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アーカイブ ヒドゥン

2019.06.11 (Tue)
3年前、小学校のときの話です。うちは港に面した丘の上にある集合住宅でした。
男だけの4人家族だったんです。祖父と父と、僕と2つ下の弟、道男と。
父は客船の船員で、1年のほとんどを船に乗って外国を回ってて、
たまに帰ってくるだけ。母は弟が生まれてすぐ、病気で亡くなったということで、
ほとんど思い出がありません。アルバムのようなのもなく、
写真も見たことないんです。で、ですね、今、弟と言いましたが、ぜったいに
僕が小5のときまで弟はいたんです。これは間違いないです。
ないんですが・・・まあ、これから詳しく話しますので、
会場の皆さんでそういうことなのか判断してほしいです。
その小5の秋頃のことです。普段は60代の祖父と生活をしていまして、
学校のことから何からすべて面倒を見ていてくれました。

といっても祖父は夜になると出かけることが多く、仕事だと言っていました。
だから寝る時間には僕と弟しかいないことが多かったんです。
朝になると帰ってきていましたけど。それと、集合住宅の他の家は、
今から考えると貧しい家庭が多かったんじゃないかという気がしますが、
うちはほしいオモチャやマンガ本など、何でも買ってもらっていました。
集合住宅には同じ小学校に通う友だちも数人いて、
そいつらと遊ぶことが多かったです。ほとんど室内でゲームとかでしたけど。
あるとき、どういうきっかけだったか忘れましたが、外に遊びに出たんです。
僕と弟と仲間2人の計4人で、団地の丘から下りて海のほうへです。
港に行くことは祖父に禁じられていました。
何でかっていうと、車通りが激しくて危険だからです。

いや、車通りが多いというのは違うかな。道がだだっ広くて信号もほとんどなく、
走ってるのは自動車やコンテナを積んだ大型トレーラーばかりだったんです。
普通のトラックの倍以上あるような巨大なやつ。丘の上から見ている分には
かっこよかったんですが、近くを通るとすごい風圧で、子どもだと
吹っ飛ばされそうな感じがしました。で、その日は倉庫街でかくれんぼと
鬼ごっこの混ざったような遊びをしていたと思います。倉庫街は、体育館ほどの
建物を殺風景なコンクリの高い塀が取り囲んでいて、日本じゃないような
感じがしたんです。アスファルトに長く影が伸びてきた夕方、
そろそろ帰ろうかとなって、4人で塀の前を歩いていました。
鉄格子の門の前を通ったとき、弟が倉庫のほうを見て、
「あ、ロボットがいた」って言ったんです。

それを聞いて、残り3人も鉄格子の中を見たんですが、
何も動くものはありませんでした。「嘘つくなよ、こら」
「ロボットが、んなとこにいるわけねえだろ」こんなふうに言われて、
弟は悔しそうに、「さっき白いロボットが、あのシャッターの中に入っていった」
って言い張りました。たしかに中の倉庫の一つ
の建物のシャッターが、半分くらい開いていました。
「俺、見てくる」弟はそう言って、鉄格子の下の部分をくぐりました。
子どもだとくぐって入れるくらいのスペースがあったんですよ。
「ちょ、待てよ」しかたなく僕らも続いたんです。
僕らでも顔を地面にこすりつけるようにすれば入っていけました。
弟はすでに建物のシャッターの前に立って中をのぞき込んでいました。

「怒られるぞ、早く出ろ」そう言いながら近づいていくと、
「兄ちゃん変なもんがある」弟が言いました。それで俺らも中を見ると、
たしかに変なものがあったんです。その建物の中は薄暗い照明がついてて、
小学校の教室3つ分くらいの広さでしたが、床が土になっていたんです。
まずそこが変ですよね。それと、5mほど離れたところに低い鉄柵があり、
その中に石がいくつも立ち並んでいたんです。人の気配はありませんでした。
弟が中から引っぱられるような感じでふらふらと入っていき、
僕らも後に続きました。鉄柵に近づくと、黒い土の上に、
円を描いて1mほどの縦長の石が並んでいたんです。そして直系2mほどの
円の中心にあたる部分に、他よりもやや高さのある石柱。
「これ、日時計みたいだな」と友だちが言い、みなはうなずきました。

そうですね、今なら何かわかる気がします。
東北にあるストーンサークル、あれにそっくりでした。石は白っぽくて、
中に緑っぽい部分が入ってて、どれも同じ種類に見えましたね。
鉄柵を回っていくと、弟が「あ、ほらあれ、さっきのロボット」と叫びました。
見ると突き当たりの壁に、白い人の形のものが3つ並んでいました。
「人がいるなら怒られる」と思ったんですが、生きている感じがしませんでした。
近づくと、それは壁から吊り下げられた服だったんです。宇宙服というか、
映画のスターウオーズで帝国群の兵士が着てた、白い硬質のスーツみたいな。
でも、大人のにしては小さく、中に人は入ってませんでした。
ヘルメットの透明な部分の中は何もなく、くたっと壁にかけられていたんです。
「何かの作業のときに着るやつじゃないか」僕が言いました。

