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怖い古代史1(黄泉比良坂)

2013.12.26 (Thu)
『古事記』の冒頭部にある「黄泉の国」についての話ですが、
ご存知の方も多いでしょう。
『 協力して国を生んだイザナギとイザナミでしたが、
イザナギが火の神を生んで亡くなってしまったので、悲しんだイザナギは、
黄泉の国を訪れ、妻に戻るように言いました。しかしイザナミは答えて、
「残念です。私は黄泉の国の食物を口にしてしまいました。
しかしなんとか帰ろうと思うので黄泉の国の神と相談してみます。
その間私の姿を見ないでください」しかし、
待ちどおしくなったイザナギは姿を盗み見てしまいます。
するとイザナミの体は腐って蛆がたかり、八種の雷神が居座っていました。

怖ろしくなったイザナギは逃げ帰ろうとしますが、
イザナミは「よくも恥をかかせたな」と言い、
黄泉津醜女(よもつしこめ)を遣わして追いかけさせます。
そこでイザナミはカズラの輪や櫛の歯などを投げて追っ手をくらまし、
最後に黄泉比良坂の下にある桃の実を三つ投げると、
追っ手はすべて逃げ帰っていきました。最後に追いかけてきたイザナミと、
イザナギは坂をふさいだ大岩をへだてて会話します。
「あなたのひどい仕打ちに対して、あなたの国の人を日に千人殺しましょう」
「そのようなことをするなら、日に千人の産屋を立ててみせよう」
このように言い合って別れました。』
 

この話はギリシア神話のオルフェウスの黄泉探訪とよく似ていることで知られています。
『 アポロンの息子で琴の名手のオルフェウスは、
妻エウリュディケが蛇にかまれて死んだため、黄泉の国の支配者ハデスのもとへ行き、
エウリュディケを連れて行きたいと願い出た。
ハデスは二人が地上へ帰りつくまで、彼女をふりむいてはならない、
という条件で願いを聞き入れた。二人は暗い小道を通って
とうとう地上へ着こうかというとき、オルフェウスは、
彼女がついて来ているかどうかとつい振り返ってしまった。
すると、たちまち彼女は黄泉の国へ吸い込まれるように消えてしまった。』
 

この他にもギリシア神話と日本神話の共通点はいろいろあり、
例えば、黄泉の国でザクロを食べたペルセポネーが、
やはり地上の世界に戻れなくなっています。
この共通性については、二つの考え方があります。
一つはギリシアから時間をかけて各地を経、日本へ伝わったとするものです。

時期的には『古事記』は8世紀に成立した書物であり、
そこに書かれた神話がいつ発生したかわかりません。
ギリシア神話は紀元前8世紀ほどまで遡ることができるので、
書物化された時期で考えても、両者には短くみて1000年以上の隔たりがあります。
その間に伝播してきたとしても不思議はないという説です。

もう一つは、世界的に普遍な神話のパターンがあって、
それに基づいて別々に生まれたとするものです。個人のみならず、
民族集団には夢や共通したイメージなどで普遍的に存在すると考えられる
先天的な無意識があり、それを元にして作られた神話は各地で共通性を持っている、
というような話です。これはユング的な解釈ですが、どうなんでしょうね。
二つ目の説の内容を否定するつもりはありませんが、
ギリシア神話と日本神話の時間差を考えた場合、
少なくともこの話に関しては、伝播してきた説のほうが、
自分的にはありえるような気がします。

余談ですが、イザナギは桃を投げて黄泉の軍勢を追い払いました。
桃の木や実には魔を払う作用があるとはよく言われます。
桃太郎の話などもそうかもしれません。
中国では桃は不老長生の妙薬であり、死と相反するものでした。
たしか『西遊記』でも、孫悟空は西王母の桃園の実を食べて
不老不死になったような記憶があります。

奈良県桜井市の纏向遺跡、ここは古代の邪馬台国の候補地の一つですが、
3世紀中頃とみられる土坑から、2000個という
大量の桃の種が発見されて話題を呼びました。
ともに出土した故意に割られた土器から、これは祭祀用とみて間違いはなく、
何らかの儀式に大量の栽培種の桃を用いていたようです。
ただこれが中国の道教と関係があるかどうかはよくわかりません。

『纏向遺跡出土の桃核』橿原考古学研究所






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