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宇宙膨張あれこれ

2019.09.19 (Thu)
ydrs (6)

独マックス・プランク天体物理学研究所などの研究者らは今回、
宇宙の膨張率を測定する新たな手法を開発したと明らかにした。
これにより測定したハッブル定数は82.4で、過去の推算値を上回っている。
だが、今回の測定値に10パーセントの誤差があると論文は認めているが、
これは測定値が74~90の範囲にあることを意味する。

科学者によれば、さまざまな手法による差異は計算ミスではなく、
ビッグバン理論が宇宙をどのように説明するかについての解釈の不一致の
表れの可能性があるという。ビッグバン理論では、宇宙は激変的な爆発で
始まって以来、膨張を続けているとされている。
(JIJI.COM)

今回はこのお題でいきます。少し前も似たような記事を書きましたので、
なるべく かぶらないようにしたいと思います。あと、今回の内容は特に
難しいわけではないですが、単純な勘違いを起こしやすいので、もし自分が
おかしなことを書いてたら、コメントで指摘していただければありがたいです。

さて、ハッブルの法則は、前回書いたように「v=Ho d」の式で表されます。
簡単ですよね。小学校何年生かで勉強する正比例です。
ここで、v は、ある天体がわれわれから遠ざかる速度(後退速度)。
d は、その天体までの距離です。そしてHoが比例定数。ですから、Hoの値が
正確に算出できれば、現在の宇宙の大きさと年齢がわかることになります。

今回の測定結果は82.4ですから、けっこう大きめに出ています。
まず、天体の後退速度 v を測るのは難しくありません。
遠ざかっていく光は赤方偏移を起こすので、かなり正確な数値が出せます。
これは、音のドップラー効果のようなもので、自分に近づくときと
遠ざかるときで、救急車のサイレンの音が変わりますよね。

ydrs (2)

問題は、d の距離のほうです。地球からある天体までの距離を測るには、
大きく2つの方法があるかと思います。一つは、変光星の真の明るさと
見かけの明るさを比較する方法、もう一つは重力レンズを使う方法です。
今回の研究では、「新たな手法を開発した」と書かれていますが、
どういうものなのかは、このニュースだけではわからないですね。

ただ、ハッブル定数の測定に関して、バラバラの数値が出るのは、
「ビッグバン理論が宇宙をどのように説明するかについての解釈の
不一致の表れの可能性がある」とまで述べているわけですから、
かなり自信があるんだろうと思います。うーん。

ydrs (1)

さて、ハッブル定数を測定するのに使われる天体は、われわれから
そこまで遠くないものが多いんです。まあ、ずっと遠くの天体は
望遠鏡の性能の問題で見るのが難しいということもありますが、
それ以前に、はるか遠くにある天体は光速度を超えた速さで
遠ざかっているので、何も情報がやってこないんですね。

最初に書いたように、ハッブルの法則の式は正比例ですので、
われわれから距離が5倍離れていれば、速度も5倍になりますし、
1000倍離れていれば、速度も1000倍になります。
あれ、何か変だと思われませんか。たしか相対性理論では、
光速度を超えるのはできないはずだったのでは・・・



じつは、光速度を超える場合はいろいろあります。相対性理論で制限
されているのは、質量を持つ物質が光速度を超えるのはできないこと。
また、光速度を超える速さで情報を伝えることはできないこと。
まあ、どっちも同じことなんですが。もし光速より速く情報が伝わると、
明日の競馬の勝ち馬がわかってしまって、因果律が崩れます。

それは現在の研究では許されないため、予言があたることはありません。
さて、みなさんが最新型の宇宙船に乗っていたとします。その宇宙船は、
光速度にかぎりなく近いスピードが出せます。では、アクセルを
ふかしていくとどうなるかというと、宇宙船の質量はどんどん重くなり、
長さは進行方向に縮み、宇宙船内の時間の流れが遅くなります。

で、もし光速度に達してしまうと宇宙船の質量は無限大になる、つまり、
不可能ということです。あと、思考実験として、大きなブラックホールに
宇宙船が吸い込まれる場合を考えてみましょう。宇宙船が事象の地平線に
近づくにつれて速度が光速に近づき、やがてつるっと吸い込まれてしまう
わけですが、もしこの場面を、ずっと離れた場所から見ていたとしたら?

ゴムぱっちんの原理
ydrs (4)

実際にはそういうことはできませんが、もし見ることができれば、
宇宙船はどんどん縮んで、ブラックホールのふちで止まってしまいます。
貼りついてしまったように見えるんですね。もしかしたらこのことは、
ブラックホールに落ち込んだものの情報が2次元表面に保存される
というホログラフィック原理と関係があるのかもしれません。

さて、余談はこれくらいにして、では、遠くの天体が、どうして光速度を
超えて遠ざかることができるのか。これは天体そのものが
動いてるのではなく、空間が広がっているためです。相対性理論とは
別の話なんですね。みなさんが、まだ膨らませていない風船の
中心にいるとします。その風船にぷーっと息を吹き込むと、

風船の表皮のゴムは遠ざかっていき、中心から離れた場所ほど
そのスピードは速いはずです。まあ当然ですよね。
もしそうでなければ、宇宙全体が一様に膨張することはできません
あるいは、ゴムひもを引っぱって離す漫才のゴムぱっちんを

思い浮かべてください。ゴムを固定している根もとに基準点をとると、
そこから離れた先端にいくほどスピードが速いのはおわかりだと
思います。それと同じです。じゃあ、その光速を超えて遠ざかっている
天体に、もし人が住んでいたら、どうなってしまうんでしょうか。

ydrs (3)

これはどうもなりません。全然平気だと思います。というのは、
その天体の住人から見れば、われわれ地球のほうが超光速で遠ざかって
いるからです。この宇宙はおそらく閉じていて、端っこも中央もない
だろうと思われるので、彼らから見れば地球が宇宙の果てになります。
でも、われわれは何ともないですよね。

さてさて、もう少し考えてみましょう。もし宇宙膨張がどんどん
加速していったらどうなるでしょう。まず、遠くに見えていた銀河との
距離がますます遠ざかり、その銀河も光速を超えて見えなくなります。
最終的にどこからも光が届かなくなり、長い年月のうちに星々は燃えつき、
ブラックホールだけが残りますが、やがてそれも蒸発します。

宇宙のすべての部分の温度が同じになり、動くものがなくなって
「熱的死 Heat death」をむかえると予測されます。まあでも、
それは遠い遠い遠い未来の話で、地球人類の歴史はたかだか数百万年。
別の、もっとくだらない理由で滅びてしまうんでしょう。
心配するのはまさに杞憂でしょうね。では、今回はこのへんで。

関連記事 『時間の減速って?』 『ルメートルの苦悩』  

宇宙の熱的死
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