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虫のオカルト

2019.09.15 (Sun)
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今回はこういうお題でいきます。さて、どんなことが書けますか。
なるべくグロいほうへはいかないように気をつけます。日本人は昔から、
けっこう虫好きなほうだと思います。清少納言の『枕草子』に
「虫は・・・」という段があって、趣深い虫が取り上げられています。

清少納言が好きなのは、「鈴虫、ひぐらし、蝶、松虫、こおろぎ、
きりぎりす、われから、かげろう、ほたる」と冒頭に出てきます。
この「われから」というのは何でしょうね。調べてみたら、
海に生息する小型の甲殻類のようです。京都の御所まで運んで
こられたんでしょうか。それとも海に遊びに行ったときに見た?

ワレカラ
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あと、その後の記述も不思議で、蓑虫は鬼が生んで、みすぼらしい
着物を着せて捨てていったので「父よ、父よ」と鳴く、と出てきます。
蓑虫はある種の蛾の幼虫なんですが、鳴くとは考えられませんよね。
ですが、平安時代の頃はどうも鳴くと信じられていたようです。
おそらくは、野にいる別の虫の声を聞き違えたんだろうと思います。

ミノムシ
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編者不詳の『堤中納言物語』の一章には「虫愛ずる姫」があり、
身なりにいっさいかまわず、虫を飼育している姫君が主人公として
出てきます。当時の女性のたしなみである眉毛も抜かないし
お歯黒もしない。上流貴族の御曹司が姫に興味を持ち手紙を贈っても、
まったく恋愛関係が成立しないんですね。これも面白い話です。

手入れをしない眉毛が毛虫のようだとバカにされますが、本人はまるで平気
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さて、「虫の音を声として聞くのは日本人とポリネシア人だけ」
という説をご存知でしょうか。これについて研究したのが、
東京医科歯科大学で脳生理学を専門とする角田忠信教授。
氏の研究によれば、外国人には虫の音は雑音としてしか聞こえない。

これは、西洋人は虫の音を機械音や雑音と同様に、右脳(音楽脳)で
処理するのに対し、日本人は左脳(言語脳)で受けとめるからだ、
という実験結果が出されています。言語脳だから「声」というわけですが、
この研究は古く、現在は批判もありますね。

鳴く虫を飼う習慣は平安時代にはすでにありましたが、「虫売り」
という職業が出てきたのは17世紀頃のようです。徳川綱吉の
通称「生類憐れみの令」により禁止され、いったん途絶えますが、
綱吉の死後すぐに復活し、鈴虫、轡虫、松虫、邯鄲(バッタの一種)、
キリギリスなどの鳴く虫の他、季節によって蛍が、

江戸の虫売り 風流ですね


虫籠とともに売られていたようです。江戸の浮世絵にも虫籠が出てくる
ものは多いですよね。寛政の頃、忠蔵という男が瓶に入れた虫の卵を
室内で温め、自然に出てくるよりも早く育てて売り、
莫大な利益を上げたとされています。その後、追従するものが大勢
出てきて、幕府に規制をかけられたりもしてるんです。

関連記事 『祐天上人と生類憐れみの令』

さて、自分が好きな『今昔物語』にも、虫の話はいくつか出ていて、
「犬の鼻から蚕の糸が出る話」というのがあります。これも奇妙なものなので
簡単にご紹介しましょう。昔、三河国の郡司が2人の妻を持ち、
妻はどちらも養蚕をやっていた。ところが、一方の妻が飼っていた
蚕を全滅させてしまい、それで嫌気がさしたのか夫が寄りつかなくなった。

「犬の鼻から蚕の糸が出る話」
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当時は通い婚なんですね。女は嘆いたものの、一匹だけ生き残った
蚕を大事に育てていると、やはり家で飼っていた白犬がその蚕を
ぱくっと食べてしまった。女は腹を立てたが、まさか犬を打ち殺すわけ
にもいかない。そうしてるうち、犬の鼻から蚕の糸がどんどん出てくる。
その糸はきわめて上質で、真っ白で節もない。

女は不思議に思いながらも巻き取ると、莫大な量になり、最後に犬は
ばったり倒れて死にます。その犬の死骸を桑の木の根元に埋めると、
そこに蚕が繁殖し、やはり上質な糸を出す。そこをたまたま通りかかった
夫がその糸の見事さに驚き、女とよりを戻してもう一方の妻のほう
には行かなくなった。こんな話です。

この糸は当時の天皇の御服を織るのにも使われたとされます。
うーん、白犬が出てきて死んで埋めるあたり、「花咲爺さん」との
共通点もありますね。まあ、かわいがっていた犬と蚕が
窮地を救ってくれる報恩譚に分類されるのは確かです。

三上山の大百足
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さて、好かれる虫もあれば、当然嫌われる虫もあります。
嫌われる代表格が百足と蜘蛛でしょうか。逆賊平将門を討った
藤原秀郷(俵藤太)の近江国、瀬田の唐橋での大百足退治は有名です。
大蛇の味方をして、三上山の大百足を弓で射るんですが、体が固くて
矢が通らない。そこで3本目の矢には唾をつけ、見事に射殺します。

土蜘蛛 日本には生息しない虎と関連があります
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蜘蛛のほうは、古代から、大和朝廷にまつろわぬ民は土蜘蛛と
呼ばれましたし、源頼光の土蜘蛛退治の話もよく知られています。
妖怪「絡新婦 じょろうぐも」は、江戸時代の奇譚集『宿直草』などに
こんな話が出ています。あばら家に宿をとった武士の前に、
若い女が子どもを抱いて現れ、「あれはお前の父ぞ、

行って抱かれよ」と子どもを武士にけしかけます。
子どもは重く刀の刃が立たない。武士は女が怪異の正体とみて斬りつけると、
女は天井裏へ逃げ込んだ。翌日、天井裏では2尺もある絡新婦が
刀傷を負って死んでおり、子どもはじつは石の地蔵だった。
その絡新婦に食い殺された無数の人間の死体が転がっていた。

関連記事 『頼光四天王と3本の刀』

絡新婦
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さてさて、古典の話をご紹介しているうちに予定字数になりそうです。
自分が怖いなと思った虫の怪談は、ある行商人が木賃宿に入ると、
部屋の柱に、なんということはない豆粒ほどの甲虫がいる。
ふとイタズラ心を起こした商人は、柱の木を小刀で切り欠いて
その虫を中に入れ、欠片をもとに戻して閉じ込めてしまいます。

数年後、商人は同じところに宿をとり、柱の傷を見て以前のことを
思い出し、まさか生きてないだろう、と欠片を取ると、虫がいる。
さわると、固まっていた虫は動き出し、商人の指をチクリと刺します。
それから商人は高熱を出して寝込み、とうとう死んでしまったという話です。
でもこれ、出典が何だったか覚えてません。では、今回はこのへんで。

関連記事 『虫、食べられます?』



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