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味の素と生命の起源

2019.06.02 (Sun)
アーカイブ141

dsfert (1)

みなさんは料理に味の素を使われているでしょうか?自分は使って
ませんが、「体に悪い」から使わない、というわけでもありません。
この分子構造を見るかぎり、よほど大量に消費しなければ、
体に悪いということはないような気がします。

それと、「化学調味料」という言われ方をするので、
味の素は化学合成されている、と思ってる方は多いようですが、
実際は主に発酵法によって作られます。
味の素の主成分は、L-グルタミン酸ナトリウムです。

この「L-」の部分に着目してください。グルタミン酸はアミノ酸の一種で、
アミノ酸にはL型とD型があります。これは左手と右手の関係に似ていて、
どちらも同じ原子でできていますが、その構造は、ちょうど鏡に写ったように
反対になっているんです。これを鏡像異性体と言います。(下図)



アミノ酸を化学合成すれば、ふつうはL型とD型が半分ずつできます。
これはコインを投げて裏と表が出る確率と同じようなものなんですが、
人間をはじめ植物や細菌類まで、地球上の生物のほとんどは、
L型のアミノ酸を利用しているんです。われわれはL-グルタミン酸ナトリウム
を食べればうま味を感じますが、D-グルタミン酸ナトリウムでは感じません。

不思議な話なんですが、これは、われわれの体をつくるタンパク質が
やはりL型からできていることと関係していると考えられています。
L型とD型は同じ原子から構成されており、基本的な性質もほぼ同一なのに、
なぜこのような偏りができてしまったんでしょう?

さて、話変わって、地球上の生命はどうやって誕生したんでしょうか?
これにはいくつかの説がありますが、主なものをあげると、
① 神が創造した説 ② 自然発生説 ③ 化学進化説 ④ パンスペルミア説
に分かれます。まあ、いろいろとさし障りがあるので、
ここでは①にはふれないことにします。

②はアリストテレスの昔から長い間信じられてきた、
何もないところから命が生まれるという説です。
水を容器に入れてほうっておけば、
いつの間にか微生物がいるのが見つけられる、というような話ですが、

パスツールの実験
dsfert (2)

現代のみなさんは、これは空気中を漂っている微生物や植物の胞子が
水の中に落ちたためであることを知っていますよね。自然発生説は、
19世紀のパスツールの、加熱処理した肉汁を雑菌が入りにくい
つる首フラスコに入れる実験によって、ほぼ否定されました。

③は、最初の生命は原始地球にあった材料から合成されたとする説で、
今のところ支持者が最も多いのではないでしょうか。
最近は、海底の熱水噴気孔あたりで生命ができたのではないか、
という説が注目されていますが、これも化学進化説の一つです。

フレッド・ホイルのSF『10月1日では遅すぎる』
dsfert (4)

最後に④ですが、簡単に言えば、生命をつくるもとになった材料は、
宇宙から隕石に乗って飛来したとする説です。
今回取り上げるのはこの④の説について。
19世紀末頃からこれを唱える人はいましたが、20世紀に入って、
イギリスの天文学者にしてSF作家のフレッド・ホイルや、

同じくイギリスの、DNAの2重らせん構造を解明した分子生物学者クリック
などが熱心に主張していますね。特にクリックは「意図的パンスペルミア説」
つまり、地球外の知的生命体が宇宙に意図的に生命の種をばらまき、
その一つが地球にやってきたとする過激な説を述べていて、
しかしこれ、SFならともかく、さすがに過激すぎて学会の反応はいまいちです。

フランシス・クリック
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さて、L型とD型の話に戻って、近年、隕石からアミノ酸が検出されたとする
報告例が増えているんですが、このアミノ酸がL型に偏っているんです。
では、なぜ偏りが起きたんでしょうか? 話はここで一気に宇宙にとびます。
それは天体現象である円偏光による、と考える学者が多いですね。

円偏光は巨大な質量を持つ星のまわりで起きることが多く、
偏光には右回りと左回りとがあります。(下図は右回り)
そして、右回りの円偏光の紫外線を浴びると、D型のアミノ酸は
壊れてしまうんです。この説が出てきたのはそう古い話ではなく、
2010年頃のことだったと思います。

宇宙での「円偏光」のイメージ
dsfert (5)

太陽系が誕生した頃、その近くで重い恒星が生まれていて、
あたり一帯が強力な右まわりの偏光に包まれ、
L型のアミノ酸が残ったという仮説が提唱されているわけです。
ここまでは論理的な穴はないように自分には思われます。

さてさて、そのL型のアミノ酸は、隕石に乗って原始地球に飛来し、
最初の生命を形づくる源となり、原初の生命は長い時間をかけて
進化をとげ、現在の人間まできました。そのため、
われわれの体はL型タンパク質で構成されており、

味の素を食べればうま味を感じる・・・とまあこんな話です。
ただしこれ、あくまで一つの仮説ですし、
実証にはさまざまな困難があることをつけ加えておきます。
では、今回はこのへんで。






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コメント
D型アミノ酸は摂取しても知覚出来ない。不思議ですね。
D型アミノ酸から発達した人類がいたら、D型アミノ酸の味が分かるかもしれない。その人達と我々は、同じもの食べても「美味しい」「味がしない」と分かれちゃうかもしれないんですね。
霊能者と零感みたい…(安直)
| 2019.06.06 12:46 | 編集
コメントありがとうございます
人間の舌には味覚を感じる受容体(レセプター)があるんですが、
D-グルタミン酸はそこにうまくはまらないんだそうです
D-グルタミン酸は鏡像異性体ですから
右手に対して左手用のグローブをはめようとする
ようなことになるみたいですね
bigbossman | 2019.06.06 17:36 | 編集
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