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ある廃屋のロケの話

2019.06.15 (Sat)
今から15年ほど前のことだな。あるTV番組制作会社でディレクターを
やってたんだよ。うん、当時もやらせが問題化はしてたが、
それでも今よりはずっと番組づくりは自由だった。今はほら、
TBSだったかな。番組で紹介した心霊写真に捏造疑惑が出てきただろ。
ネットで拾った他人の画像を加工して番組で流したって。
ああいうことは昔はよくあったんだが、今はとても怖くてできねえよ。
画像検索ってものがあるからな。東京オリンピックのシンボルマークに
盗作疑惑が持ち上がったのも、やっぱ画像検索からだったろ。
ああ、すまんな本題の話をするよ。当時は、1ヶ月くらい期間を切って、
タレントが耐久生活をする番組が流行ってた。
無人島で1ヶ月生活するとか、インドの街から街まで徒歩旅行するとか。

まあもちろん、あれにも裏はあるんだ。いくら若手タレントとかだって、
体を悪くさせるわけにはいかねえ。だから、昼はヘビをつかまえて
焼いて食べるような映像を撮っても、夜はちゃんとおにぎりとか差し入れ
してた。カメラや音声も近くにテント張って泊まり込んでるんだから、
さすがに俺らだけロケ弁食ってるってわけにもいかんのよ。
まあそんな具合でな、TV番組には裏があるわけ。けどよ、
民放の番組はタダなんだし、楽しもうと思ったら裏とか考えるのは損だよ。
今はホント、毒気のない番組ばかりになっちまったろ。
あ、それでな、そんとき作ったのは、若手のお笑い芸人2人に
心霊スポットと言われる廃墟に、2週間泊まり込んでもらうって内容だった。
場所は関東の某県にある一軒家。当然、所有者の許可は取ってある。

そこは2階家で、部屋は5つだったと記憶してる。
人が住まなくなってから12年だかたってたはずだ。もちろん、
前の住人のことは調べたよ。ちょっと気の毒な話でな、
親子4人が住んでたんだが、両親が車で事故死して、中学生くらいの
子ども2人が親戚に引き取られていったんだ。
だから、俺らが調べたかぎりじゃ、その家の中では誰も死んじゃいねえ。
なのに心霊スポット化したのは、その地域の若いやつらの間で噂が広まった
からだ。夜になると誰もいないはずの家なのに電気がついてるとか。
で、夜になると探索にくるやつらが出てきて、いい具合に荒らされた。
そこで暮らしてもらう芸人はコンビじゃなくて、ピンのやつが2人。
どっちもまだ売り出したばかりで、名前知ってるやつは少なかったな。

でな、まず最初に2人とも健康診断を受けてもらったが、
何の問題もなかった。普通はそんなことはしねえんだが、その番組の売りが、
医師によって体調の変化をチェックしてもらうってことだったのよ。
だから3日おきに血液検査してたんだよ。2人には一階の、
おそらく夫婦の寝室に使われてた部屋に入ってもらった。
電気水道は止まってたから、電源車を庭に入れてけっこう大がかりになった。
でな、最初の一週間は何も起きなかったんだよ。
これは後で編集をするにしてもうまくない。それでな、音声のやつに頼んで、
夜中に家の外を取った場面に変な声を入れてもらった。
あ、そういうことはしょっちゅうだし、こっちが頼まなくても、
気を利かせてやってくれるやつもいるんだ。

異変が起きたのは週明けの月曜だよ。その朝、芸人が2人とも起きられ
なかったんだ。頭が重い、体がだるいって言って。10時過ぎたころに、
検査を頼んでた病院から連絡があって、芸人の一人の白血球とリンパ球が
すごく減ってるって言うんだ。すぐにも何かの感染症にかかるんじゃないかって
くらいに。ドクターストップだよ。いや、トラブルというか、
俺にしてみれば大チャンスだと思ったね。そういう心霊スポットで、
何かが起きるなんてことはまずないんだ。それが本当に起きたわけだから、
大々的に取り上げて、残った一人に頑張ってもらうことにした。
そいつもやっぱ検査の数値はよくなかったんだが、何とか耐えられるレベル。
あ、それから、その芸人たちはどっちも、心霊なんて信じてなかった。
もちろん、怖がってるふりはしてくれたけどよ。

