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笑い地蔵の話

2019.08.21 (Wed)
どうぞよろしくお願いします、高校2年生です。さっそく話していきますけど、
これ、話の前半のほうは僕が体験したことじゃないんです。
うちの母です。ですから、もしかしたら細かい部分でつじつまの
合わないとこもあるかもしれません。うちは、昔からの古い商店街の
中にあるんです。といっても、すごくさびれちゃって、半分以上は店を
閉めちゃってます。まあ、どこもそうなのかもしれないですけど。
年寄りばかり増えて、市全体が活気がなくなってるんですよね。
商店街の道はそこそこ広いですし、朝夕の通勤時間には
けっこう交通量もあります。ただ、僕が小さいときから、
事故なんて見たことはなかったんですけど。
それで、ええと、始まりは1ヶ月ほど前のことですね。

うちは商店街の交差点の角で、小さい薬局をやってるんです。
調剤もやりますけど、主に市販薬を売ってる。両親とも薬剤師で、
ずっと店にいます。さあ、よくわからないですけど、うちが食べていける
だけの収入はあるみたいです。で、その日の朝、母親が早く起きて
店の前を掃除してたんです。時間は朝の6時ころで、
そのあたりだと、まだあんまり交通量は多くないんです。
そしたら、通りの向こう側に顔見知りのおじいさんがいて、
手を上げて、母親のほうに向かって何か言っている。
「店はまだ開かないのか」みたいな意味だと思ったそうです。
そのおじいさんは町内の人じゃないけど、毎朝ウオーキングしてて、
母親は顔を見ればあいさつしてたそうなんです。

店の開店は9時なんですが、おじいさんが急に薬が必要になったのかと
考えて、「ああ、いいですよ、今開けますから」母親がそう呼びかけると、
おじいさんはヨタヨタした様子で道路を渡ろうとして。
でもそのとき、かなりのスピードの車が道をくるのが見えたそうです。
母親は、「危ないです!」って叫んだものの、
おじいさんは道の真ん中まで出てきて、ドシンという嫌な音とともに
はねられちゃったんですね。母親の話では、相当な高さまで宙に浮いて、
それから交差点の店側の信号の下に、頭から落ちてきたんだそうです。
で、またアスファルトに頭を打ちつけるボグッという音。
あの音は一生忘れられないって言ってました。
母親は大きな悲鳴をあげて、それが聞こえたんで僕も起きてきたんです。

「何、どしたん?」って表戸を開けたら、おじいさんは、
数m前のガードレールに足先を引っかける形でうつぶせに倒れてて、
頭の下からすごい量の血が地面に広がってました。ピクリとも動かないし、
あの血を見ただけでもう助からないと思いました。母親が、
「警察に連絡して!」と言ったんで、店の電話からかけたんです。
おじいさんをはねたのは商用車のバンで、40代くらいのサラリーマンの
人が出てきて、呆然と立ちつくしてました。派出所がわりに近いので
警察はすぐ来ました。親父も出てきたし、近所の人も野次馬に集まってきて。
もっと見てたかったんだけど、その日は平日で学校があったんで、
いったん中に引っ込んだんです。その日の夕方ってか夜ですね。
僕、陸上部なんで帰りは7時すぎるんです。

おじいさんはもう片づけられて、ガードレールの内側に花束とビールの缶
とかが置かれてました。母親の話では、警察の捜査は午後までには済んで、
母親も目撃者ということで証言を求められたそうです。
「でもねえ、車のほうもスピード出しすぎてたと思うけど、
 あのおじいさん、急に道路を渡りだしたし、少し離れた信号も赤だったのよね。
 だから車の人は責められないんじゃないかと思う。
 とにかく見たとおりのことを警察には話した」母親はこう言ってました。
花束のほうは、おじいさんの子どもらしい夫婦が来て、供えていったそうです。
まあ、80のおじいさんの子どもだから50代くらい。母親が店から出ていくと、
2人そろって頭を下げたんで、母親も頭を下げ返したそうです。
長々と話しましたけど、ここまでが事故のときの様子です。

翌朝ですね。僕、部活の朝練の日だったんですよ。それで、7時少し前に
家を出ようとして、どうしてもその花束のほうへ目がいきますよね。
そのときに違和感を感じたんです。花に埋もれるような感じで
小さな顔が見えたんですよ。近寄っていくと、髪の毛のない石の人形。
印象としてはお地蔵様で、高さは30cmないくらいでした。
あれ、こんなの昨日見たとき、あったっけ。で、ここ大事なとこなんですけど、
そのお地蔵様の顔、無表情っていうか、ムッとした感じに見えたんです。
ともかく学校へ行きました。で、その日帰ってくると、母親がすごい興奮してて、
「また事故だよ。同んなじ場所、人じゃなかったけど」って言い出して。
「どういうこと?」と聞くと、今度は親父が、「今日の午後、猫が轢かれたんだよ。
 よく近所で見かけるノラなんだが、あのおじいさんと同じ場所でね」

