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看護師の話 3題

2019.09.02 (Mon)
大学病院勤務 西田美優さんの話
私は某大学附属病院の放射線科に勤務しています。内部の移動で
放射線科に変わったときは、正直怖いなと思ったんですが、
分掌は外来の受付でした。はい、自分から外来の希望を出してたんです。
結婚して、夜勤のある入院病棟はもう難しいと思いましたので。
しかも待合室前の受付ですから、放射線被曝の心配もありません。
それで、大きな病院なので、毎日大勢の患者さんが検査に訪れます。
単純X線やCTはさまざまな病気の方が来られますが、
PET検査を受けるのはまず癌患者さんだけです。
その待合室に、いつも座っている50代に見える男性がいました。
灰色のコートを着て、油で頭をびしっとなでつけてる。
観察していてわかったんですが、その人、健康食品の業者なんです。

癌は治る病気になったとはいうものの、それは転移がなく、
原発巣が切除できる場合だけで、PET検査などで転移巣が見つかると、
手術はできず化学療法になります。化学療法では完治は望めません。
癌を放置した場合と比べて、わずかな期間、延命できるだけなんです。
その人は、そういう患者さんやそのご家族を待っていて、見つけると
人の良さそうな笑みを浮かべ、「たいへんね、・・・わかりますよ」
と言いながら近づいていきます。それで、波動水というのを言葉巧みに
販売するんです。「大丈夫、抗癌剤と併用すれば治りますよ、頑張りましょう」
常識で考えて、そんなので治るはずはないんですが、告知を受けて
手術できなければ末期癌です。ショックで頭がいっぱいのとき、
その業者の言葉は、水が染み込むように入ってってしまうんですね。

その波動水、1本4万円のものを週2本飲むみたいですから、
月に40万近くかかります。それで、効果はほとんどない、詐欺同然のものです。
ですから一度、放射線科の准教授に思い切って報告したんです、
どうにかなりませんかって。そしたら、准教授は少し苦い顔をし、
「あの人な、ここの病院の理事長の知り合いらしいんだ。だから、
 かまわないでおくように教授からも言われてるんだよ」頭を振って
こう言われたんです。放射線治療に来た患者さんの中には、
待合室でその波動水を飲んでる方も見かけました。でも、よほどのお金持ちで
なければ、お金が続かないですよね。一昨日です、その人のところに
60代くらいの男性が来てました。男性は病状が進んで かなり具合が
悪そうでしたが、声高に話していて、こんな声が聞こえてきたんです。

「もう・・・貯金は使い果たして、借金までしてしまった、なのに
 どんどん具合が悪くなる一方だ!」 「大きな声を出すのはやめてください。
 それは中には効果がない方もおられます。そうお話したでしょ。残念ですが、
 もう私にできることはありません」その患者さんは頭に血が登ったようで、
よろめきながら立ち上がり、「この・・・」波動水業者のコートの襟首を
つかもうとしました。業者は慣れた様子ですっと後ろに下がり、
待合席の席から30代くらいの男性が2人立ち上がったんです。業者は、
床にへたりこんだ患者さんに向かって、「この人たちは弁護士ですから、
 あとは別の場所で話をしてください」患者さんは、両脇を抱えるようにして
ホールのほうに連れてかれましたが、そのとき、業者のいる真上の天井に、
一瞬、むくむくと黒い雲のようなものが広がり、すぐに消えたんです。

クリニック勤務 三沢瑛美さんの話
私は、駅前にある免疫療法クリニックで働いていました。はい、今はもう
やめてます。免疫療法はご存知でしょうか。癌に対して、患者さん自身の
免疫細胞を強化し、自然治癒に導く。でも・・・はっきり言って、
副作用はないかわり、ほとんど効果もないんです。そのことは、
勤務する前から知ってました。じゃあ、なんでそんなとこに勤めたんだと
思われるでしょうが、すごくお給料がいいんです。一般病院の倍近くでした。
治療費は、自由診療ですから高額です。そのクリニックでは療法1コースが
120万、あとは患者さんの懐具合を計って、4コースとか6コースとか
決めるんです。はい、はっきり言ってインチキなんですが・・・
一般病院と違って、医師はみなすごく優しいんです。患者さんにとって
聞きたくないようなことは絶対に言わないし、診察にも長い時間をかけます。

