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三つ目が開く話

2019.07.22 (Mon)
これね、俺が高校時代の話なんです。だからもう20年以上前。
3年生の終わりでしたね。とっくに就職が決まって、学校のほうは
もう出ても出なくてもいいような具合で、みなで遊び呆けてました。
地方の高校なんで、今でこそ推薦で工科大学に行くやつも出てきましたが、
当時、進学するやつは少なかったんです。俺は地元の自動車整備工場に
決まってました。でね、就職したら当然ながら一番下っ端だから、
厳しいつらい生活になるのはわかってたんで、遊べるのは今しかないと
考えてね。それはダチの他のやつらも同じだったんでしょう。
ほら、工業高校だからみなバイクに興味があって、
早くから免許取って乗り回してましたよ。いやいや、暴走族とは違います。
俺の高校の頃って、もう暴走族なんてなかったです。

警察が厳しく取り締まって、大都市の大きな族は全部解散させられてたし、
族って、その上部組織として暴力団があることが多いんですが、
その暴力団自体がヘロヘロになってましたから。だからね、たんにみなで
夜中につるんでバイク乗り回すだけ。まあ、マフラーとか改造してたから
ウルサイんですけど、暴力行為なんてしなかったんですよ。
あ、すいません、話がよけいな方向へそれちゃって。
そんなある晩のことです。一人のやつの部屋に集まって騒いでたら、
そいつの親に追い出されちゃったんです。でね、まだ家に帰る気はしない。
で、相談がまとまって、俺らのとこで「最恐」と言われる心霊スポットに
行くことになりました。そこは、街外れの山すそにある新興宗団体の
施設の廃墟だったんです。礼拝堂兼宿舎って感じの。

廃墟になってから、当時で10年くらいたってたのかな。
教団が解散した理由は、教祖が警察に逮捕されたからです。大きな事件に
なって新聞にも出たから、ここの人も知ってるんじゃないかな。
信者の連れてきた病気の子どもを、心霊治療っていうんですか、
神様におすがりして治そうとしたものの、当然治るわけもなく、
その子は死亡、それを復活させるからと言って放置してミイラ化した事件。
毎日ね、そのミイラに対して手かざしとかそういうのをやってたらしいです。
それが発覚して教祖や幹部は逮捕。子どもの親もね、保護責任者遺棄致死
ってやつで逮捕。教団の建物には警察の捜査が入って・・・つい最近も
似たような事件ありましたよね。性懲りもなくくり返されてるんですよね。
んで、その廃墟まではバイクで40分くらい。

時間は午前2時くらいでした。いや、田舎だから、その時間に車なんか
通ってませんし、警察もいない。着いた教団の建物は大きくはなかったです。
コンクリの2階建てで、事務所といえばそれで通りそうな外観。
派手な飾りとかついてませんでした。平日なので俺らの他に来てるやつは
いなかったです。門の鉄柵が壊れて下に落ちてて、そこにロープが張られて
ましたが、くぐって入るのはわけはない。あ、それでね、
俺はそこに入るの初めてでしたが、行ったことのあるやつが一人だけいました。
そいつの話だと、中はスプレーの落書きだらけで、
1階は集会所みたいな部屋になってて机やイスが散乱してる。
そこは見るものもないし怖くない。2階はいくつかの部屋に分かれてて、
信者が寝泊まりする場所だろうって。あと2階の奥に祭壇の部屋というのが

あって、そこは天井から垂れ幕がたくさん下がってて怖い。
祭壇のロウソク立てとか、そういうのがみな倒れてて、垂れ幕の奥に金色の
御本尊があったってことで。うーん、盗まれないであるんだから、
本物の金じゃないんでしょう。でね、中はそいつの言ったとおりでした。
あ、そんときね、急に思いついたことだから、懐中電灯って、
最初にいたダチの家にあった2本だけでした。だから懐中電灯を持った2人を
先頭にして、みながぞろぞろ後をついてく。あ、すいません、
また話が前後しちゃうけど、そんときのメンバーは5人でした。
1階をざっと見て回ると、足の下がフカフカするくらいすごいホコリが溜まってて、
それからコンクリの階段を2階に上がると、すぐの壁に「〇〇○○」って
名前がでっかく赤いスプレーで書かれててね。

それ見て、みな嫌な気になりました。その名前、知ってる人なんです。俺らの高校の
4年先輩。そんときにはね、バイクで事故死して2年たってました。
ね、嫌でしょ。それからビジネスホテルみたいなつくりの部屋を一つ一つ
開けていきました。どこも鍵とかかかってなかったです。
中は4畳くらいの縦長で、ベッドがありました。全部見たけど、
おかしなことは何もなし。廊下の突きあたりがガラス扉になってて、
かなり広い部屋。天井からたくさん垂れ幕が下がっててね。
暗くてはっきりしなかったけど、中には焦げてるようなのもあって、
誰か来たやつがライターで火をつけたんだろうって考えました。
でね、その部屋って、前に話した死んだ子どもが安置されてた場所なんです。
中央に高さのある寝台みたいなのがあったから、もしかしたらそこなのかもしれない。

