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「エントロピック重力」とは

2019.08.22 (Thu)
でrt (2)

毎日暑いですね。このところ、いくらかはマシになってきた気もしますが、
ここ大阪は、まだまだエアコンなしに生活するのは不可能そうです。
熱中症は野外だけでなく、室内で起きることもありますので、
こまめに水分をとるなどの対策を心がけてください。
さて、今回は「ヴァーリンデの重力仮説」を取り上げます。

ただ、この話、すごく難しいんですよね。自分の理解範囲をかなり超えた
ものなので、いろいろ間違いがあると思います。なるべく正確に
書くつもりですが、まあ、眉に唾をつけて聞いてください。
もし、明らかな間違いとかがあれば、指摘していただければありがたいです。

エリック・ヴァーリンデ博士
でrt (6)

2009年、アムステルダム大学の理論物理学教授である、
エリック・ヴァーリンデ博士が、「重力は存在しない」とする理論を
発表し、話題を集めました。ニュートンが万有引力の働きを発見したのは
ご存知だと思います。ただし、「リンゴが落ちるのを見て」というのが
本当かどうかはわかりません。おそらく作り話でしょう。

ニュートン以前、われわれはリンゴなど、上にあるものが下に落ちるのは
あたり前だと思っていました。ですが、無重力の宇宙空間では
リンゴは下に落ちません、というか、そもそも上下という概念がないんですね。
地球上では、リンゴの持つ質量と地球の質量、これが互いに引き合って、
われわれにはリンゴが地面に落ちるように見えます。



さらにその200年以上後、アインシュタインが相対性理論を発表し、
重力理論を書き換えました。では、もしヴァーリンデ博士の主張どおり
重力はないのだとしたら、リンゴは何の力で落ちるんでしょうか。
これは、「エントロピックな力」として説明されています。

ですから、ヴァーリンデの重力理論は別名、「エントロピック重力理論
(Entropic gravity theory)」とも言うんです。エントロピーはご存知だと
思います。熱力学において発見された、「乱雑さ」を表す物理量です。
例えば、100℃のお湯と10℃の水を混ぜると温度は下がりますよね。
このとき、エントロピーは増大することになります。

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もし、われわれの住む宇宙空間が閉じている(他の世界との
熱交換がない)とすれば、どんどん温度は均一化していき、エントロピーは
増大を続けて、やがて「宇宙の熱的死」を迎えるという予測があります。
で、エントロピック重力理論を思い切り単純化して言うと、このエントロピー
による力があらゆる空間に働いていて、木からリンゴが落ちる。 

先ほどの例だと、100℃のお湯の中では水分子が活発に動いていて、
それが動きの悪い10℃の水分子にあたって弱められ、全体として温度が
下がる。あと、ゴムを引っぱって手を離すと戻ってきますが、
これもエントロピックな力と言えます。われわれが重力だと思ってるのは、
そういうエントロピーが動く力だというわけです。

えー、そんなバカなと思われたんじゃないでしょうか。では、この理論、
世界の物理学者にどう受けとめられたかというと、じつはそうバカには
されなかったんです。ありえるかも、と考えた物理学者も一部にはいました。
どうしてかというと、アインシュタインの重力方程式は、熱力学の方程式と
強い相関があるからです。このことは以前から知られていました。

でrt (1)

さらに、熱力学のエントロピーと情報理論にも関連性があり、
どちらもほぼ同じ式で記述することができます。
物理学におけるエントロピーを、情報理論の一応用とみなすべきだと
主張する研究者もいるんです。さて、ここで少し話を変えて、
「ホログラフィック原理(holographic principle)」というのがありますよね。

これも、エントロピック重力理論とつながっています。
ホーキング博士らが、ブラックホールに落ちた情報について問題を
提起しました。ホーキング理論では、大きなブラックホールは長い時間をかけて
蒸発してなくなります。では、中に落ちたものの情報は保存されるのか。
世界中の理論物理学者がそれについて考え、一定の結論が出ました。

「ホログラフィック原理」のイメージ
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ブラックホールはいずれ蒸発するが、情報は保存される。ただし、
その情報量はブラックホールの表面積に比例する。
これ、すごく意外な答えなんですが、計算結果は間違っていません。
ブラックホールの体積に比例すると考えるのが普通なのに、表面積、
つまり、情報は2次元面に保存される。

ここから話を広げて、われわれの宇宙を一つの巨大なブラックホールとみると、
この宇宙で起きるあらゆる出来事の情報は、宇宙のまわりをとりまく
(ちょっと違いますが、まあ)事象の地平面にすでに書き込まれている。
われわれが3次元だと思っているのは、じつは2次元の情報が投影された
幻影(ホログラフィック)である、とするのがホログラフィック原理。

ダークマターとは、銀河を回転させる力の源となる「見えない」質量
sでw

で、ホログラフィックとして物が動いているように見える源が、
エントロピックな力というわけです。みなさん、これ、どう思われますか。
ヴァーリンデ博士は、翌2010年、エントロピック重力理論を適用すると、
銀河を回転させている仮想的な質量である暗黒物質(ダークマター)も、
想定する必要がなくなるという論文を発表しています。

さらに、2016年、オランダ、ライデン大学の研究チームが、
エントロピック重力理論が実証データでも一致することを裏づけ、世界に
衝撃が走りました。ただし、2017年、アメリカ、プリンストン大学の研究で、
矮小銀河の自転速度に関して、ヴァーリンデの重力仮説に反する証拠が
見つかったと発表し、現在、事態は混沌としている状況です。

『マトリックス』
でrt (3)

さてさて、映画の『マトリックス』では、われわれ人間の意識は
ヴァーチャル世界にあって、情報によって動かされていましたが、
もしかしたら実際に、ホログラフィック世界の中で、エントロピックな力で
情報によって動かされているのかもしれません。その可能性は絶対にない
とは言えないんですね。では、今回はこのへんで。

関連記事 『科学的な疑問はなくなるか』 『ノーベル賞の傾向分析』



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