だから、心の面では安心感だけはあったと思います。まあ、お金が続くうちは。
この間、若い女性の患者さんがみえたんです。まだ20代後半でした。
近くにいて話が耳に入ってしまったんですが、シングルマザーでまだ幼い男の子を
育てているということでした。その患者さん、肺腺癌が見つかったんです。
大きな病院に紹介され、そこでは、転移はなく根治手術が可能という
診断だったそうです。でも、その患者さん、すごく手術を怖がってたんです。
たしかに、麻酔の事故などが起きる可能性はあります。それと、仕事を長期間休めない
ことも気にされていました。手術後は術後化学療法を受けることなりますから、
抗癌剤にも不安があったんだと思います。クリニックの医師はこんな話をしました。
「手術可能でも、完治できるとはかぎりません。検査機器では見えない転移があって、
 手術の途中でやめちゃうケースも多いんです。また、抗癌剤を使用した場合、

 100人に1~2名の割合で副作用死があります。うちの免疫療法で必ず完治するとは
 お約束できませんが、副作用はまずありませんし、お仕事を続けながらでも
 治療できます。・・・どうするかは、ご自身でよく考えてお決めになってください」
その患者さんが帰った後、医師は私に向かって、「今の患者、どうすると思う。
 思い切って手術を受けるか、それとも当院に来るか。どうだ賭けをしないか」
笑いながらそう言ったんです。もちろん賭けは断りました。2週間ほどして、
その患者さん、クリニックを再訪されたんです。もう医師は満面の笑みで、
「よく決断されました。いっしょに治すよう頑張りましょう」って。検査のため、
患者さんが別室に行くと、医師は私のほうにくるりとイスを回し、Vサインしたんです。
そのとき、医師の頭の上にむくむくと黒い雲のようなものが広がり、すぐに消えました。
そんなの見たらもういられないですよね。すぐに辞めさせてもらいました。

〇〇癌センター勤務 峰村恵子さんの話
はい、私は〇〇癌センターの消化器内科の外来に勤務しています。もちろん、
癌センターですから、ほぼすべての患者さんが癌の診断、治療に来ています。
中には腫瘍が良性であることがわかって、喜んで帰っていく方もおられますけど。
1日数千人の患者さんが来られますので、一人の診察時間は3分程度しかありません。
手術でない患者さんには、血液検査の結果を説明して、外来化学療法室で
抗癌剤の点滴を受けてもらいます。ただ、時間をとる場合もあり、
それは最初に癌の告知をするときと、余命をお知らせするときです。
はい、〇〇センターでは、エビデンスに基づいた余命は、できるかぎり
ご本人にお知らせする方針なんです。・・・ここからは、病院の恥を話さなくては
なりませんが、私自身、どうしたらいいのか迷ってまして。

ここのみなさんにお知恵をお借りできたらと思います。
診察室は、小さな部屋が横長に20室以上並んでいます。診察室の奥は、
それらの部屋をすべて通した細長い通路になってて、医師からの指示があれば、
看護師がいつでも駆けつけることができるんです。
それでその日、3時過ぎに外来診察時間が終わり、先生方は食事に出たり、
入院病棟や研究所のほうに行かれたりします。私の勤務は5時半までで、
書類を書いたり片づけをしたり、いろいろやるこがあるんです。
その後ろの通路を通って各室を見て回っていると、一つの診察室から
薄い黒い雲のようなものが流れ出ているように見えました。「え、何か燃えてる?」
と考えましたが、焦げ臭い臭いはしません。入ってみると、たしかに煙が流れていて、
特にある一ヶ所で濃かったんです。はい、棚の上にテイッシュの箱が置いてあって、

その上から天井にかけて広がってました。変だなと思たんです。
患者さん用のテイッシュは診療台の近くにあります。医師が使うために持ってきた
としても、あんな手の届かないところに置くのは。手に取ると重く、カタカタと
何か固いものが入っている音がしました。箱を回してみると・・・巧妙に隠して
ありましたが、レンズが見えたんです。ビデオカメラ? そこで、すごく迷ったんです。
このまま気づかなかったことにしてしまおうかって。でも天井の煙が・・・
慎重に上のテッシュを取り出し、医療手袋をはめてからカメラを出してみました。
子どものビデオを撮ってるので、操作のしかたはわかりました。電源を入れ
巻き戻してみると、映ってたのは、癌の告知、余命宣告を受けている患者さんの
様子の隠し撮りだったんです。何人も何人も、がっくりと肩を落とし、泣き出す人も。
その日、その診療室を使っていたのは、最近離婚したばかりのY先生でした。





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