂では、大々的にお祓いをするって言われてたんです。
ほら、店内の商品だけだったらともかく、お客様の犬にも被害がおよんだ
わけですから、その魔物というのを追い払うため、霊能者に来てもらうって
話でした。もちろん私はお休みでしたので、その日店内で
どんなことがあったかはわかりません。火曜に出勤すると、
様子に特に変わったことはなかったです。世話してる魚たちも
元気だったんですが・・・お昼が過ぎて、2時に近い頃だったと思います。
離れたところで、ドカン、バタンと大きな音がし、
「店長、やめてください」という声が聞こえました。

そちらを見ると、止めようとしている店員を振り切って、
いつもは事務室にいる店長が、走るような勢いでこっちに近づいてきました。
目が裏返っていて、手には店の商品と思える値札のついた
大きなカナヅチを持ってました。「まさか」と思ったんですが、
店長はコーナーに入ると、一番入り口に近い金魚の水槽を次々に割り始め、
とても止めることはできなかったんです。4つ目の水槽を割ったとき、
後を追って数人駆けつけてきた男性社員に取り押さえられ、
手足をつかまれて奥へつれていかれました。はい、見ていたお客さんも
何人もいましたよ。私は、床で跳ねている金魚を拾おうとしたんですが、
ガラスが危ないからと社員の人に注意され、そのままになりました。
聞いた話では、店長は錯乱が続いて、その日のうちに入院したんだそうです。

はい、熱帯魚コーナーはしばらくの間、閉鎖ということになりました。
店は代理の店長が来て営業を続けていたんですが、
それがあった日から1週間で、店で販売されてる生体の商品が
すべて死んだんです。ハムスターからクワガタから、
もちろん残ってた熱帯魚も全部。植物も逃れられませんでした。
苗類、観葉植物、今たいへん流行している多肉植物なんかも全部枯れて
しまったんです。ありえないことですが、そのときには、
「この店はもうだめだ」と思ってました。案の定、すぐ店は閉店になり、
私はパートの職を失くしてしまったんです。・・・ホムセンの店舗は
まだ残ってますが、後に靴の量販店が入るという話です。
まあ、靴なら命はとられないかもしれませんが、どうなるんでしょうねえ。






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