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家の鍵の話

2019.06.24 (Mon)
今晩は、じゃあ話をしていきます。これ、私が小学校6年生のときの
出来事なんです。ですから、もしかしたら子どもの空想とか、
勘違いが入っているのかもしれません。実際、そう考えないと
説明がつかない奇妙な内容なんです。あの日は秋で、
学校で全校PTAがあるため、全校が2時ころに終わったんです。
それで5時間目が授業参観で、お母さんが来てくれていました。
といっても、うちは妹が同じ小学校の4年生にいるので、
お母さんは半々に出てくれてたんです。妹が入学してきてからは
いつもそうでした。その後、PTAは全体会と学級懇談があるんですが、
その前に生徒は放課になります。帰ろうとして教室を出たとき、
お母さんが妹を連れてやってきて、

「ああ、あんた先に帰っちゃうんじゃないかと思ったけど、よかった。
 うちに誰もいなくなるから、あんたたちに家の鍵を預けてく」
お母さんはその頃、週に何日かスーパーのパートをやってましたが、
私たちが家に帰る頃には終わってて、鍵を預けられることって
あんまりなかったんです。ただ、前にあったPTAでもそうしてました。
お母さんが「ここに入れておくよ」そう言って、妹のランドセルを開け、
中のジッパーがついたところに家の鍵を入れました。
普通の鍵なんですが、紫色の曲がった石のキーホルダーが
ついてました。今考えれば、それ、勾玉というものだったんですね。
それで、妹といっしょに帰ることになったんですけど、
ふだんはまずしないことでした。4年生と6年生では終わる時間が

違うことが多いし、同じに終わっても、それぞれ友だちと帰るんです。
それと、私は妹ととあんまり仲がよくなかったんです。
年が近いせいだと思いますが、姉妹ケンカが多かったんです。
私から言わせれば、ケンカの原因は妹のせいがほとんどだったんですが、
それでいつも怒られるのは私のほうで。だから、あんまり妹が
好きじゃなかったんです。性格は、妹のほうが私より気が強かったです。
私はどっちかというと引っ込み思案だったのに、妹は何でもやりたがる
好奇心の強い子でした。あ、すみません、こんなこと興味ないですよね。
それで、いつもの通学路を妹と歩いてたんですが、
あんまり会話はなかったです。私たちの家は学区の外れのほうにあって、
子どもの足だと20分少しくらいかかりました。

妹が先を歩いてて、私が後をついていく形でしたが、ふっと妹が
立ち止まって横手のほうを指差し、「あ、お姉ちゃん、明かりがついてる」
と言いました。住宅街なんですが、そこだけ少し木があって、
奥に小さな神社があったんです。毎日その前を通ってましたが、
お参りしたことはなかったです。見ると、たしかに参道の向こうで、
ロウソクのような明かりがたくさん揺らめいてました。
「ね、お姉ちゃん、何かお祭りかもしれないから、見に行こうよ」
妹がそう言い、「道草になるよ」私はそう答えたんですが、
もう妹は走り出して鳥居をくぐっちゃったんです。私もついていきましたけど、
内心では面白そうだと思ってたんです。でも、短い参道の先にある社殿は、
固く扉がしまっていて、私たちの他に参拝する人もいませんでした。

「あれ、おかしいなあ。ロウソクがたくさんあるように見えたけど」
でも、何もないので、ガランガラン鈴だけ鳴らしてから道に戻ろうとしたら、
ふっと、おみくじやお守りを売る建物の陰から、白い着物を着た女の人が
出てきたんです。その人は私たちに、「今、これ落としましたよ」と言って、
指先につまんだものを見せたんです。家の鍵だと思いました。
勾玉のキーホルダーがついてましたから。「あ、スミマセン、ありがとう
 ございます」そう言って私が受け取り、お礼を言うと、
その人はにっこり笑ってまた建物の後ろに回っていったんですが・・・
「あんた、落としたんでしょ」と妹には言ったものの、
さっきはたしかにチャックのついた中に入れてたし・・・
それと、私が手にした鍵の勾玉の色がなんとなく違って見えたんです。

紫色というのは同じなんですが、微妙に色合いが赤いというか。
でも、そのときは気のせいだと思いました。通学路に出て神社のほうを見ても、
もうロウソクのような光はありませんでした。それと、妹が変なことを
言ったんです。「お姉ちゃん、今の女の人、お母さんにすごく似てる
 と思わなかった?」って。「え?」でも、私には似てたとは思えませんでした。
色が白くて目が細い、あんまり特徴のない顔。それに齢もお母さんより
若いように感じたんです。だから「似てなかったよ」って、一言答えただけでした。
それから10分ほどで家について、私が持ってたさっきの鍵で
玄関を開けました。はい、ふつうにすんなり開きました。
だからやっぱり家の鍵なんです。それで・・・ここからちょっと
信じられないような話になっていくんです。私が先に入って、