まあな、そうでなきゃ芸能界で生き残っちゃいけない。それでな、
芸人は2人とも、日曜の夜に夢を見たって言ったんだよ。寝てる布団の横から
たくさん手が出てくるっていう同じ夢。数十本の手は、布団のまわりを
囲むようにひじのところまで出てきて、おいでおいでの動きをする。
もしかして夢じゃないのかもしれない、って。
そんなことがあるはずはないよな。それに、カメラを部屋に入れて
一晩中回してたんだよ。見たが何も写ってない。あたり前だわな。
残った芸人に、その怖い夢の話を語らせた映像を撮った。
で、どうなったかって言うと、そいつも2日後には立つこともできなくなって、
検査の結果もリタイアしたやつと同じ。あと数日で2週間になるのに、
これはちょっと困った。そのまま編集したんじゃインパクトがないだろ。

そこで奥の手を使ったんだよ。「この非常事態に、番組ディレクターが自ら
その部屋に泊まってみることにした。いったいここで、何が起きるのだろうか」
って具合。ああ、俺自身は顔出すのはなんともなかった。
まあ見られたツラじゃねえんだがな。芸人たちがいた部屋に寝て、
最初の日は何も起きなかった。その夢を見たのは2日目の夜。
11時ころに布団に入った。ビール1本飲んでたが、酔っちゃいなかったよ。
で、すぐに眠りについたからありゃ夢だ。だが、すごいリアルだった。
まず寒気がした。ロケしてたのは、番組を夏休みに合わせるため6月だった。
寒いわけはねえんだが、とにかく体がふるえるくらい寒い。
それで、何かに囲まれてる気配がしたんだ。目を開けて布団のまわりを見ると、
ずらっと何十本も手が伸びてたんだよ。どんな手かって?

それがなあ、人間の手の形はしてたが、男でも女でもなく金属みたいなんだ。
それがひじから先を畳から生やして、俺に向かって手招きをする。
おいで、おいでって、芸人らが言ってたとおりだ。あ、それから、
その手の動きがそろってるんだよ。うまく言えねえが、同調してるっていうか、
同じ動きをする。体は動かず、ブルブルふるえてると、今度はその手が
いっせいに布団を叩き出した。ペタペタペタって。で、頭のほうにある手は
布団から出てる俺の頭をさわるんだよ。その気味の悪いこと。
どのくらい時間がたったか、我慢できなくなり、俺は「うわわわわわわっ」と
声を出した。体が動くと思って、布団をはねのけて一気に立ち上がった。
そしたら立つことができたが、その拍子に吐いてしまった。
ビールの臭いがして、あたりを見回すと手は一本もなかった。

「おーい、ちょっと来てくれ!」 「どうしましたか?」ややあって、
別室にいたスタッフが来たんで、定点カメラをすぐ前の時間に巻き戻して
くれるよう頼んだ、俺が寝てて、体は小刻みにふるえてる。
けど、あんだけたくさんあったと思った手は一つも写ってない。
ああ、やっぱり夢か、そう思ったとき、俺の頭の横に手が一本だけ出た。
それは握った状態から人差し指を一本だけ伸ばし、手首を曲げて下を指さして
消えたんだよ。集まっていたスタッフが息を飲むのがわかった。
カメラマンが「・・・モノホンですね」って言った。けどそれ、
あんまりはっきり写ってて、番組には使えないと思った。ああ、お蔵入りってこと。
でな、翌朝、俺はすごい体調悪かったが、その家の所有者に連絡して、
寝室の床をはがす許可をもらった。まあ、もとがボロ屋で売れる予定もねえから、

簡単に許可は出たよ。作業員に来てもらって床板をはがすと、
布団の下の部分に土が黒くなってる箇所があり、そこを掘ってもらうと、
すぐに四角い木箱が出てきた。大きいもんじゃねえ。50cm四方くらいだったか。
厳重に釘で打ちつけられてあったが、壊すつもりで開けてみると、
中に何があったと思う・・・古ぼけた、30cmくらいの金箔をはった仏像が一体。
手がたくさんある千手観音ってやつだ。あと10cmくらいの革袋。
中には、そうだなあ、黒い干しブドウに似たものがパラパラ入ってた。
普通はそこまでやらないんだが、分析に出してみたんだよ。結果は、人間の腎臓の
一部、細胞が癌化してるようだが、古くてはっきりわからないって言われた。
それでな、その番組は放送できなかったんだ。夏までに芸人2人とも急死したからな。
突然死で原因は不明。俺? 当時は大変だったが、今はまあなんともないよ。





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