母親が続けて、「ガードレールの上でバウンドして店の前に落ちてきたのよ。
 ズタズタになって血まみれで」親父は、「まあ、猫だしノラだから、
 事件てことじゃないけど、警察に連絡したら死骸は持ってった」って。
「それから、店の前を何度も水かけて洗って、ああ気持ち悪い」
こんなことがあった翌朝です。また学校へ行くときですね。
花束は暑さでだいぶしおれてきて、中のお地蔵様の上半身が出てたんですが、
何か顔が違ってる気がしたんです。近づいてよく見ると、
お地蔵様の右のほおに赤黒いシミが、マジックで線を引いたようについてました。
猫の血だろうか。それと、なんだか前よりも穏やかな顔っていうか、
微笑んでいるようにも見えたんです。でも・・・そんなはずはないし、
そのときは血のシミのせいでそう見えたんだろうと思ってたんですが。

それからはほぼ毎日、朝にお地蔵様の顔を見てました。血のシミは雨で消え、
でもやっぱり、微笑んだ顔で。・・・前からこうだったんだ、
そう考えるしかなかったです。それから1週間ほどして、
同じ場所で、またまた死亡事故が起きたんです。今度は子どもでした。
土曜日の午前中です。信号待ちしていたお母さんの手をふりほどいた
幼稚園の男の子が、いきなり道路に飛び出して宅急便のトラックに轢かれたんです。
母親の話では、最初におじいさんが落ちたのとほとんど同じ場所に
とばされてきて、頭が半分なくなってたそうです。「見なきゃよかった、
見なきゃよかった」母親はうわごとのようにそう言ってました。
といっても、今回は遺体を見ただけで、はねられる瞬間は目撃してないんで、
警察から聴取を受けることはなかったんです。その翌日、

現場には、おじいさんのときよりずっとたくさんの花とかが供えられてました。
それで・・・お地蔵様の姿も埋もれて見えなくなってましたが、
僕、気になってしかたがなかったんです。だから、
あんなことしなきゃよかったんだけど、次の日の朝に、花束を何個か
よせてみたんですよ。そしたら、お地蔵様の顔、笑ってたんですよ。
閉じてたはずの口が耳まで開いて、中は真っ赤でした。
そんなはずないですよね。石を彫ったものなんだから。
見ていると笑い声が聞こえてくるようで、すぐに花束を上に投げ落として
見えなくしたんです。・・・で、この話、まだ終わりじゃないんですよ。
あれは火曜日の夜です。僕の部屋は道路に面した窓があって、
その日は珍しく勉強してたんです、試験が近かったんで。

で、10時過ぎかな、そろそろカーテン閉めようかって窓のほうを見たら、
外が赤く光ってました。ほら、その1ヶ月ずっと、警察やら救急車が来てたんで、
またなのかと思ったんですが、音は何もしない。窓を開けたら、
信号下の花束のあたりが赤い光に包まれてて、でも、塀に遮られてよく見えない。
そのとき、ふーっと何かが浮いてきたんです。小さいもの、
あのお地蔵様だったんですよ。それが頭を上にしてゆっくり回転しながら、
窓の高さまでくると顔がこっち向いて、遠くてはっきりしなかったけど、
大笑いしてるように見えたんです。お地蔵様はそのまま電信柱よりも
高くまで上がると、もう降りてきませんでした。いや、そのときは
怖くて見に行かなかったけど、朝になったらお地蔵様はなくなってました。
それ以後、事故も起きてないです。これで収まってくれるといいんですけど。

補足
うちの市の郊外にね、10年ほど前に新興宗教が拝殿を建てたんだよ。
それなりに立派なもんだったんだけど、若い女性を監禁する事件があって
警察が介入し、それから信者がどんどん減ってってね。
最後は教祖と、その奥さん、息子たちだけになった。
で、つい最近、その教祖が亡くなったんだ。病死で、事件性はないみたいだな。
救急車が呼ばれて、行ってみると、教祖は死後3日目くらいで
祭壇に横たえられてた。奥さんはその間、復活させようとしてたらしい。
でも、一度死んだ人間が生き返るはずはないよな。あ、キリストは生き返ったか。
まあそれで、その宗教団体は仏教系だったんだが、長い間病気だった
教祖の体のまわりをとり囲むようにして、何体もの小さいお地蔵さんが
立てられていたって。どのお地蔵さんも赤い口を開けて笑ってたそうだよ。

なかい



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