いや、怖かったですけど、仲間にバカにされるのが嫌で平気な顔してました。
他のやつらも同じだったと思います。奥の祭壇に近づいてくと、
顔に垂れ幕があたってカビの臭いがしました。垂れ幕をかき分け、かき分け進むと、
壇になってて、位牌みたいなのがたくさん散らばってたんです。
先頭にいたやつが垂れ幕をまとめてつかんで引きちぎると、奥に1m半くらいの像が
見えました。うーん、仏像でもないし、現代彫刻みたいな感じでしたね。
頭に宝冠をかぶった金色の男。顔は抽象的で額に3つめの目があり、
でも、すべての目は閉じられてたんです。「これか、インチキ宗教の御本尊は」
先頭のやつがそう言って、止める間もなく、いきなり足を上げて像を蹴ったんです。
ドンと像は後ろの壁にあたって、そのまま前に倒れてきました。
「うわ」なんとか避けて像は下に落ち、ボロっと頭がとれたんですよ。

照らしてみると、割れ口はコンクリ製で、やっぱ表面だけ金色に塗ってたんですね。
まあ、それだけですよ。おかしなことや、変なものを見たってことはなかったし、
携帯で撮った写真にも何も写ってなかったです。ただね・・・
3時過ぎにみなで解散する間際に、廃墟で俺の近くにいた山本ってやつ、
家が近かったんで途中までいっしょだったんですが、別れ際に、
「あのな、あの像、倒れる間際に見たんだけど、額の目が開いた気がするんよな。
 まあ気のせいだと思うが」こんな話をしたんです。
でね、その翌日、俺らのほとんどは寝不足で学校を休み、3日後くらいかな、
また集まったときに、仏像を蹴った辻ってやつが、変な夢を見たって言い出して。
「あの廃墟の夢だよ。それが、実際にこの間行ったときと同じ。
 違ってたのは、垂れ幕の奥の像な。あれ、三島の顔してたんだよな。

 俺、蹴ってから三島だって気がついて、ああなんか悪いことしたと思って。
 お前、どっか痛くねえか」笑いながらそう聞いて、三島は仏頂面で、
「お前の夢ん中のことだろ、俺が痛いわけねえ」って言い返してました。
そのまた2日後です。学校が終わるころに三島が俺のとこに来て、
「夢見たんだよ。あの廃墟で像が倒れてくる夢、けどもその像の顔、
 平田だったんだよな・・・」もうわかりますよね。2、3日おいて順繰りに
俺ら廃墟の夢を見ることになったんです。違ってたのは最後の像の顔、
それも順番に仲間の顔になってたわけです。もちろん俺も見ました。
あの廃墟に行ってから2週間目くらいかなあ。みなの言ってたとおりでした。
2階に上がったあたりから始まって、奥の祭壇の部屋で像が倒れてくるまで。
いや、不思議と怖くはなかったです。まあ、話を聞いてて、

何が起こるかわかってたからかもしれません。俺が見たのは山本の顔でした。
行ったのは5人だから、山本で最後だし、やつが夢を見れば終わるのか・・・
そこでね、ふと疑問に思ったんですよ。山本で最後だから、いったい
誰の顔を見るんだろうか。また最初に戻って辻の顔なんだろうか。
そして夢はいつまでもエンドレスに続く・・・いや、そんなわけはないと考えたし、
興味深かったんですよ。3日後に山本がどんなことを言うのか。
けど、山本、行方不明になちゃったんです。山本の家から俺のとこに電話が来て、
息子が家に帰ってないけど、お宅におじゃましてませんかっていう。
まあね、ダチのところに泊まるなんてのはしょちゅうあったし、
俺もどっかに転がり込んでるんだろうって思ってました。山本には、
看護師をしてる年上の彼女もいましたしね。けど、それから10日たっても

山本は見つからず、高校の卒業式の日が近づいてきたんです。
で、山本の親が警察に捜索願を出し、バイクがないから自分で出かけたんだろうが、
トラブルか事故にあってるのかもしれない。まあね、バイクでダムとかに走りに
行って、木の生い茂った崖下に落ちたりすればわかんないですからね。
俺のとこにも警察が来たんで、廃墟に行った話はしましたよ。
夢の話? いや、それはしてないです。しても警察は関係ないと思うでしょうしねえ。
でね、警察が廃墟を捜索して、祭壇の部屋で死んでる山本を発見したんです。
あの寝台の上に横たわったまま亡くなってたということでした。体に傷はなく、
解剖したら心臓に異常が発見され、病死って結論になったんです。ただね、
これは噂なんですけど、山本の額にマジックかなんかで3つめの目が描かれてて、
天井をにらんでた。警察は山本が自分でやったと判断してるって・・・






                            
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