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「多世界解釈」あれこれ

2019.06.08 (Sat)
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今回はこういうお題でいきます。2日前に書いた「測定」の不思議
という記事の続きみたいなものなんですが、今日の記事の内容の後半は
科学的に正確ではなく、まあSF的な妄想みたいなものです。
ですから、そのつもりでお読みただければと思います。

本当は書く予定はなかったんですが、共同事務所の仲間から
「多世界解釈についてもっと書いてみてくれよ」と言われまして。
でも、これについて専門的に研究してる学者って多くないんですよね。
理由はおわかりだと思いますが、賞を受けたり、工学的に応用できるような
めぼしい成果が出ることが期待できないからです。

ただ、物理学者の中に過激な支持者はいます。イギリス人の、
デイヴィッド・ドイッチュという人です。名前を聞かれたことがあるか
もしれません。「量子コンピュータ」の基礎理論を構築した人物ですね。
ドイッチュの異常な理論?については後半のほうで少し触れることにします。

さて、「多世界解釈 many-worlds interpretation MWI」は、
プリンストン大学の大学院生であったヒュー・エヴェレット3世が、
大学院生時代の1957年に博士論文として書いた、量子力学の観測問題に
ついての理論です。3世というと王様みたいですが、
もしプロレスラーのドリー・ファンクジュニアが自分の子どもに
同じ名前をつければ、ドリー・ファンク3世(ザ サード)です。

分岐していく世界
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エヴェレット3世は学生時代、SF小説の大フアンだったみたいです。
発表の当初、多世界解釈はさして評判にもならず、大学卒業後は理論物理とは
違う道に進みます。軍関係の研究をやったり、事業を起こして会社を
経営したりです。そのうちに、だんだんに多世界解釈のことが知られるようになり、

1959年、エヴェレット3世は量子力学研究の本場であった
コペンハーゲンの研究所に、量子力学の父と言われるニールス・ボーアを
訪問します。ボーアは「コペンハーゲン解釈」を進めた人ですね。ですが、
多世界解釈をくわしく説明する機会は与えられず、議論すらできませんでした。
コペンハーゲン派は、エヴェレット3世をただの素人とみなしていたようです。

多世界解釈が世間に知れるようになったのは1970年代からです。
さまざまなSF小説やコミックで取り上げられ、大流行しました。
まあ、学術理論なので特許というものはないんですが、もしそうできたら、
エヴェレット3世は、その特許使用料だけで食べていけたかもしれません。

歴史改変SF『高い城の男』 フィリップ・K・ディック
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エヴェレット3世は、1982年、51歳で心臓発作のために
急死しますが、肥満し、ヘビースモーカーで、浴びるように酒を飲んでいた
ことが原因と言われます。あまり幸福な人生ではなかったのかもしれません。
彼は徹底的な無神論者だったので、葬儀や埋葬を望まず、
あらかじめ「遺体はゴミ箱に捨てるように」と遺言に書いてありました。

これは余談ですが、エヴェレット3世の妻は彼の遺骨を数年間自宅で
保管してからそうしたようです。また、彼の娘は後年 自殺していますが、
その遺書のメモに、「パパに会える正しい平行宇宙にたどり着くことが
できるよう、自分の灰をゴミと一緒に捨てて」と書かれていたそうです。

さて、多世界解釈について、こっからは眉唾の話になります。
多世界解釈では、個々の場合における波の収縮は認めていません。
そのかわりに、この宇宙には一つの大きな波動関数があり、
観測が行われる都度、世界は分岐していくとします。
ですから、波の収縮は起こりません。

まあ、普通はそんなことありえないと思いますし、この理論が正しいという
証拠も一切ありません。理論の性質上、証拠が出せないんですね。
ただ、この考え方を使えば、二重スリット実験における量子デコヒーレンスや
量子もつれの現象を、比較的すっきりした形で説明することはできます。

二重スリット実験
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では、もし多世界解釈が正しいとして、平行世界はどこにあるんでしょうか。
これはわからないと言うしかないですね。原子核の周囲にある電子は、
存在確率の雲として表わされるようになってきましたが、
その確率の雲はどこにあるの、と問うのと基本的には同じことだからです。

あえて言えば、複数の世界は重なり合っているということでしょうか。
ただ、研究者の中には平行世界を時間とからめて論ずる人もいます。
平行世界の中の時間は、すべて同時進行しているわけではなく、中には
過去や未来の世界もある。われわれは時間について現在しか認識できませんが、
過去や未来がある場所に、平行世界も存在しているというわけです。

それから、平行世界は無限にあるのか。これもよくわかっていません。
原子核の中の電子が取れる位置が、無限なのか有限なのかがわかっていない
からです。時間や長さにはプランク時間、プランク長という最小単位があり、
電子のとれる位置の数には限りがあるのかもしれないんですね。
ただ、無限ではないとしても、平行世界の数は膨大です。

次に、平行世界は決定論的なのか。エヴェレット3世自身はそう考えて
いました。これもよくある例えですが、あなたはAさん、Bさんのどちらと
結婚しようか迷ったあげく、Aさんと結婚しました。自分の意志で
Aさんを選んだようですが、じつはあなたがBさんと結婚した世界も、まだ独身の
世界も存在し、たまたまあなたはAさんと結婚した世界だけを認識している。

また、あなたがもし成功者だったとします。あなたは自分の才能と努力で
成功したと考えますが、そうではなく、やはりたまたま成功した世界にいるのであり、
平行世界の中には、あなたがホームレスになっているような世界もあるわけです。
つまり、人生の中での才能や努力が否定されてしまうんですね。

デイヴィッド・ドイッチュ
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さてさて、最後に、平行世界どうしは互いに影響を与え合うことができるのか。
これについて、理論的にはできないとされていましたが、最初のほうに
登場したデイヴィッド・ドイッチュはそう考えてはいないようです。
ドイッチュの本はひじょうに難しく、自分には手にあまる内容なんですが、
その中で、こんな意味のことを述べています。

「正しい選択をすることで、われわれはよい生活を送っている宇宙のスタックを
集中させることができる。あなたが成功すると、あなたと同じ選択をした
すべてのコピーも成功する。あなたがよい選択をすれば、
多元宇宙でよい選択がなされる部分が増大する」・・・どう思われますでしょうか。
ここまでくると、自分にはまるで解釈不能です。では、今回はこのへんで。

関連記事 『測定の不思議』 『ヴィグナーの友人と神』

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