「もう見たからいいだろ、早く出ようぜ」友だちの一人がそう言い、
僕らはシャッターのほうへ向かいました。前にいた弟が鉄柵越しに石柱の
一つにさわりました、そしたら根元が埋まっていたわけじゃなかったのか、
ぐらっと傾いて中央のほうに倒れ、中心の石にあたったんです。
「カン」と乾いた音がしました。そのとき急にサイレンが鳴り出し、
天井で赤色の光が点滅を始めました。「バカ、何やってるんだ」僕は弟に言い、
「逃げろ」全員で走りました。シャッターを抜け、鉄格子の門をくぐり、
サイレンの音を背に長い塀の横を走りました。全力疾走で息が切れ、
角を曲がったところでいったん立ち止まったんですが、3人だけ。
弟がいなかったんです。「あれ、道男のやつ」僕がそう言って、さっきの道を
覗こうとしたら、「道男ってだれだ?」って友だちの一人が言ったんです。

「俺の弟だろ、さっきまでいた」・・・2人は顔を見合わせて、「俺ら3人で来たよな」
「だいたいお前に弟なんていないだろ」わけがわかんなかったです。
「何言ってんだよ、さっきロボットが見えたって、あの倉庫に入ってったろ」
「それ、お前だよ」「俺じゃなくて」こう言い合っていると、
「迎えに来たぞ」急に声をかけられてびくっとしました。振りかえると、祖父でした。
「あっ、じいちゃん、道男が・・・」「道男ってだれだ?」「えっ!?」
・・・最初から弟なんていなかったことになってしまったんです。
祖父が「弟なんていない」って言うのでどうにもなりませんでした。
それで、家に戻ったら弟の痕跡がまるでなくなっていました。
机も、布団も、教科書も何もかもです。もちろん祖父には繰り返し話したし。
かんしゃくを起こして新聞を床に叩きつけたりしたんですが・・・

そのうち、祖父は仕事だからと出かけてしまい、
朝になって目覚めてもやっぱり弟はいませんでした。
しかもです、小学校に行っても弟のいた跡というのはまったくなかったんです。
3年生の弟がいるはずの教室に行き、そこの担任に聞いても、
「道男くんという子はこのクラスにはいないよ。君、5年生の子だよね。
 他の学年と勘違いしてるんじゃないか?」雨具かけにも、靴棚にも弟の名前はなし、
すっぱりこの世から消えてしまったんです。え、ずっと僕のほうが
弟がいたっていうニセモノの記憶を持ってたんじゃないかって?
それはないです。弟とやったことの一つ一つをちゃんと思い出せるし。
ただ、ときおり帰ってくる父に聞いても「弟なんていないだろう」って・・・
この2年後、中1のときのことです。朝方、電話が鳴っていて目が覚めました。

祖父はおらず、眠い目をこすりながら出てみると、父でした。
「引っ越すことになったから今日は学校を休め。今、人が来るから」
30分ほどしてチャイムが鳴り、開けると作業服の人が数人入って来ました。
その人たちは黙々と部屋の中のものをダンボールに詰めて、
俺が何を聞いても答えようとしなかったんです。
そうしているうち、外国に出ていたはずの父が入って来て、
「神戸に引っ越すぞ、じいちゃんは後でくるから」こう言ったんです。
先に家の荷物をまとめたトラック、俺は父の運転する乗用車で後に続いて、
何時間も走りました。それで、今住んでる家まで来たんです。
集合住宅から比べればものすごく広くて・・・庭にあれがあったんです。
ストーンサークルですよ。倉庫で見たのと同じものだと思いました。

今の家にきて1年になるんですが、まだ祖父は合流してません。
父はもう船には乗らないようで、ずっと家にいますが、
前に祖父がやってたように夜になると出て行き、朝には帰ってきています。
転校して、新しい学校にはなんとかなじむことができましたが、
なじめないのは家のほうです。部屋数が多くて暗くて不気味で・・・
それと、庭のストーンサークルには近寄ってません。
あの小5のときのことがあるので・・・でも、一人で夜2階の部屋にいるとき、
つい庭のほうを見おろしてしまうんです。そしたらこの間、12時過ころ、
ストーンサークルのまわりを、白いものがふらふら歩き回っていたんです。
あの倉庫にかかってた宇宙服みたいなスーツに見えました。大人の
背丈じゃなく小さかったんで・・・あれ、道男じゃないかと思うんですよね。






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