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ネズミのオカルト(鉄鼠)

2019.09.13 (Fri)
raavr (7)

今回はこういうお題でいきますが、たぶん地味な話になると思います。
さて、ネズミがからんだ最大のオカルトというと、
やはり「ハメルンの笛吹き」かなと思いますが、これについては
以前かなりくわしく書いてます。ドイツのハメルンの町でネズミが増えて
困っていたとき、だんだら模様の服を着た一人の男が現れ、

ネズミを退治してやると言います。市長はダメもとで男に依頼したら、
男は笛を吹いて町をねり歩き、するとたくさんのネズミが出てきて
男の後に従った。男はそのまま川へ入り、すべてのネズミを溺死させます。
しかし、お金が惜しくなった市長は男への支払いをごまかします。



怒った男は、町の大人が教会に行っているときに現れ、笛を吹くと
子どもたちがぞろぞろと男の後についていき、どこへともなく消えて
二度と戻らなかった・・・ただ、この元話にはネズミの記述はないんですね。
笛吹き男がハメルンにやってきたのは、ヨーロッパでのペスト大流行以前で、
病気を媒介するネズミのことは後づけで作られたものです。

関連記事 『パイドパイパー伝説』

では、この男の正体は何で、子どもたちはどこへ行ったのか?
興味を持たれた方は過去記事をごらんになってください。
さて、日本でネズミの一番のオカルトは、やはり「鉄鼠 でっそ」に
なるかと思います。あまり知られてなかったんですが、作家の京極夏彦氏が
推理小説『鉄鼠の檻』で取り上げたため、有名になりました。

鉄鼠と化した頼豪阿闍梨 口から光線のようなものを吐いています
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妖怪 鉄鼠は、もともとは頼豪という11世紀の天台宗の僧です。
実在の人物なんですが、はっきりした史実はよくわかっていません。
ただ、頼豪という武ばった僧号を見るかぎり、かなり気の強い
人物ではなかったかと想像できますね。

ときは白河天皇の時代です。天皇は世継ぎがなかったので、
法力に優れるという噂の三井寺の高僧、頼豪に、皇子誕生の祈祷を
命じました。ここで、もし男児が産まれたら何でも望みをかなえようと    
約束します。頼豪は100日間、密教の加持祈祷を行い、
やがて見事に男児が誕生します。そこまではよかったんですが・・・

三井寺
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頼豪がその褒美として所望したのは、「三井寺に戒壇を築く勅許」
だったんですね。ここで少し歴史的な話をすると、伝教大師最澄が開いた
比叡山延暦寺は山門派、唐に留学した円珍が開いた三井寺(園城寺)が
寺門派と呼ばれて、対立関係にありました。

で、戒壇とは何かというと、僧になるための戒律が授けられる場所です。
それを受けなければ、正式な僧侶とは認められませんでした。
当時戒壇があったのは、たしか、奈良の東大寺、九州の観世音寺、
関東の薬師寺、そして比叡山延暦寺、それくらいだったと思います。

ですから、三井寺の者が授戒するには、わざわざ延暦寺まで行って師弟の
礼をとらねばならず、これが屈辱でならなかったんですね。そのために
戒壇設立を願った。逆に比叡山側から見れば、三井寺に戒壇ができると、
これは完全独立ということになります。絶対許されるものではありません。
もし勅許が出たら京に乗り込んで大暴れするぞというかまえを見せました。

比叡山僧兵の強訴
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苦慮した白河天皇は、世の混乱を避けるために約束を違え、頼豪の願いを
退けます。怒り狂った頼豪は食を断ち、悪鬼のような姿で亡くなります。
白河天皇の皇子は敦文親王といいましたが、頼豪の死の前後から、
枕元に白髪の老僧が現れるようになり、やがて病気になって
4歳で亡くなってしまいます。当然、頼豪の怨霊のしわざと噂されました。

頼豪の怨みはこれでまだおさまらず、矛先は比叡山にも向けられ、
人ほどの大きさで鉄の牙を持つ妖怪、鉄鼠となって8万4千匹のネズミを従え、
延暦寺の蔵の経典や仏像をことごとく食い破ったとされています。
しかたなく比叡山では頼豪を祀る祠を建てて、何とか終結したようです。

この話は、『源平盛衰記』や『太平記』などに出てきますので、かなり
早い時代からできあがっていたようです。さらに、江戸時代の読本で
取り上げられて一般にも知られるようになりました。うーん、まあ、
もちろん鉄鼠の妖怪が史実ということはありませんが、頼豪が三井寺の
戒壇設立に奔走し、比叡山の妨害にあっていたのは事実と見られています。

鳥山石燕の「鉄鼠」
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さて、当ブログでは「妖怪談義」というカテゴリもあるんですが、
江戸の妖怪絵師、鳥山石燕が鉄鼠を取り上げていて、上の画像がそれです。
詞書は、「頼豪の霊、鼠と化すと世にしるところ也」石燕にしては
珍しくストレートに伝説を描いていて、判じ物にはなっていない
みたいですが、もしかしたら何か隠された意図があるのかもしれません。

ちなみに、敦文親王に先立たれた白河天皇は、別の僧に命じて祈祷を行い、
後の堀河天皇が産まれますが、29歳の若さで亡くなっています。
だいたいこんな話です。ネズミの妖怪には、この他に「旧鼠 きゅうそ」
というのもいて、年を経たネズミが毛が白く巨大になり、猫さえも食べて
しまうんですが、これは「窮鼠猫を噛む」の洒落でしょうね。

raavr (3)

水木しげる先生の『ゲゲゲの鬼太郎』に登場するねずみ男も
まあネズミの妖怪なんですが、上で書いたどちらかの妖怪がもとになっている
とは考えにくいですね。三枚目のトリックスターキャラとして、
新たに創作されたものなんだろうと思います。

さてさて、ネズミのオカルトですが、妖怪の話をしているうちに字数が
尽きてしまいました。本当は、日本では浦安のほうにいる
耳の大きなネズミのことなんかも取り上げようかと考えてたんですが、
まあ、やめておいて正解かな。では、今回はこのへんで。

関連記事 『心拍数一定説って何?』

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