後ろで妹がドアを閉めるガチャンという音がしました。
まず自分たちの部屋に行ってランドセルを置き、着替えるんですが、
妹がついてこなかったんです。そのときはトイレに行ったくらいに思って
たんですけど。それから、家の鍵を持って1階の居間に行きました。
なくさないようテレビ台に置いておこうと思ったんです。やっぱり、
妹の姿はありませんでした。それで、そのとき家の中が何か変なことに
気がついたんです。その・・・うまく表現できないんですが、
家の中って、木とか壁材とかいろんなものでできてますよね。
それが全部同じように思えたんです。意味がわかりますでしょうか。
すごく精巧につくってあるんだけど、もとがダンボールとかで
それに色を塗ったような感じというか。

さわってみてもどこも同じザラッとした感じで、テレビのリモコンもそれは
同じでした。スイッチを押してもテレビはつきません。
「なんか変だ」そういう考えが頭の中に広がって、妹の名前を呼びましたが
返事はなし。玄関に走ってドアを開けようとしましたが、開かなかったんです。
どこの玄関もそうだと思いますが、中からは鍵を差し込まなくても
開きますよね。それが、釘づけされたみたいになって動かない。
それから、だんだん怖ろしいことがわかってきて・・・
裏口の戸も窓も、どれも開かなかったんです。鍵は動くんですが、
窓自体はびくともしません。それと、ベランダのガラスサッシの外は
せまい庭になってるんですが、外の景色が動かないんです。
これも、意味わかりますでしょうか。庭の草花なんかは風で動いたりしますよね。

それがずっといつまでも止まってるし、塀の外にも何も動くものはない。
「ぜったい変」とにかく妹を探そうと、名前を呼びながら家中走り回ったんです。
そしたら2階に上がったとき、「お姉ちゃん・・・」とかすかな声が聞こえ、
部屋に行ってみると、さっきは何もなかったのに、ベッドの前に妹が倒れてました。
ですがそれ、妹であって妹じゃなかったんです。すごくよくできてるんですが、
妹そっくりの人形。家の中の他のものと同じように、
もとはダンボールかなんかの。妹はもう一度「お姉ちゃん」と言うと、
そのまま動かなくなったんです。もう気が狂いそうな感じでした。
半泣きになりながらまた1階に降り、居間にある花瓶を持ちました。
それでベランダのガラスを割ろうと思ったんですが、いつもはすごく重いのに、
子どもの私が簡単に持ち上げられるほど軽くなっていました。

ベランダのサッシにぶつけても、ポコンという音がしてはね返ってくるだけ。
私は怖くて怖くて、居間の真ん中で泣き出してしまったんです。
どのくらいの時間泣いていたでしょうか。ピンポンという玄関のチャイムの
音が聞こえました。泣きながら這うようにして行ってみると、お母さんが
立っていました。お母さんは少し怒ったような顔で、「〇〇から聞いたけど、
 あんた鍵を持ったまま一人で走って帰っちゃって、玄関を閉めちゃった
 そうじゃない。それで〇〇が家に入れなくて、学校に戻って私のとこに
 来たのよ。だから学級懇談を中断して戻ってきたの」
ああ、本物のお母さんなんだと思いました。でも、ずっと泣いていて心底
疲れ切ってたので、今まで置きたことを説明する気力がありませんでした。
お母さんの後ろから、顔にニヤニヤ笑いを浮かべながら妹が出てきました。

こんな話なんです。わけがわからないと思いますので整理すると、
神社で鍵を女の人に拾ってもらったとこまでは確かなようで、
そこから私が一人で走って家に帰り、妹を閉め出した・・・お母さんは妹と
いっしょに戻ってきて、持ってたスペアの鍵で家の玄関を開けた。
そういうことになっちゃったんです。家の中のものはすべて元に戻ってて、
私が持ってきた鍵はテレビ台の上にあり、色も前と同じでした。
あと、私たちの部屋で見た妹の体は消えてしまってたんです。
その日の夜です。私と妹は2段ベッドで寝てるんですが、電気を消したとき、
妹が、「私、さっきここで死んだような気がするなあ」
そうポツリと言って、クスクス笑い出しました。このときから私は妹のことが
怖くなって、それは私が中学生になって部屋が別になるまで続いたんです。




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